“日本が誇れる伝統文化を世界に発信しながら、次世代にバトンを渡したい。”
“師匠が世界的に有名な人なので、僕たちは招待されることも多いんです。そこで興味を持ってくれたお客さんや、親日家の人はもともと日本の文化を知っているから、あえて和彫りで入れたいと言う人が足を運んでくれてますね。ミラノもタトゥー文化が根付いているので、コンベンションもやりがいがあるし、和彫りを広げる活動にはとても良いですが、海外ならではの問題もありますね。どうしても感覚のズレが生じてしまうんですよ。日本にいたら当たり前のように行っていた神社にも行けないし、日本独特の四季が見れなくなってしまう。普通にインスピレーションを受けていたものがないというのは悩ましいですね。”
ちなみに、一番人気のデザインは“鯉”なのだそうだ。日本にいるとそこまで感じないのだが、ヨーロッパにいると日本ブームだと言うことが本当に良く分かる。漫画、アニメ、コスプレなどのいわゆる“オタク”文化から、武士や侍などと言った歴史的文化、今一番のブームと言える日本食、ファッションブランドも“Made In Japan”のイメージはとても良い。これだけ日本という国が認知されている環境で、学校の先生でさえタトゥーが入っているベルリンにおいて、和彫りももっと浸透するのではないかと思うのだが、俊英氏の考えはもっと世界に目を向けているものだった。
“確かに寿司屋とか本当に多いし、日本食レストランも増えました。でも、正直言って、紛い物が多い。僕は本物を発信したいんですよね。タトゥーって、日本だとどうしても煙たがられる存在じゃないですか? プールや銭湯といった公共施設に入れないし、良いイメージもない。でも、刺青はすでに江戸時代からある伝統文化なんです。浮世絵とかその時代にあったものがモチーフとなって、刺青に落とし込まれて、時代を超えて伝えられてきている本来であればとても貴重なものだと思うんです。それを絶やしてはいけないと思うし、今、日本が誇れるものってそこだと思ってるんですよね。むしろそれしかないかもしれない。だから、僕はこの歴史ある伝統文化を継承して、世界に向けて発信しながら、次世代にバトンを渡したいんです。”
自分の手作業によって、人の身体が作品になっていくというのは一体どんな気持ちなのだろうか? この記事を書きながらずっと考えていた。作品である身体を持つ本人やそれを見た人から、日本の伝統文化と共に、そこに込めた思いやメッセージまでも伝わっていって欲しいと願う。
プロフィール:俊英(Toshihide)
1977年 新潟県出身、文化服装学院を中退した後、21歳より池袋 初代彫俊に師事
東京で10年間活動を続ける中、幾度となくアメリカへ渡り、海外での活動の場を広げてゆく。2013年より拠点をベルリンへと移す。多くのタトゥーショップが立ち並ぶフリードリッヒスハイン地区にある”Für Immer Tattoo”に所属しながら、ヨーロッパ各地のコンベンションにも参加している。
2人目は、独特な音楽スタイルで“Humanelectro “と呼ばれているRyo Fujimoto氏に迫ります。お楽しみに!!