寒の砌、暦の上では間もなく立春ですが、まだまだ寒い日が続きます。しかし、目を凝らしてみると、梅の蕾がたわわに膨れ静かに春へと向かっている頃、みなさまに於かれましてはますますのご繁栄のこと慶び申し上げます。

さて、今回は「立春に捧げるレシピ」を紹介します。

それは、「恵方巻」です。
五行汁や鰯など、節分料理は多々ありますが、やはり華があるという意味で、一番の節分料理ではないでしょうか。

調べてみますと、伊勢海老を使った豪華絢爛なものから、ロールケーキや、アボガドを中心に野菜のみで組み立てられたものまで、様々な恵方巻がございますが、今回はその中でも特に基本的なものを紹介致します。

基本的なものと言いましても、先も申し上げました通り、恵方巻には様々なバリエーションがあり、何をもって恵方巻と定義するのか難しいのですが、今回は7種類の具を4.5cm前後で巻いたものとします。

7種類の具と言いますのは、年越し蕎麦の様に、大寒が終わり立春が始まる節分の日に、七福神にちなんで、7種類の具が入ったものを食べ、一年の幸福を願うところから来ています。

また、4.5cm前後というのは、恵方を向いて、縁が切れぬようにと恵方巻は途中で切らず一本まるまるとかぶりつくのが恵方巻を食べるときの作法です。しかし、若い男性ならいざ知らず、女性の方や、年配の方、お子様のは太過ぎたら食べるのが苦になって、美味しく頂けないだろうと考えたからです。

上記の2点は、あくまで私個人の意見で、具材が13種だろうが4種類だろうが、太さが10cmだろうが1mだろうが構わないはずです。節分の日に、食べる人の一年の幸福を願って作れば、それは、恵方巻だと思います。

今回は定番の具材、穴子、卵、きゅうり、田麩、かんぴょう、しいたけの煮付け、高野豆腐を巻きました。

くどいですが、あくまで例です。
それぞれで、思い思いの恵方巻きを作りこれから来る春を迎えて下さい。

最後に、毎度申し訳ないのですが、料理というものは、条件、環境、様々な要因によって変化します。◯◯を△△グラム、××分加熱するなんてレシピは融通が効かない堅苦しいものでしかありません。そこで、「〇〇へ捧げるレシピ」では、大まかな流れを説明するのみで、読者のみなさまが、アレンジを加えやすいように致しました。

下記にレシピをまとめたので、ご参照下さい。

立春に捧げるレシピ:恵方巻

材料
・穴子の煮付け
 穴子のひらき…2枚
 醤油…20cc
 味醂…20cc
 日本酒…20cc
 砂糖…10g
 水…100cc

・かんぴょうの煮付け
 かんぴょう…30g
 塩…適量
 醤油…20cc
 味醂…20cc
 日本酒…20cc
 砂糖…10g
 水…100cc

・しいたけの煮付け
 干ししいたけ(スライス)…30g程度
 醤油…15cc
 味醂…15cc
 日本酒…15cc
 砂糖…10g
 しいたけの戻し汁…100cc
 
・高野豆腐
 高野豆腐…1個
 薄口醤油…15cc
 出汁…100cc

・銀シャリ(酢飯)
 固めに炊いた米…2合
 すし酢…70cc

※上記の下拵えの仕方もご紹介致しますが、出来合いのものでも美味しく頂けます。

厚焼き玉子…適量
きゅうり…1/4本
田麩…適量
海苔…1枚

下拵え
・煮穴子
①穴子のひらきを塩水で洗い、ぬめりを取る。
②①をサッと茹で、氷水で冷やす。氷水からあげたら水分を取りつつぬめりを取る。
③醤油、味醂、日本酒、砂糖、水で煮汁を作り、②を皮目を下にして煮付ける。煮汁が半分くらいになったら完成。

・かんぴょうの煮付け
①かんぴょうを1時間毎に水を変えながら、3時間水に漬け戻します。
②①に塩をふり良く揉み流水で塩を流します。
③②を5分ほど塩ゆでし、よく絞ります。
④醤油、味醂、日本酒、砂糖、水で煮汁を作り、③を加え弱火で時折かき混ぜながら煮汁がなくなるまで煮詰め、煮詰め終わったら冷まし味を均一に完成。

・しいたけの煮付け
①しいたけを30分ほど、200ccのぬるま湯で戻す。
②戻し汁(100cc)に醤油、味醂、日本酒、砂糖を加え煮汁を作り、弱火で煮汁がなくなるまで煮詰め、煮詰め終わったら冷まし味を均一にし完成。

・高野豆腐
①高野豆腐を10分ほど水に漬け戻し、手で抑えて水気を取る。
②出汁に薄口醤油を加え、沸騰する前に弱火にし①を加え、10分ほど煮込み完成。

・銀シャリ(酢飯)
①炊いた米を大きめの器(寿司桶が理想だがボウルでも可)に、優しく盛る。
②全体にすし酢をかけ、1分ほどなじませる。
③米が潰れないように、全体にすし酢が回るようにかき混ぜる。

作り方
①すまきの上に海苔をのせ、その上に銀シャリを上下に約1cm隙間を開けのせる。
※この時、米を潰さない様にそっと海苔全体に薄く均一にのせる。
②①の上に手前3cmくらいあけ大きものから順に、厚焼き玉子、高野豆腐、きゅうり、穴子の煮付、かんぴょう、しいたけの煮付、田麩を盛る。
③かたちを整えつつも弱すぎず、米を潰さないように弱すぎもせずに、巻く。

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岡村飛龍
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