2014.11.13(THU)@WOMB
Red Bull Music Academy presents 1UP:Cart Diggers Live

いに千秋楽を迎えた<Red Bull Music Academy Tokyo 2014(以下、RBMA)>において、一際異彩を放っていたのがこの<1UP:Cart Diggers Live>だろう。日本のテレビゲーム音楽に秘められた歴史を探るドキュメンタリー・シリーズ<DIGGIN’ IN THE CARTS>のスピンオフ的なイベントとだけあって、完全ソールド・アウトとなった会場のWOMBは国内外から集結したファッション・ピープルとコスプレイヤーとナードとその他大勢ですし詰め状態。ドット型のネクタイやサングラスといった、どことなく「8bit感」を漂わせるアイテムを身に付けた来場者も目立つ。

【レポート】ゲーム愛ゆえの奇跡のパフォーマンスに、大・往・生! music141121_1up-cart_1

(photo by Yusaku Aoki)

【レポート】ゲーム愛ゆえの奇跡のパフォーマンスに、大・往・生! music141121_1up-cart_2

(photo by So Hasegawa)

さっそくメインフロア「ROOM1」に足を踏み入れると、ブースの中央に浮かぶクリスタルのような物体に初音ミクの映像が投射され、DUB-Russell &(*L_*)が耳をつんざく高速ブレイクコアを超満員のオーディエンスに喰らわせている。燃えさかる炎の演出や幾何学的な映像も含め、視覚と聴覚で楽しませるパフォーマンスは圧巻だ。ステージ上のスクリーンに「CLEAR!」の文字が浮かぶと、「NOW LOADING……」というメッセージと共に、ドット絵で再現した出演者たちのキャラクターが映し出される小ネタもファミコン世代にはたまらない。

【レポート】ゲーム愛ゆえの奇跡のパフォーマンスに、大・往・生! music141121_1up-cart_6

DUB-Russell &(*L_*)(photo by Yusaku Aoki)

『メトロイド』や『マザー』シリーズの作曲家としても知られるChip Tanakaのノスタルジー全開なチップチューンや、ゲーム音楽への溢れんばかりの愛とメモリーを自身のトラックと共に放出したファティマ・アル・カディリもヤバかったが、数十台のTVモニターにセガのベルトアクション・ゲーム『ベア・ナックル』の映像を映し出し、欠席したラスティの分までフロアを沸かせまくった古代祐三&<RBMA>東京チームのステージは文句無しのハイライト。チープな8bitとドローン・ミュージックの相性の良さを思い知った。いっぽう、チラッと覗いてみた「ROOM2」ではゲーム音楽ラヴァーな日本人トラックメイカーや作曲家たちが顔を揃え、佐野電磁がナムコの名作『ラリーX』や『ゼビウス』のテーマ曲をKORG DSN-12でリアルタイムで打ち込みしたり、QUARTA 330がドラムンベースとアニソンをマッシュアップしたりとやりたい放題。『ファミ通』の名物編集者だったローリング内沢のキュレーションによる、ゲーム機実体験コーナーなどもアラサー/アラフォー世代には涙腺直撃だったはずだ。

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Chip Tanaka(photo by So Hasegawa)

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QUARTA 330(photo by So Hasegawa)

そして「ROOM1」のラスボスを務めたのは、今年3月の初来日公演も記憶に新しいワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(OPN)ことダニエル・ロパティン。「Bullet Hell Abstraction IV」と名付けられたスペシャル・セットは、いわゆる弾幕系シューティング(bullet hell)へのトリビュート演奏となり、スクリーンに大写しとなったのは縦スクロールシューティングの金字塔『怒首領蜂』(どどんぱち)のプレイ映像だ。ブース前に展示された人体やギターのオブジェが一面クリアごとにライトアップされ、大量のスモークが吹きつけられる四部構成。情報量過多の強烈・凶悪なビートの応酬と、『アール・セヴン・プラス』でも聴けた神々しいオルガンのメロディーは、おびただしいほどの敵弾で埋め尽くされたスクリーンの映像と見事なシンクロを果たす。徹夜でゲーム三昧だった少年時代を思い起こすような、どこか懐かしいトリップ体験。これぞ大・往・生!

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ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(photo by Yusaku Aoki)

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(photo by So Hasegawa)

とあるインタビューで、日本のゲーム音楽および弾幕シューティングへの深い知識と愛情を明らかにしたのはダニエル・ロパティンだったが、<1UP:Cart Diggers Live>における素晴らしいパフォーマンスの数々はまさに「ゲーム愛ゆえの奇跡」。来年はぜひ、秋葉原で開催してください。

【レポート】ゲーム愛ゆえの奇跡のパフォーマンスに、大・往・生! music141121_1up-cart_4

(photo by So Hasegawa)

(text by Kohei UENO)

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