開催まで遂に一月を切った<FUJI ROCK FESTIVAL’21>(以下、フジロック)。今年は入場人数を減らし、全面的に「酒類販売禁止」の措置を取るなど感染予防対策を徹底し、「国内アーティスト中心のラインナップ」というフジロック史上初の内容となる予定である。そのため、フジロック初出演アーティストもこれまでになくバラエティに富んでおり、新たな才能を発掘する絶好の機会にもなりそうだ。そこで今回は、筆者がセレクトした注目すべきアクト10組を紹介していこう。

WHITE STAGE

ライター・黒田隆憲が<フジロック ’21>初登場組の注目10アーティストを紹介! column210802_fujirock-debut-03
秋山黄色

秋山黄色(22日出演)

2018年に自主レーベルからリリースしたデビュー曲“やさぐれカイドー”がSpotifyバイラルチャートで2位を記録し、その後も<ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019>ほか国内大型フェスへ立て続けに出演するなど大きな注目を浴びてきた秋山黄色。アニメ『けいおん!』で音楽に目覚め、筆者が以前インタビューをしたときには「曲作りはゲームやカラオケの延長線上にある」と話してくれた彼の作り出す音楽は、ソリッドかつダイナミックなバンドアンサンブルと、繊細かつドラマティックなボーカルが有機的に混じり合う強烈なオリジナリティを誇っている。

2020年3月にリリースされたファースト・フルアルバム『From DROPOUT』には、嵐からGReeeeN、eastern youthまで幅広く影響を受けた、美しくも歪なサウンドスケープが全編にわたって展開している。果たしてこれを苗場でどのように「再現」してくれるのか、今から楽しみでならない。

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ライター・黒田隆憲が<フジロック ’21>初登場組の注目10アーティストを紹介! column210802_fujirock-debut-09
yonawo

yonawo(22日出演)

福岡を拠点に活動し、今や福岡を代表する若手アーティストの一つとなったyonawo。荒谷翔大によるスモーキーでソウルフルな歌声と、ジェイムズ・ブレイク(JAMES BLAKE)以降の感性を感じさせるミニマルなバンド・アンサンブルが活動初期から早耳リスナーの間で話題となり、2018年に自主制作した2枚のEP『ijo』『SHRIMP」はCDパッケージが入荷即完売になるほど。

さらに2020年4月には、初の全国流通盤となる6曲入りのミニアルバム『LOBSTER』を、その半年後の11月には待望のファーストフルアルバム『明日は当然来ないでしょ』をリリースし、全国5都市で開催された初のワンマンツアーは全公演チケット即完売を記録した。ヒップホップ、R&B、ソウルなどのエッセンスがブレンドされたその音楽性の根底には、ビートルズ(The Beatles)やアークティック・モンキーズ(Arctic Monkeys)、レディオヘッド(Radiohead)と言ったロック・ミュージックが深く息づいているのも魅力の一つだ。おそらくフジロックでは、8月11日にリリースした現時点での彼らの最新作にして最高傑作『遙かいま』の楽曲も、ふんだんに盛り込んでくれることだろう。

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RED MARQUEE

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Mega Shinnosuke

Mega Shinnosuke(21日出演)

福岡出身、現在は都内を拠点に活動している2000年生まれのクリエーターMega Shinnosuke。中2の時にTSUTAYAで借りたRADWIMPSのアルバム『×と〇と罪と』に衝撃を受け、2017年秋より音楽活動をスタート。

翌年リリースされた初のソロ作品『momo』に収録された“桃源郷とタクシー”では、InstagramのDMでAAAMYYYに声をかけコーラスに参加してもらったり、今年3月には“たまたま”知り合った菅田将暉からオファーを受けて、日曜ドラマ『君と世界が終わる日に』(日本テレビ系)の主題歌“星を仰ぐ”の大役を任されたり、型にはまらない自由な活動をしている彼は、ロックやジャズ、ファンク、ヒップホップにディスコと、あらゆるジャンルを縦横無尽に渡り歩きながら、その音楽性を驚くべきスピードで進化させ続けている。

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milet

milet(21日出演)

