ざらついた男気と温もりを感じさせる語り口、慎ましやかな存在感を見せるシンプルで緻密なビート、そして、それらを包み込む絶妙なメロウネスと風通しの良さ……“Good Enough feat. kiki vivi lily”は、聴く者の耳を不意に奪うコンビネーションの妙に溢れている。今回「MTV EXCLUSIVE」に選ばれたこのトラックで大きな注目を集めるであろうニューカマー、それが唾奇×Sweet Williamだ。

この二人の名前が早耳なリスナーの間で囁かれるようになったのは、そう昔の話ではない。日本きってのヒップホップ・クリエイター集団=BCDMGのアルバム『FACT OF LIFE』で披露された“Same As”にて、KANDYTOWNのIO & YOUNG JUJUとマイクを回していたのが唾奇であり、そのトラックを手掛けていたのがSweet Williamだった。また、『フリースタイルダンジョン』で知られるCHICO CARLITOの“一陽来復”に同郷のよしみで参加していたのが唾奇であり、これまたビートはSweet Williamによるもの。さらにSweet Williamは自身のアルバム『Arte Frasco』も高評価を得ており、なかでもJinmenusagi、Itto、kiki vivi lilyをフィーチャーした“Sky Lady”は、YOSAのミックスCD『CITY HIP POP MIX』でもオープニングを飾るほどの人気曲に育っている。それらすべてが2016年に残された楽曲だということを思えば、彼らの名前がまさに今ジワジワと浸透している真っ最中なのは明らかだろう(ちなみに“一陽来復”と“Sky Lady”は『Manhattan Records presents 2016 BEST OF JAPANESE HIP HOP MIX』にもピックされていた)。

唾奇, IO & YOUNG JUJU – Same As 【Official Video】

CHICO CARLITO/一陽来復 ft.CHOUJI,唾奇 Beats by Sweet William

Sweet William – Sky Lady feat. Jinmenusagi Itto & kiki vivi lily

沖縄出身の唾奇(つばき)は、骨太なクールネスとリリカルな人間味を併せ持った魅力的なソロ・マイカーだ。数年前から地元の仲間たちとの楽曲を世に出し始め、現在は名古屋のレーベル/クルーである〈Pitch Odd Mansion〉に所属。最近ではHOKUTOの“Cheep Sunday”(2016年)やMICHITAの“Generator”にも存在感を注ぎ込んでいるが、TNGとの“Kikuzato”や“道 -TAO-”(2015年)といったアンダーグラウンド・クラシックでは独特の路上感が咲き誇る様を堪能できるはずだ。

hokuto – Cheep Sunday feat. 唾奇

TNG KIKUZATO feat.唾奇【MV】

一方のSweet Williamも同じ〈Pitch Odd Mansion〉に所属するトラックメイカーだが、彼の拠点は神奈川。名が体を表した甘美な音作りに止まらないビート捌きの巧みさは、いわゆる90年代マナーや往年のジャジー&メロウ・ビーツの流れを汲みながらも、印象的なドラム・パターンやカラフルな場面転換のセンスも含めて独自のラヴリーな持ち味を創出している。種々のリミックス・ワークやアパレル・ブランドへの楽曲提供も行いつつ、2015年の初作『LO ONE』、先述の2作目『Arte Frasco』のいずれにも迎えている唾奇との相性は、互いのカラーを引き立て合うという意味で、まさに“Good enough”なコンビネーションだと言えるんじゃないだろうか。

そんな親密なヴァイブが瑞々しく渦巻く“Good Enough feat. kiki vivi lily”は、このたび公開となったKunieda Shintaro制作のMVも相まって、より広い層の耳目を惹き付けながら、さらに色鮮やかな花々を咲かせていくに違いない。

唾奇 × Sweet William / Good Enough feat. kiki vivi lily

text by Koji Dejima

INFORMATION

Good Enough feat. kiki vivi lily

「MTV EXCLUSIVE」にも選出!ヒップホップシーンのニューカマー・唾奇×Sweet Williamに注目 goodennoughftkikivivilily-700x700
唾奇×Sweet William
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