——ヴォーカル・テクノのフォーマットを借りた11曲目の“Anti Everything”は、今から4年前、2013年にアナログでリリースしたYoung Juvenile Youthの初めての作品ですよね。この曲がアルバムに収録されることになるとは思いませんでした。
ゆう姫 2013年当時から曲が大分変わって、しかも、その変化があまりに良かったんですよね。
JEMAPUR ミックスが変わったことによって、曲の伝わり方が変わったということもあるし、古い曲をカバーするように、自分が作った古い曲をもう一回作り直してもいいと考えているんです。YJYは、常に変化し続け、アップデートし続けることがコンセプトとしてあるし、この曲には僕らの姿勢が集約されているところもあるのでリメイクしました。2013年のアナログ・ヴァージョンとはかなり違う表情になっているので、新しい曲として楽しんでもらえるんじゃないかと思います。
——そして、8曲目の“Slapback”は、今年の<フジロック>でAphex Twinの映像を担当したイギリスのヴィジュアルアーティスト、WEIRDCOREがミュージックビデオを手がけていますが、映像と合わさると、レイヴィーなダンストラックとして響きます。
JEMAPUR 1曲のなかに多くの要素を詰め込みすぎないように意識しているんですけど、この曲ではゆう姫の声をシンセ的に扱ってみようという発想がまずあって。声をベースにしたパッド音と相性が良かったのが、アシッドベースだったんですよ。それがこの曲のレイヴ感を醸し出していると思うんですけど、アート・オブ・ノイズだったり、808ステイトのような古いエレクトロニックミュージックをいまだに聴いていたりもするので、そういう要素がにじみ出ているのかもしれないですね。
ゆう姫 私の声がシンセ的に使われているので、私の脳の中で起こっていることから抜け出せないというトリッキーな内容がいいなと思って歌詞を書きました。
——映像を介したWEIRDCOREとのコラボレーションはどういった経緯で行われたんでしょうか?
ゆう姫 彼とコラボレーションすることになった経緯は、私がGUCCIのショーでミラノに行く機会があって、せっかくだから、そのついでに違う国にも行きたいと思って、ロンドンにも行ってきたんですけど、10年位前にJEMAPURがライブで一緒になったWEIRDCOREっていう人がいるよっていう話からレーベルの人を通じて彼の連絡先をもらったので、自分でアポを取って、会いに行ったんです。
そうしたら、彼は私たちの作品を聴いてくれていたこともあって、すごく仲良くなって、毎日一緒に遊んでたんですけど、彼の方からミュージックビデオを撮りたいって言ってくれたので、もちろん、是非!ってなって。それで3曲送ったなかから選んでもらったのが“Slapback”だったんですよ。彼のなかでは、すでにアイディアが決まっていて、私のストレージがパンクするくらい映像や画像のリファレンスが大量に送られて来ました(笑)。
——あのミュージックビデオはハイレゾで見ると、映像のレイヤー、奥行きと飛び出してくる感じがものすごいですよね。
JEMAPUR ストリーミング以上にDVDはさらにすごいことになっているので、ぜひ、そちらを見てもらいたいですし、彼とは今後もさらにコラボレーションしたいですね。
Young Juvenile Youth – Slapback [Official Music Video]
——そして、ミュージックビデオといえば、トリップホップを彷彿とさせるダウンテンポの“Her”は、ゆう姫さんも出演したショウダユキヒロ監督の映像作品『KAMUY』でカメラマンを務めた上野千蔵監督の初MV作品ですよね。
JEMAPUR 千蔵さんに音楽を聴いてもらったら、とても気に入ってくれて、一緒に音を聴きながら、どんどん映像のアイディアが湧き出てきたんです。そういう自然な流れから様々な試行錯誤・紆余曲折を経て形になるわけですが、彼の初となるMV作品を企画の段階から一緒に作ることが出来て、本当に嬉しかったですね。
Young Juvenile Youth – Her [Official Music Video]
——美しい自然の風景のモーフィングや現実にはあり得ない奇景が出てきたり、シュールレアルな映像は息を飲みますよね。
ゆう姫 そうですね。千蔵さんの思いが最高の形でYoung Juvenile Youthの世界観に見事にミックスされて、本当に素晴らしいコラボレーションになったと思います。映像に関しては、私の管轄外でもあるし、そして、千蔵さんが情熱をもって映像表現に向き合っていることを知っているからこそ、気持ちよく身を委ねることが出来たんですよね。
——Young Juvenile Youthは、毎回、映像作品が素晴らしく、信頼できる映像作家に身を委ねつつ、維持している高いクオリティはこだわりの賜物だと思います。
JEMAPUR 揺るがないヴィジョンとこだわりをもってフィニッシュまで突き進む、最強なチームの方々とご一緒出来て、本当に恵まれているな、と思います。映像によって音楽の世界観がより人に伝わりやすい形になりますし、多くの人が関わることによって完成する全体芸術としての映像制作のプロセスはとても刺激的で、いつもとても学ぶことが多いです。
ゆう姫 映像表現は、ライブともレコーディングとも違うし、私が私でもないし、色んな要素を絡めて表現出来るので、出来ることなら、もっともっと携わっていきたいですね。
——そして、ゆう姫さんは現代美術家の三島章義さんとアートのコラボレーションを行ったり、ファッション界でもご活躍ですが、音楽と他ジャンルのクロスオーバーについてはいかがでしょうか?
