ルーヴィーでダンサブルなロック・バンド、ザ・ミュージックのフロントマンとして活動していたロブ・ハーヴェイと、ザ・ストリーツの名で知られるプロジェクトで新たなヒップホップ観を提示したマイク・スキナー。時を同じくして、活動を終えたこの2人が新たに手を組み、スタートさせたのがThe D.O.T.である・・・というのは、もはやよく知られた話だが、昨年<フジロック>で来日を果たし、かねてよりネットでアップしていた作品を集めた編集盤『アンド・ザット』をリリースするなど、徐々にヴェールを脱ぎつつあった彼らの、ようやくのデビュー・アルバム『ダイアリー』がいよいよ4月24日(水)にリリースされる・・・!

誤解を恐れずに言えば、『ダイアリー』は全曲約3分台、メロディアスでときにソウルフル、まさにオールディーズなポップ・ソングのスタイルを現代のプロダクションでスタイリッシュに生まれ変わらせたような作品だ。そしてもちろん、その中心にはロブの心をふるわせる「歌」がある。そしてそれは、こういう言い方もできる。ロブの「歌」があったからこそ、マイクはそこを始発点としてThe D.O.Tの音楽を作り上げたのだろう、と。それにしても、4月24日にリリースされる本作を前にして、プロモーションのために来日した彼らの仲の良いこと! かたやガラージから幼馴染と共に飛び出し、グルーヴとロックの爆発力で夢を推進させた男、かたや変哲のない日常のストーリーをはじめてラップで紡ぎ、新たな文学性を音に宿した男。異なるフィールドにおいて、既存の枠組みを押し広げた男たちが、互いをリスペクトし、想像力を合わせた事で自然と滲み出た音楽がこのThe D.O.Tの核たる部分なんだな~、と後述のインタビューを読んでもらえれば、おわかり頂けることだろう。それでは、既に6月に東名阪での来日ツアーも決定しているロブとマイク(The D.O.T.)のインタビューをどうぞ!

Interview: The D.O.T

You Never Asked(feat. Clare Maguire and Danny Brown)

――デビュー・アルバム『ダイアリー』お聴きしました。様々な要素を含みながらも、「歌」という部分にフォーカスした大変強度の高いポップ・アルバムだと感じました。アルバム『ダイアリー』は、今までのストックから選び取ったのか、それとも何かコンセプトを立てて、それに沿って新たに作られたのですか?

マイク・スキナー(以下、マイク) 大体70曲ぐらいあるストックの中からベストなものを選んだんだ。

――70曲! それでは続いて、アルバム・タイトルを『ダイアリー』と題した理由をお願いします。

ロブ・ハーヴェイ(以下、ロブ) 僕らのHPに毎月更新しているビデオダイアリーみたいなのがあるんだけど、その自分たちの絵柄も含めてなんだけど、ジャケットっぽくない? って思いついて。『ダイアリー』っていうタイトルも合ってるし、いいかも! ってね。元々の由来は自分達がやっているホームページのダイアリーからきているんだ。

――次は制作プロセスについてお聞きします。このユニット、The D.O.T.で制作を行うにあたって、お互いの意見がぶつかるといったことはなかったのでしょうか? なにせお二人とも、異なるフィールドの第一線で活躍していたアーティストですし。

マイク 衝突はなかったよ、役割も違ってたりするし。ロブはこのThe D.O.Tに感情と歌を持ちこんでくれて、僕はプロダクションと歌に貢献している訳なんだけど、僕はいろんなものをいじくりまわして・・・

ロブ 僕はそこに自分自身を投影する。

マイク うん。なかなかいい言い方をしてくれたね。僕的に言えば、それは感情を爆発させてくれるっていうことだと思う。で、質問の話だけど、そういう意味でお互いに衝突する理由も無い。ぼくからすると、今まで共演、共作をしてきた人で、これほど自分がうたっていることを信じ、心から歌っていることを感じさせてくれる人ってロブ以外にみたことがないんだ。彼と一緒にステージに立っていると、自分自身を歌に込めているっていうのが強く伝わってくる。ツアーをして、毎晩毎晩同じことをやっていると、昨日とは気持ちの込め方が違うなって思う事もある。彼の場合は毎回すごく感情を100パーセント込めているんだけど、それってバーバラ・ストライサンドみたいだなって(笑)。

――今、マイクからロブの話をしてもらったんですけども、逆にロブからマイクに対して思うことを話してくれませんか?