Toru(ONE OK ROCK)がプロデュースした彼女のデビュー曲、“inside you”を初めて聴いたときの衝撃は今も忘れられない。生楽器とエレクトロを融合した重厚なサウンドと、その上で縦横無尽に飛翔するメロディ、そしてなにより印象的なのが、ハスキーで存在感のある彼女の歌声だ。思春期をカナダで過ごし、現在は東京都内に在住するシンガーソングライターのmilet。

2020年6月にリリースされたファースト・アルバム『eyes』は、くだんの“inside you”をはじめ“You & I”や“us”など、その類稀なる「声」の魅力を全面的にフィーチャーした壮大かつエモーショナルな楽曲が並ぶ。同年末には『第71回NHK紅白歌合戦』に初出場し、その計り知れない才能がお茶の間にまで広まったこのタイミングでの苗場降臨。「伝説」となること必至のステージを見逃すわけにはいかない。

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indigo la End

indigo la End(21日出演)

意外にもフジロック初登場。ゲスの極み乙女。ジェニーハイichikoroなど様々なバンド/プロジェクトを掛け持ちしている川谷絵音にとってindigo la Endは、現在稼働している中ではもっとも古くからあるバンドだ。結成時のメンバーは長田カーティス(G)のみで、後鳥亮介(B)は2014年に、佐藤栄太郎(Dr)は2015年に正式加入がアナウンスされた。

今年2月にリリースされた通算7枚目のアルバム『夜行秘密』は、文字どおり「夜」をテーマにした内容で、川谷による美しく繊細なメロディ&コーラス、長田による流麗なギターフレーズを前面に打ち出した彼らの真骨頂とも呼べる仕上がりに。コロナ禍でも感染予防対策をしっかりと行いながら、コンスタントに有観客のライブを行ってきた彼ら。そこで培った演奏力をレッド・マーキーでも存分に発揮してくれるだろう。

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THE SPELLBOUND

THE SPELLBOUND(21日出演)

BOOM BOOM SATELLITESの中野雅之と、THE NOVEMBERSの小林祐介が何やら一緒に音源を作りはじめている、という情報がSNSなどで本人たちから発信され始めたときから並々ならぬ期待を抱いていたのは筆者だけではないだろう。

ダンスミュージックとロックミュージックを高次元で融合させ、前人未到のサウンドスケープを更新し続けていたBOOM BOOM SATELLITESの「頭脳」と、ポストパンクやニューウェーブ、シューゲイザー、インダストリアルなど様々な音楽的エッセンスを取り込みながら、「最新型のロックミュージック」をデザインするTHE NOVEMBERSの「声」。果たしてその2つが混じり合ったとき、単純な「足し算」では済まされるはずはなかった。

今年4月に東京・LIQUIDROOMで行われた初ライブは、中野と小林に加え、BOOM BOOM SATELLITESでもサポートドラマーを務めた福田洋子、yahyelやDATSのドラマー大井一彌を迎えた4人体制で行われ、壮大かつユーフォリックなアンサンブルを奏でていたという。きっと苗場のレッド・マーキーでも「奇跡」を起こしてくれるはずだ。

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4s4ki

4s4ki(22日出演)

個人的に、現在もっとも注目しているアーティストの一人が、1998年生まれのシンガー・ソングライター/トラックメイカーである4s4ki(アサキ)だ。17歳の頃から独学でDTMを始め、18歳の頃からスタートした路上ライブがSNSで拡散、それがきっかけとなって19歳の時に術ノ穴から『ぼくはバカだよ。』でデビューを果たす(当時は「アサキ」名義)。ニルヴァーナ(NIRVANA)やART-SCHOOL、中田ヤスタカにネットラップ……等々、様々な音楽的要素を詰め込んだ情報量過多なサウンドが特徴で、ヒリヒリとした歌詞世界と相反する甘い歌声、安らぎと不穏を同時に感じさせるサウンドスケープ、そして繊細かつときにパワフルでエモーショナルなメロディは一度聴いたら病みつきに。

