——ところで『スーベニア』リリース時にも聞かれたとは思うんですが、再度、日本文化からの影響ということについてお聞きしてもいいですか?
音楽的な影響というと、最近だと山下達郎さんの70年代、80年代の作品を少し知って、そのプロダクションが面白いなと思って聴いたり、あとはPerfumeと中田ヤスタカさんの作品とか。もちろん日本の音楽で聴いたことのないものはまだまだたくさんあるし、もっと聴いていきたいね。あと、前回もしかしたら話したかもしれないけど、音楽を超えたところで日本の人たちの献身ぶりがすごく印象に残っていて、それにとても影響を受けているんだよね。
——たとえば?
そば職人の人とか、家を建てる人とか、モノを作る人たちがより良いものを作っていこうっていう意識が強くて、そういったことにすごく刺激を受けたんだ。自分たちも毎日音楽を書いて、毎日より良いものを作っていく、音楽作りに取り組んでいく「姿勢」っていうものを日本から学んだ気がする。ただ作って出すだけじゃなくて、モノ作りに対する「姿勢」、それが日本の皆さんから学んだことだと思う。
——伝統的な工芸とか実際に見に行ったこととかありますか?
原宿でレストランやってる人とかVACANTってギャラリーの人と知り合いになって、デザイナーや写真家やシェフとかそういった人たちの職人ぶりを見たりとか。あと、彼らが親切に陶芸家の人とかに会わせてくれたりしたんで、伝統的なモノ作りの場も少しは見てるんだけど、特にそういうところを訪ねて行かなくても、そば屋さんに行けばそば職人がそばを打っているし、寿司職人が寿司を握っている。普通にご飯を食べに行ったりすると、そこの人たちがモノを作るために神経を集中させているところに出会えて感銘を受けてるよ。
——英語にもあると思うんですが「神は細部に宿る」みたいな感覚がクリスは好きなんですか?
そうそう。確かにそれはある。最近は家で音楽を作ってるんだけど、それは家でやればいつまでもディティールの手直しができるから。すべての音の細部には意図や意味があって、更により良いものにしようと努力する。自分が表現したいものを目指すためには、それは重要なことなんだ。
——今回の来日で得たインスピレーションや出会いはありましたか?
サカナクションは大きなインスピレーションになった。今回、<サマソニ>の大きな会場でお客さんの反応も見ながら見ることができたことが大きかったのかもしれないけど、彼らには独自の世界があって、その中でいろんなことを試していることにとても驚いた。結構長いセットの中で、最初はラップトップで曲をやっていたのが、最後の方には和太鼓まで出てきて、一つのバンドがこんなにいろんなことをできるんだということにすごく感銘を受けて。一つのバンドの中にいろんな要素があるということにすごく刺激を受けたね。
——ワンマンだとさらに何倍ものアプローチを見せてくれますよ。
見たいね(笑)。大阪でライブの後に(山口)一郎と会って少し話ができたんだけど、今回は照明もいつもより少ないし、レディオヘッドがその後に控えていて、いろいろ制約があったので、今度は自分たちのショーも見に来てねって言われたよ。<サマソニ>でもすでに素晴らしかったけどね。
——一郎さんのように意識の高い人と是非何かやってほしいです。
夢ですね、うん。
——ところで前回来日して以降、日本のカルチャーでハマったものとかありますか?
実は渋谷の単独公演の時にも話したんだけど(笑)、『テラスハウス』にハマっちゃって。もともとはナマの日本語に触れたくて、それ以前にもアニメとかドラマとか勉強のために見るようにしてたんだけど、どうもアニメやドラマだとはじめから台本があるからセリフっぽく感じていた。その点『テラスハウス』はリアルで普通の日本語というか、普段皆さんが喋ってる素のままの日本語が聴けるから、そういうのに慣れる練習として見てたんだけど、気がついたらすごくハマってしまい(笑)。登場人物がみんな好きになって、だんだん彼らが織りなす人間模様が気になるぐらいになってたんだよね。たとえば、まずは字幕なしで見てみて、自分が意味が聴き取れているかを今度は字幕ありで見て、同じ回を何回も見てるうちにハマってしまったっていう(笑)。
次ページ:次のアルバムへの展望も!