——今回、マスタリングを手がけたMuckyはマスタリング・エンジニアというより、プロデューサーとしての活躍が目立っている方だと思うんですけど、彼に依頼した動機は?

JEMAPUR 彼の関わっている音楽の出音が何年も前からとても好きだったというのが一番大きいですが、実は、そもそも彼がエンジニアだとは思ってなかったんですよね。SevdalizaのアルバムにクレジットしてあるSoundkingsというロッテルダムのスタジオでマスタリングしているらしい、ということはわかって、とにかくそこのスタジオにお願い出来ないか、と思ったのですが、話していったら、Mucky自身がエンジニアだったことが判明したんです。音楽を気に入ってくれて、そこから話はかなり早かったですね。時差を利用してかなり密にやりとりをしながらマスタリング・セッションをすることが出来ました。

——Sevdalizaの作品を聴くと、空間が活かされているところに大きな特徴があるように思いました。

JEMAPUR そうですね。彼はコンポジションがとても空間的で、ミュートというか、音と音の間の使い方が巧いですよね。彼らの音楽と比べるとYJYはもっと構築的というか、ハーモニックなレイヤーが多いので、どうなるかな? と思いましたが、結果的にすごく良い仕上がりになったと思います。

——Young Juvenile Youthも十分に間を活かした音楽だと思うんですけどね。

JEMAPUR 日本で作る音楽は情報が多くなってしまうというか……逆に言えば、その情報量の多さこそが日本で生まれる音楽の個性かも知れないですね。

——今回のアルバムは、R&Bやトリップホップを思わせるスローなものからガラージやダブステップ、テクノ、ハウス的なアップテンポなものまで、ヴァリエーションに富んだ内容になっていますし、一聴すると、既存のビートフォーマットに則っているようにも聞こえるんですけど、よく聴くと、既存のジャンル、そのルールからはみ出したものになっていますよね。

ゆう姫 例えば、グルーヴというと、みんながよく知っている、ファンキーと形容されるようなアフリカ系アメリカ人のグルーヴがあると思うんですけど、それとは違うJEMAPURのグルーヴがあるんですよね。

JEMAPUR アフリカにルーツを持つようなグルーヴに対して、縄文的な、日本固有の土着的な感性を自分なりに落とし込んでいるというか、自分の体から生まれるグルーヴを探している感覚はあります。

ゆう姫 だから、JEMAPURの作ったトラックを聴いていても、海外の音楽を聴いているような気持ちにはならないんですよね。

JEMAPUR 海の向こうから入ってくる音楽をそのまま真似しても、オリジナルには絶対に敵わないし、フォロワーはどこまでいってもフォロワーなんですよね。オリジナルでなければ存在意義がない、ぐらいに思ってます。

【インタビュー】Young Juvenile Youth がアルバム『mirror』で表現する鏡面的な音楽世界 interviw_yjy_MG_2334-700x467

——特定のジャンルやビートに寄りかからない曲を生み出すためには、2人のやり取りはどうしても抽象的になりますよね。

ゆう姫 以前はその抽象的なものを表現するにあたって、言葉そのものも抽象的すぎて、ダイレクトな表現ではなかったんですね。だから、今回のアルバム制作では、その抽象的なものを現実というフィルターに通過させるアプローチをトライしてみたし、それがこの一年経験した生みの苦しみの原因でもあったんです。

——抽象から現実への歩み寄りが大きなハードルだったんですね。今回のアルバムでは、4曲目の“When”に名古屋のラッパーのCampanellaをフィーチャーしています。彼は、昨年、Ramza、Free Babyroniaという先鋭的なビートメイカーと『PEASTA』という素晴らしいアルバムを発表していますが、彼とはどういう経緯でコラボレーションすることになったんでしょうか?

JEMAPUR 静岡時代、関西方面に行く時に、名古屋に立ち寄っては、RamzaやFree Babyronia、Campくんはじめ、周りにいるラッパーたちと遊んでいたんです。割と籠りがちなスタンスでやってきた僕とは違って、コミュティが能動的で、魅力的に感じていました。その頃から彼らと連携して何か作れたらいいなって思っていたんです。

——JEMAPURくんは、2005年に降神クルーのラッパー、志人のアルバム『Heaven’s 恋文 ~ヘブンズ・レンブン~』でもコラボレーションをしていますし、今年、新たな共演作『Eu haere ia oe? / てけてんすくてれすくてんすくす ep』も発表されましたよね。

JEMAPUR そうですね。それこそ、RamzaやFree Babyroniaとは、降神のアートワークを手がけている戸田正樹 aka T.CONTSUという友人がきっかけで出会った繋がりなんですね。音が音を繋ぐネットワークにはとても特別なものがある気がします。

ゆう姫 そして、去年、関西でライブをやった帰りに、アーティストでもあるRamzaやFree Babyroniaのエキシビションがあって、そこでライブをやるらしいという話を聞きつけて、名古屋に立ち寄ったんです。私はそれ以前に日本のラッパーのライブ見たことがなかったんですけど、そこでラップしてるCampanellaの声やフローがすごい格好良かったので、JEMAPURを介して、何か一緒にやりましょうという話になったんです」

【インタビュー】Young Juvenile Youth がアルバム『mirror』で表現する鏡面的な音楽世界 interviw_yjy_MG_2347-700x467

——Young Juvenile Youthの作品にゆう姫さん以外の声が加わるのは“When”が初めてですし、それがヒップホップシーンで先鋭的な動きを見せているCampanellaというところが驚きであり、納得するところでもあり。

ゆう姫 結果的にCampyくんと声の相性が良くて、いい曲が出来たと思うんですけど、私自身、ラップをやってみたいと思っていたということもあるし、この曲に関しては、そんなことさえ考えず、面白そうだからお願いしました。そして、2人でやるなら、せっかくだから、男女のやり取り、女と男の考え方の違いが出たものになるといいなと思って。

JEMAPUR こういうカジュアルなラップは、彼の作品としても珍しいような。

ゆう姫 そうだね。確かにバラエティに富んだ、広がりのあるリリックを書いてきてくれたなと思いました。

Young Juvenile Youth – When feat. Campanella [Official]