1985年の制作から40年の時を経て、坂本龍一の幻のドキュメンタリー『Tokyo Melody Ryuichi Sakamoto』(1985)が、4Kレストア版として2026年に劇場公開される。
同作品は、坂本龍一が4枚目のソロアルバム『音楽図鑑』を制作し始めた時期に、東京でわずか1週間という短期間で撮影された。スタジオでのレコーディング風景やインタビューを通して、30代だった坂本が自身の生い立ち、価値観、音楽哲学、文化について語る姿が収められている。また、『ラストエンペラー』(1988)の劇伴制作の様子や、坂本が音楽を担当・主演した大島渚監督作『戦場のメリークリスマス』(1983)の映像、YMOの散開コンサートやプロモーションビデオの映像も含まれる。さらに、かつて新宿にあったアルタや渋谷のスクランブル交差点など、1980年代の東京の風景が生き生きと映し出され、“坂本の目と、彼のポートレートを通して見た東京の音”(レナード監督)を体感することができる貴重な作品となっている。
本作を監督したのは、ニューヨーク生まれのマルチメディア・アーティスト、エリザベス・レナード。彼女はジェリー・ルイスやシャンタル・アケルマンのポートレート撮影を手がけ、アンディ・ウォーホルやポール・シュレイダー監督作『三島由紀夫の四季』(1985)の撮影現場にも関わった。1983年、カンヌ国際映画祭で『戦場のメリークリスマス』のプレミア上映を観たことが、このドキュメンタリー制作のきっかけとなったという。
完成後、本作は1985年の<ロッテルダム映画祭>、<ロカルノ映画祭>、<サンパウロ国際映画祭>で上映され、日本では同年6月9日に<第1回東京国際映画祭>でのみ公開された。その後、VHSとDVDが発売されたが入手困難な状況が続いていた。しかし、最近になって倉庫に眠っていた 16mmフィルムが発見され、修復を経てデジタル化が実現。2025年1月17日、坂本の誕生日に開催された<坂本龍一|Birthday Premium Night 2025>で特別上映が行われた際には、チケットがわずか2時間で完売。多くのファンの熱い要望に応え、ついに2026年に劇場での一般公開が決定した。
また今回の公開決定に合わせ、東京・東京都現代美術館にて開催中の展覧会<坂本龍一|音を視る 時を聴く>では、本作の場面写真を使用した特報版フライヤーが限定配布されている。
INFORMATION
『Tokyo Melody Ryuichi Sakamoto』4Kレストア版
2026年より劇場公開
監督:エリザベス・レナード
出演:坂本⿓⼀、⽮野顕⼦、細野晴⾂、⾼橋幸宏
撮影:ジャック・パメール
編集:鈴⽊マキコ
⾳楽:坂本⿓⼀
録⾳:ジャン・クロード・ブリッソン
製作:ミュリエル・ローズ
制作会社:INA、KAB Amercia Inc.、KAB Inc.
配給:エイベックス・フィルムレーベルズ ©Elizabeth Lennard
坂本龍一|音を視る 時を聴く