──レコーディングは、どれくらいの期間をかけて、どこでおこなった(オーストラリアのフリーマントル)? その制作環境がアルバムにもたらしたことはある?

期間は2年間で、場所は最初から最後までいつも作業している俺のホーム・スタジオだった。ツアー中に曲を書いたりっていうのはあったけど、レコーディングの作業自体は家。だから環境はそんなに変わっていないし、そっちのほうが心地よく作業出来るから好きなんだ。自分に必要なスペースが好きな時に確保できるのもいい。時間やお金を気にしないといけないから、プロフェッショナルなスタジオで作業するのはあまり好きじゃないんだ。

──アルバムには、ケヴィン以外に参加した人はいる?

ノー。俺だけだよ(笑)。バンドもライブの時にプレイするだけ。アルバムは全部俺なんだ。いつもと同じ。

──自分だけで何かを作るのと、他の誰かと一緒に作るのはどちらが好きですか?

両方全然違うからね。どちらも好きだけど、俺にとって、自分だけで作業するっていうのは、スピリチュアルでソウルフル、エモーショナルな経験なんだ。

──『カレンツ』というアルバム・タイトルにした理由は?

もちろん新しいっていう意味も含まれてはいるんだけど、自分ではコントロールできない原動力(driving force)って意味なんだ。アルバム・タイトルは一番最後に決めるんだけど、このアルバムは自分にとってどういう意味があるかなってずっと考えていて、このアイディアがいつも思い浮かんでた。俺がいつも気に入っていた言葉だったしね。また“カレント”には、激しい海流(ocean current)みたいな壮大なスケールを現す言葉でもあるし、目には見えない、感情的なものを現す言葉でもある。その両方を持っているっていうアイディアが好きなんだ。

──曲順(アルバム全体)にストーリーやコンセプトはありますか?

あるけど、こういう質問にはあまり答えたくないんだ。皆に自分自身のストーリーを持って欲しいからね。アルバムから、自由に何かを感じて欲しい。

──歌詞に関しては、どういうトピックを取り上げているのでしょう?

色々な変化についてが多い。人間としての変化とか、パーソナリティがシフトしてる状態だね。だから、ローラーコースターみたいにハイ&ローなんだ(笑)。

▼Tame Impala -“Let It Happen”

──では収録曲について教えてください。すでに公開されている“レット・イット・ハプン”は、8分近くあるシネマティックな構成だけど、すんなり世界に陶酔できるキャッチーさがある気がしました。これはどういうイメージで制作した楽曲?

イメージしたというよりは、メロディとかコードとか、突然アイディアを思いついて。実際に出来上がってみると、まるで旅をしているような感じが気に入ったんだ。

──音楽を作る時に、キャッチーさは意識しますか?

だと思う。そこが俺のポップな部分だね(笑)。ポップすぎても良くないけど、俺はポップ・ミュージックが好きだから、ポップと呼ばれても全然気にしない(笑)。

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