々にラインナップが明らかになっている今年の<フジロック・フェスティバル>。先日はオノ・ヨーコが率いる伝説のバンド、プラスティック・オノ・バンドの出演が決まり、新旧の<フジロック>ファンたちを大いに驚かせた。プラスティック・オノ・バンドが日本のフェスに参加するのは1974年に行われた伝説のフェス<ワンステップフェスティバル>以来40年ぶりだそうで名演再現に期待が高まる。

プラスティック・オノ・バンドは1969年にヨーコとジョン・レノンによって結成されたロックバンド。主に70年代前半にリリースされた2人のソロ作品のバックを務めていたことで知られているが、メンバーは流動的でさまざまなアーティストが入れ替わり立ち代わり参加していた。2008年以降の新生プラスティック・オノ・バンドはコーネリアスこと小山田圭吾を中心とした日本人ミュージシャンで構成されていることからもわかるように、つまりバンドはオノ・ヨーコがいれば成立するのだ。ジャンルもジョンが志向したブルースロック、ヨーコが得意とした前衛音楽、コーネリアスのプロデュースによるエレクトロサウンドまでその音楽性は多岐にわたる。そんなユニークなバンド史の中で最も有名なメンバーがエリック・クラプトンである。クリームを解散させたばかりのクラプトンは結成当初のバンドにジョンに誘われるままにギタリストとして参加、『ピース・イン・トロント』というライブアルバムで素晴らしいブルース・ギターを聞かせている。“マネー”、“ブルー・スウェード・シューズ”といったロック・クラシック、ビートルズ“ヤー・ブルース”などを収録したそのアルバムは、イギリス人であるジョンとクラプトンがいかにアメリカの黒人音楽(リズム&ブルース)に影響を受けてきたかを明確に開示させた名作である。そう、すべてのロックはブルースに通じるのだ。

The Plastic Ono Band“Give Peace A Chance”

そのクラプトンが自らの原点を確認するべく、近年主宰しているフェスが<CROSSROADS GUITAR FESTIVAL>である。伝説のブルースマン、ロバート・ジョンソンが1937年にレコーディングし、1968年にエリック・クラプトンがクリーム時代にカバーしてその名を広く知られることになったロックの始祖ともいえる名曲を冠にしていることからもわかるように、同フェスはブルースに焦点を当て、ジャンルの枠を超えた様々なギタリストが参加して人気を博している。2004年より3年おきに行われ、4回目となる昨年(2013年4月12、13日の2日間にわたって開催)は過去に例を見ないほど多彩で豪華な顔ぶれがニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンに集結した。幹事のクラプトンをはじめ、ジェフ・ベック、キース・リチャーズといったブリティッシュ・ロック勢、アメリカからは大御所ギタリストのB.B.キングやブッカー・T、そして名実ともに世界のトップスターのジョン・メイヤー。そのほかにも、オールマン・ブラザーズ・バンドやロス・ロボスなど、ロック誕生以来の存命名ギタリストたちがすべて勢ぞろいしていると言っても過言ではないほど、実に豪華な顔ぶれである。

Cream“Crossroads”

クラプトンとキース、クラプトンとB.B.キングの共演は自然と見ている側の背筋が伸びるし、ジョン・メイヤーとキース・アーヴァンによるカバー“ドント・レット・ミー・ダウン”は見ごたえ十分の迫力を感じさせる。また、クラプトン・ファンの間では有名なギタリスト、ドイル・ブラムホール二世は、ジミ・ヘンやスティーヴィー・レイ・ヴォーンを思わせる好プレイが光る。そして、そのハイライトは、出演者がステージに横一列に並びソロを披露する“ハイ・タイム・ウィー・ウェント”である。老いも若きもスリーコードの上を縦横無尽に駆け回り、畳み掛けるように弾きまくるギタープレイの妙技に、過去、現在、未来をつなぐブルースの可能性を見ることができる。

循環コードを繰り返す長尺のブルースと同じリフをループで繰り返す最新のエレクトロサウンドも実はさほど大きな違いはないのではないか。という視点で言えば、いまのプラスティック・オノ・バンドにクラプトンが復帰してソロを披露しても違和感がないように思える。ぜひとも、21世紀の“ヤー・ブルース”再演を聞いてみたい。「プラスティック・オノ・バンド、フジロック参加」の報のあとで、このライブ映像を見たら、そんな妄想が働かずにはいられなくなった。

<Crossroads Guitar Festival 2013>-Eric Clapton

(text by Yoshiaki Takebe)

Program Information

洋楽ライブ伝説エリック・クラプトン クロスロード・ギター・フェスティバル 2013
2014.04.27(日)21:00
放送チャンネル:WOWOWライブ

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