今年7月7日にスピードスターよりリリースされたメジャーデビュー・アルバム『Castle in Madness』では、米国のプロデューサー・チームPuppetをはじめ、釈迦坊主Zheanimaeshima soshiなど多彩なゲストを迎えてこれまでの集大成とでもいうべき「4s4kiワールド」を繰り広げている。すでに世界標準のサウンドを獲得している彼女の楽曲を、生で体感する絶好のチャンスだ。

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GREEN STAGE

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yonige

yonige(20日出演)

フジロック初登場にして、早くもグリーンステージへの出演が決まっているのが牛丸ありさ(Vo, G)とごっきん(B, Ch)の2人組yonigeである。2013年、大阪寝屋川にて結成された彼女たちは、2015年にミニアルバム『Coming Spring』をリリース。収録曲“アボカド”のMVがYouTubeにて200万回以上の再生数を記録し一気に知名度を上げていく。

2019年には初の武道館公演を大成功に収め、昨年5月にはセカンド・アルバム『健全な社会』をリリース。1990年代以降のUSグランジ〜オルタナのエッセンスをチャットモンチー経由で取り込んだ、その繊細かつダイナミックなサウンドは彼女たちと同世代はもちろん、幅広い年代に受け入れられそうだ。

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苗場食堂

ライター・黒田隆憲が<フジロック ’21>初登場組の注目10アーティストを紹介! column210802_fujirock-debut-02
AAAMYYY

AAAMYYY(21日出演)

Tempalayのメンバーとして、またTENDRERyohu(KANDYTOWN)のサポートメンバーとして今や音楽シーンの中でも一際存在感を放っているのがシンガー・ソングライター/トラックメーカーのAAAMYYYだ。携帯電話のアプリを使って作曲しながら作り上げたファースト・ソロアルバム『BODY』の、打ち込みを中心としたミニマルかつスペイシーなサウンドから一転、およそ2年半ぶりにリリースされた最新ソロ作『Annihilation』には気心の知れたプレイヤーたちが多数参加し、オーガニックなバンド・サウンドを全編にわたって展開。

また、声のニュアンスを生かしたソングオリエンテッドな楽曲には、彼女が思春期に聞き馴染んでいた歌謡曲からの影響も刻み込まれており、どこか懐かしさを感じさせる不思議な作品に仕上がっている。シンガー・ソングライターとして飛躍的な進化を遂げた彼女のステージは見逃せない。

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ライター・黒田隆憲が<フジロック ’21>初登場組の注目10アーティストを紹介! column210802_fujirock-debut-07
碧海祐人

碧海祐人(22日出演)

音数を極力削ぎ落としたジャジーでメロウなトラックの上を、気だるくもスウィートな歌声がたゆたう。ヒップホップやR&Bなどからの影響を強く感じさせつつ、フックの効いたメロディにはJ-Popのエッセンスも散りばめられており、そのハイブリッドなポップセンスは新人とは思えぬ貫禄すら感じさせる。名古屋在住のシンガー・ソングライター、碧海祐人。2020年9月にリリースしたEP『逃避行の窓』は、1ヶ月で20万回再生を記録。

ドラマーの石若駿が客演した楽曲“夕凪、慕情”は、サンファやキング・クルール、トム・ミッシュらを輩出したサウス・ロンドンの音楽シーンや、アンビエント・ミュージックなどからインスパイアされた音像が一筋縄ではいかない中毒性を孕んでおり、すでに国内外のリスナーから熱い注目を集めている。果たしてライブはどのようなスタイルになるのか、期待が高まる。

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冒頭で述べたように、今年のフジロックは「国内アーティスト中心のラインナップ」であり、入場人数の制限や酒類の販売禁止など、何から何まで「異例づくし」である。さらに開催日程も1か月ずれているため、苗場の気温も例年よりグッと下がっているはず。初めてのことだらけで戸惑うこと多いかもしれないが、「変化やハプニングを楽しむ」くらいの心のゆとりを持って、3日間を存分に楽しみたい。

EVENT INFORMATION

FUJI ROCK FESTIVAL’21

ライター・黒田隆憲が<フジロック ’21>初登場組の注目10アーティストを紹介! music210810_fujirock_festival_guide_main

2021年8月20日(金)21日(土)22日(日)

新潟県 湯沢町 苗場スキー場

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