ゆう姫 特に考えがあってやっているわけではないんですけど、インスピレーションの源は色んなところに落ちているから、それをピックアップしている感じですかね。それが音楽や歌詞にも反映されていると思うし、もし、今後も刺激的なことが起きたら、自ずと反映されていくと思います。私は独りでいると、自分を見失いがちなので、色んなものや人に触れて、それを介することで自分のことがもっともっと分かるようになるんじゃないかなって。
私はもっともっと自分のことが知りたいし、もっと自分のことを歌詞にしたいし、それを歌いたい。今はそのために必要なプロセスを踏んでいるところなんだと思います。
——“他人は自分を映す鏡”という言葉があったりしますが、今の発言を受けると、アルバム・タイトルの『mirror』は、自己探求の作品でもあるということですよね。
ゆう姫 まさにそうですよね。それと同時に鏡には色んな意味があって、本当のものを映しているのかというとそうでもないし、そうであるともいえる。そもそも人間の目は自分を見るようには作られていなくて、鏡を見ることではじめて自分の容姿がわかりますよね。映し出された世界はすべてがあべこべで、なんとなく禁断の入り口のような不思議な感じがします。『mirror』というタイトルには色んな意味が含まれていますが、私たちが日常で出会うさまざまな出来事にも鏡のような側面があって、出会った人やものに触れることで、自分のことがもっとよく分かるようになるんじゃないかなって思うんですよね。
JEMAPUR そもそも現実世界が“ここ”に存在するのかどうかすらまだ分からないですけど、鏡が異次元への入り口になっているという話があったりするように、鏡には魔力のようなものが宿っている気がします。『mirror』も鏡のように作用しますように、という感じです。
EVENT INFORMATION
birth of mirror
2017.11.30(木)
OPEN 19:30/START 20:00
SuperDeluxe
DOOR ¥2,500(1ドリンク別)
Live:
Young Juvenile Youth
DJ:
Daito Manabe (Rhizomatiks)
Licaxxx
Photo Exhibition:
Tim Gallo
Lighting:
HGRN
光線クラブ
特別企画展 / Special Photo Exhibition : Tim Gallo
ロシア生まれの凄腕スチールカメラマン、ティム・ギャロがゆう姫を撮り下ろした、新作コラボレーション作品を展示します。
RELEASE INFORMATION
mirror
2017.11.22(水)
Young Juvenile Youth
初回生産限定盤 CD+DVD
UMA-9100-01
7インチサイズ豪華紙ジャケ仕様
16Pブックレット
¥3,600(+tax)
[amazonjs asin=”B076DNBNTW” locale=”JP” title=”mirror(初回生産限定盤)(DVD付)”]
通常盤 CD
UMA-1100
¥2,500(+tax)
[amazonjs asin=”B076DNGNWF” locale=”JP” title=”mirror(通常盤)”]
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【インタビュー】Young Juvenile Youth・ゆう姫が見据える「ポップミュージック」の新境地。映画・アート・音楽、異なる世界を繋ぐ存在へ
interview & text by 小野田雄