残暑の砌、海端には海月が浮かび始める候、みなさまに於かれましては、いっそうのご栄達のこと、お慶び申し上げます。

さて、今回は「晩夏に捧げるレシピ」をご紹介します。

初秋を向かおうとしている今、激しい夏を締め括る、〆の一品

暑い暑いとヘトヘトになっていたと思ったら、急に過ごしやすくなり、夏の終わりを微かに感じ始めました。

夏という季節は、激しさの季節です。
春に芽吹き、梅雨に育ち、夏に花を咲かせます。
人も、日常の場所から離れ、海や山、異邦の国や見知らぬ街を訪れ、中には危険なアバンチュールに身を投じたり、積年の思いがかなったり、逆に決定的な終わりを迎えたりします。そんな人達を画面越しに眺めつつ、いつも以上に遮二無二に仕事に専念なさってた方も居るでしょう。

夏の非日常的な日々が終わりを告げ、ハレの状態からケの状態に戻ります。

盛夏を越え晩夏を迎え、初秋を向かおうとしている今、激しい夏を締め括る、〆の一品を考えました。

〆の一品というのは、前菜の様に身体に食べ物の受入準備を促す様な食のとっかかり(チーズや塩辛ハーブ類など発酵食品の癖や、強い香りが食欲のスイッチをを入れる。)がある様なものでもなく、主菜の様に口の中で噛み締めながらゆっくりと味わうものでもありません。

それまでの食の流れの余韻を残しつつ、食事という一つの儀式を締め括る一品ではなくてはなりません。

故に余計な主張や技巧が無く、口の中にも留まらずするりと食道を抜け、胃に収まるものが良い。

この様な理由から、洋の東西を問わず、〆に果実やデザートの様な食べ応えの軽いものや、麺類や日本のお茶漬けの様な喉越しの良いものが好まれる一つの要因だろうと私は考えています。

それぞれの夏を振り返り、余韻を残しつつ夏の大団円となる一品に

さて、今回は夏の非日常の余韻を残しつつ一つの終わりを迎える料理にしなくてはなりません。

そこで、菓子や、果実だと甘みがあり、どちらかと言うとハレからケに向かうと言うより、ケからハレに向かうような感じがするので、夏の締め括りには向きません。茶漬けも良いのですが梅雨に捧げるレシピで書いたので、二番煎じな感がある。

消去法で麺料理にします。

また、この文章を読んでいる人の多くは日本人の方が大半だと思うので、日本の麺類を使おうと思います。

日本の夏の麺と言えば、夏の生活季語でもある冷し素麺だと思います。

ただの冷やし素麺では面白く無い。
これからの季節を迎えるといういみで、秋のしらす、冬の大根を添え「冷やししらすおろし素麺」にしたいと思います。

みなさまそれぞれの夏を振り返り、余韻を残しつつ夏の大団円となる一品となれば幸いです。

下記にレシピをまとめましたのでご参照下さい。

晩夏に捧げるレシピ – 冷やししらすおろし素麺

材料

素麺…1把
大根おろし…100g
しらす…100g
柚子皮…適量
白胡麻…適量
白だし…20cc
水…180cc

作り方

①、1把に対し1000ccを目安に、湯を沸かします。
②、①に素麺を入れ再沸騰するまで強火で茹でます。再沸騰したら火を弱めます。
※1分30秒〜2分が目安です。
③、ざるに上げ滑りがなくなるまでもみ洗いします。
④、③を深めの皿に盛り付け、大根おろし、しらす、柚子を盛り付け、水で伸ばした白だしを注ぎ完成。

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岡村飛龍
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