田川カフェ等の運営で広く知られているLD&K代表=大谷秀政さんに人生のあれこれや今流行っている何かを教えてもらうコラム「教えて、大谷パイセン!」。第二回目のテーマは「ブルーボトルコーヒーに代表される”サードウェーブ”について教えて!」。

Q1. そもそも”サードウェーブ”って何?

うーん。もともと世界で一番コーヒーを飲む北欧の人達がスペシャリティコーヒーにこだわり始めていたのを10年程前からアメリカ人が真似をし始めてブームにしたっていうのが基本的な流れなんじゃなかったかな? アメリカ人は流行を創るのが巧いし、ほら起業文化のお国柄、事業を大きくすることが最優先っていうか、まあ山師の仕事だよね。メディアを上手く使ってね。ほら音楽でもなんでもアメリカで流行らないと世界に認知されないってことも多いからね。ス●バのブレンドコーヒーが不味くて酷いからそれの反動なんじゃない? ってのもある。ラテはまだいいんだけどブレンドコーヒーはイマイチだからね。みんなが感じてたことだから当然の結果だよね。私のス●バの最初の印象もたいしたことない珈琲豆にフレーバーつけてうまくやってるって印象だったね。サードウェーブは上質のコーヒーを一杯ずつその場でドリップして淹れるってのが基本らしいんだけど。まあそんなこと本来喫茶店では当たり前のことなんだけどな。そもそもボタン一つで出した不味いコーヒーでまともな値段取ってるカフェは潰れるべきだよね! 騙されたって気がするよ。あ、ちなみにセカンドウェーブってのがス●バなどに代表されるシアトル系カフェのことね。私にしてみれば、あれは中毒性のある甘味屋さんだね。あとWiFi電波屋さん。サードプレイスだから。

Q2. 何故今日本で流行るの? 流行の裏側とかわかる?

いつまでたっても、日本人の「ギブミーチョコレート精神」が無くならないってことだよ(笑)。ここ最近は円安で進出しやすいんだろうけど基本的にはメディアの功罪だよね。メディアが新しいものを取り上げるからね。皆、情報を飲んだり食べたりしてるんだよ。本当に美味しいって思ってブルーボトルのコーヒーを飲んでるかは甚だ疑問。このあいだも雑誌出版社や編集者の人達と飲んでて、「君らいい加減にしなよ」って話になったんだけど。そうしたら連中「大谷さん、我々は月間で雑誌を売っているんです。新しいものを取り上げなければ雑誌は出し続けられないんですよ。大丈夫ですよ、来年にはフォースウェーブでっち上げて”サードウェーブはもう古い!”って謳いますから。」だって、悪魔の所業ですよ。彼らメディアは(笑)。アメリカやハワイから上陸って謳われているもの最近多いよね、ポップコーン、パンケーキなんかも流行ってるの?  良く考えてもみなよ、アメリカに旨いもんなんか無いでしょ! あいつらの味覚なんて信じられないよ。世界では日本食こそブームの時代なんだよ。どっかの雑誌の感想でブルーボトルコーヒーを「スッキリした味わいで量は多め。」だって。それ薄くて多いアメリカンだろ。

ブルーボトルコーヒーに代表される“サードウェーブ”について教えて! collumn150319_ootani_sub

Q3. じゃあ日本国内の”サードウェーブ”ブームはいつまで続くと思う?

ブームって言っているのならいつか落ち着くだろうし残るものは残るよね。ちゃんと続けばそれはブームではないからね。ただ日本人の味覚は特に甘味の種類に多様性があって敏感。コーヒーも最近のサードウェーブの酸味志向では結局そこまで根付かないでしょうね。都会ならではの仕事で全国的に広がる味ではないと思ってる。日本のコーヒー文化も明治時代に広がってから歴史も長く、まともな焙煎所や老舗の喫茶店なんかは苦い思いをしてるよ。行列になってしかるべき凄く旨い老舗珈琲屋もいっぱいある。でもブームに関係なく存在し続けているものの方が本物だってことは知っていて欲しい。

