2.【Music】遅咲きのミュージシャンとしてのハーヴィーの軌跡

Persuasion – The Bone (Muted Horn Mix) – YouTube

*1996年にリリースされた、スムーズなジャズ・ハウスにパーカッションが乱れ飛ぶパースエージョン名義の曲。MIX CD『Late Night Sessions』に収録。

2007年にリリースされたマップ・オブ・アフリカ名義のアルバムは、ケンブリッジ出身でウィキッド・クルー/ラグンタグのトーマス・ブルックとの共作。ハーヴィーによれば「ダンスフロアではなくバーで機能する」音楽で、「俺にとって曲を書くという初めての冒険だった」。彼の母親も気に入ってるというレイドバックしたヤサグレた空気感からは、ハウス・ミュージックの世界における「ガラージ」ではなくて、ガレージ・サイケの「ガレージ」が匂い立つ。最新名義のワイルデスト・ドリームスでも、マップ・オブ・アフリカの延長線上にあるイナタく土臭い、『エル・トポ』(「ハーヴィー・サキャスティック・ディスコ」のフライヤーにポスター写真が使われたカルト・ムーヴィー)にも通じるシュールな世界を描き出している。

子供の頃は、ジンジャー・ベイカー(クリーム)、イアン・ペイス(ディープ・パープル)、ジョン・ボーナム(レッド・ツェッペリン)といったロック・ドラマー、そして髪を切りパンク青年になってからはダムドのドラマー、ラット・スケイビーズにハマっていたハーヴィーの頭の中で、ロックは常にダンスと共に鳴っているのだろう。ツェッペリンの”Whole Lotta Love”のリエディットを作るほどなのだから。

Wildest Dreams – Last Ride

*ほとんどデヴィッド・リンチの猟奇的世界に突入している最新作からのMV。

2011年のロクスソルス名義では、トーレンスのベルトドライブ式ターンテーブル(パラダイス・ガラージやスタジオ54で使われていたという名器)やオープンリールといったアナログ機材を愛用するハーヴィーが、コンピュータを駆使してソリッドな切れ味のダンス・ミュージックを展開し、テクノとハウス、両方のオーディエンスに訴えるレンジの広さを披露。アフターアワーズなメロウな情感にあふれた”Next To You”は隠れた良曲。リンドストローム&プリンス・トーマスによる”Venus”使いが耳を引くキャッチーなリミックス、アンドリュー・ウェザオールによるポスト・パンク色を強く押し出したざらついたリミックスを含む。ロックやパンクのアティテュードとDJカルチャーとの両立、長いキャリアとしては意外に遅いソロ・アルバムのリリース、そして髭(!)と、同世代のアンドリュー・ウェザオールとは共通項が多いが、アウトプットされる音は似て非なるモノ。ハーヴィーの最新MIX CD『XMIX 01』にもロクスソルスのモダン・バレアリックな世界観は引き継がれている。

Locussolus – Next To You

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