ロブ DIVA(ディーヴァ)っていうのは歌姫という意味なんだけども、実はわがままっていう意味もある。マイクはその両面の要素をうまく引き出してくれる、引き出し屋さんかな。正直なところ、マイクからは沢山のことを教わったよ。曲を書く上で、じっくり時間をかける事、ちょっとしたことを変えるだけでものすごく大きな変化をもたらすことができるということを教わった。自分って今までパッとその場で集中して全部書いて、それで終わりにしたいっていうタイプだったんだけれども、そうじゃなくて、じっくり辛抱強く、根気よく、粘り強く続ける取り組むっていうこと、一見ダメそうでも何度も何度もやり続けるってことでよくなるってことを教わったんだ。だから、マイクはコツコツ彫刻家が石を削って一個のものをつくりあげるのに近くて。僕は子供の様にわーって遊んだかと思えば、すぐ飽きちゃって、またすぐにガーって思いついて、ガーってやるという風なところがあるんで、ある意味いいコンビネーションなのかなって(笑)。

――本当に良いコンビですね。今後The D.O.Tはこのまま二人のユニットでいくのか、もしくは、バックバンドを携えたりとか、もうちょっとプロジェクトとして広がりがあるものなのかって。

マイク う~ん、そうだね、とりあえずのところ、当面は、二人でやっていくかな。それで非常にうまくやっているし。将来的に二人じゃなきゃ駄目って限定するつもりもないし。その辺はオープンに臨機応変にいきたいな。ただ、現時点では二人で十分だし、むしろ二人の方が歌も前にしっかりでる。他のミュージシャンがいることでどうしても楽器とかに気が散ってしまうような事も無い。今後、もしライブの規模が大きくなってくれば、ザ・ミュージックのベーシストを呼ぶかとか、ザ・ストリーツのキーボードを呼んだりとか、ドラマーどうしようかってなったら、ザック・スターキー(リンゴ・スターの息子、かつてはオアシス、ザ・フーでドラムを務める)を呼んだりするかもしれない(笑)。

――ザック・スターキーですか(笑)。先ほど70曲を制作したという話がありましたが、それだけ曲を作り続けることができるモチベーションは一体どこからくるのかを最後に教えてください!

ロブ 二人とも兄弟がいて、どちらもちゃんとした仕事をしているんだ。僕の兄弟はトラックを運転しているし、彼の兄弟は建築業に携わっている。で、自分達はそんな兄弟と比べて、「ミュージシャンって何もしてないって思われたらどうしよう」とか、「彼らはあんなに一生懸命働いているのに自分は何もしていない」とかいう罪悪感の意識で、働いているんだと思う。だから、仕事をする、曲を作る、曲を作らないと不安になる。不安になるよりも働いたほうがいいと。だから常に働いているんじゃないかな。

マイク 僕の場合はそれが世に出そうが、出さなかろうと、曲を書かずにはいられないんだ。自分の中でそれを、書く必要があるという衝動を感じるから。それが自分の中での溜まっている圧力を解放してくれる、プレッシャー・リリースみたいなものだと思うね。あとはまあ退屈をしてしまうと心配になってくるので、自分を退屈させないためにも、創作活動を常にする必要がある。僕にとって音楽を作ることによって自分が存在する意味を見出すことが大切なんだ。

ロブ また兄弟の話に戻るんだけど、弟はトラックを一日中運転して物を必要している人に送り届ける。それによってお給料をもらう、それによって家族を養う事ができる。で、そこに満足感、やりがいを感じるんだと思う。僕らにしたら、そういう達成感って一年に一度ぐらいしか味わえないんだよね。で、それに加え、一日中ものすごい頑張って書いた曲がすごく駄作だったりして、がっかりするんだけど、でも続けなくちゃならない。そんなことを経験しながら、なんとかやってるんだ。生きていくには、いいものをつくるには、一生懸命やるしかないんだよね。

(text&interview by Yuu Nakazato)

★The D.O.T.からのコメントもチェック!! おや? 彼らの手には紅白の・・・

Event Information

The D.O.T. Japan Tour 2013

●大阪公演
2013.06.11(火)@CLUB QUATTRO
OPEN 18:00/START 19:00
ADV ¥5,500(ドリンク別)

●名古屋公演
2013.06.12(水)@CLUB QUATTRO
OPEN 18:00/START 19:00
ADV ¥5,500(ドリンク別)

●東京公演
2013.06.13(木)@LIQUIDROOM
OPEN 18:00/START 19:00
ADV ¥5,500(ドリンク別)

Ticket Information
大阪公演:チケットぴあ(P:195-862)、ローソンチケット(L:53147)、イープラス
名古屋公演:チケットぴあ(P:195-905)、ローソンチケット(L:47950)、イープラス
東京公演:チケットぴあ(P:196-349)、ローソンチケット(L:73571)、イープラス、岩盤

主催:InterFM(東京公演)
協力:Hostess Entertainment
お問い合わせ:SMASH(03-3444-6751)

Release Information

2013.04.24 on sale!
Artist:The D.O.T(ザ・ディー・オー・ティー)
Title:Diary(ダイアリー)
HOSTESS/COOKING VINYL
HSE-60156
¥2,490(tax incl.)

Track List
01. Make It Your Own
02. Don’t Look at the Road
03. Blood, Sweat and Tears
04. How We All Lie
05. Under a Ladder
06. Makers Mark
07. Left at the Lights
08. Left Alone
09. Wherever You May Be
10. Most of My Time
11. What Am I Supposed to Do?
12. How Hard Can It Be?
13. Everything Falls *
14. Imagine The Worst *
15. Heart Won’t Bruise *
16. How We All Lie(Baxta Remix)*
17. How We All Lie(Jett Remix)*
18. How We All Lie(Mike Sour Trap Remix)*
*ボーナストラック
※日本先行発売、ボーナストラック6曲、歌詞対訳、ライナーノーツ 予定