アメリカのサードウェーブの連中は4、5年前は「フレンチプレスが最高!」なんて言ってのが「やっぱりドリップが〜」なんて言ってさ。こんな奴らの言うことを持ち上げてるメディアってなんなの? って思うよマジで。昔から真面目にちゃんとやってる職人さん達に失礼だよ。本当に苦い。そもそもフレンチプレスなんて日本人の胃には合わないんだよね、脂分が濾過されないとえづいちゃうんだよね。サードウェーブじゃないけど軽井沢の●山珈琲なんて半分以上の客が珈琲残してるからね。フレンチプレスの脂分と雑味、あとカップに残る粉は日本人はとても苦手。

ス●バみたいに株を売り抜ければオッケーなんじゃないのかな。ブルーボトル出てきた昨今は添加物問題なんかでスタバもバッシングも受けてるけど。あれだけさんざん持ち上げられてきたのに、メディアに手のひら返され始めてて大変だよね。売り抜けたとこは今度はアメリカからハンバーガーショップを輸入してまたメシの種にしようとしてるみたいだけどね。

ブルーボトル日本法人の代表も元ス●バの人で、「ス●バのコーヒーの品質は良く無かった。あそこはサードプレイスとしての機能だった。」とか言ってるけど、ちょっと不義理を感じるよね。しかしブームがどこまで続くのかなんてどうでもいいし知ったこっちゃないよ。

ちょっと前のスペインバルのように増えすぎてる気がしないでもない。あれもだいぶ潰れたよね? ちなみにこれからは海外のものではなくて、私はそろそろ蕎麦のサードウェーブが来ると思っている。こだわるに値する商材であるしシンプルだからね。

Q4. パイセンが考える「コーヒー」を扱うショップ・カフェの理想って?

俺はとにかくカフェイン中毒だから何ウェーブでもいいからコーヒーの味が底上げされて街に店が増えるのは嬉しいこと。ただコーヒーは嗜好品だから好みはある。サードウェーブに限らず美味ければ残るだろうし不味ければおのずと消えるだろうね。私は普段からいつもいやらしいことを考えているので、もうちょっと柔らかい椅子で過ごしたい。最近のサードウェーブにエロスが足りないことを嘆いている。居心地という意味ではカンファタブルでは無いよね。現在のサードウェーブの多くは酸味の効いた珈琲、下手すればハイテーブルに座面の固い椅子、明るい健康的なコンサバな店内。ああ、私の嗜好とは真逆なのだ、私の店は甘味を感じさせる濃厚な焙煎珈琲。店内は暗く、低く、柔らかい座面、セックスを感じさせる居心地。私は私の嗜好に基づいた珈琲店づくりを真面目に続けるのみなのだ! 20年30年と末永く続く店を!

著者プロフィール

大谷秀政
1968年生まれ、愛知県出身。大学卒業時22歳で会社設立(BIG BOSS inc.)。95年(株)エル・ディー・アンド・ケイ(LD&K inc.)に社名変更。代表取締役社長。

本業の音楽プロダクション〈LD&K〉は、かりゆし58、ガガガSP、羊毛とおはな、中ノ森文子、日食なつこ、打首獄門同好会、ドラマチックアラスカ等が所属。レコード会社〈LD&K records〉〈Pacific Records〉なども擁する。レコーディングスタジオ(早稲田、東中野)、映像制作部やCM制作部、MD制作事業部も保有。

他に、店舗事業として2001年「宇田川カフェ」をはじめ「宇田川カフェsuite」「宇田川カフェ別館」「CAFE BOHEMIA」「FLAMINGO」、ヤギの居る「桜丘カフェ」等の渋谷のカフェ、品川「Segredo」新宿「o’bo」、神輿が担げる渋谷の「東京354Club」や新宿2丁目「Royal Family」などのバー、大量殺人未遂の渋谷「チェルシーホテル」「STAR LOUNGE」大阪「梅田シャングリ・ラ」沖縄「桜坂セントラル」などのライブハウス、神戸「鬼味噌田嶋屋」を展開中。2015年2月末には下北沢「propaganda」を新オープン。

モデルエージェント部「LD&K AGENCY」に加え、ダンススタジオ「KPDS」も経営。

デザイン事務所「コックニーグラフィックス」も別会社で経営。

貿易の為の香港法人「利徳其(LDK)貿易有限公司」を設立、総経理(代表)。上海外灘の歴史的建造物を再利用した社交場「上海ROSE」もオープンし、上海法人「上海利徳其(LDK)餐飲管理有限公司」の総経理(代表)でもある。