“東京で活動している10年間ぐらいのうちに、アメリカにはよく行ってたんです。タトゥー文化が根付いている国だし、学ぶこともすごい多かった。ベルリンには知人がいたのをきっかけに来たんですが、ドイツには有名なタトゥーアーティストが多いのに、ベルリンにはあまりいなかったんですよね。さらに手彫りをやる人なんて1人もいない。だから、この街で挑戦してみようと思ったんです。全くの0から、自分がどこまでやれるかを試してみたかったんですよね。

でも、想像以上の大変さが待っていました(笑)まず、和彫りが浸透していない、というより存在さえあまり知られていない。まずは認知させるところから始めないといけないわけです。こっちのファッションにもあるように、“ブラック&グレー”(基本、黒のみで濃い薄いのぼかしで仕上げる彫り方)でアートやファッション感覚で入れている人が多くて、鑿を使った手彫りの方法があるなんて知らない人がほとんどなんです。ドイツ人は新しい物にすぐには飛びつかないから、遠くから様子を伺ってる感じがすごくある。それに、個人主義でもあるから所属している店がPRなんてしてくれないし、営業も全部自分でやらないといけない。そういったところがシビアだし、すごく苦労した点ですね。”

さらには、和彫りは機械でやるより時間も手間も倍掛かる。その分値段も上がる。今回撮影させてくれたスイス人の彼のデザインは、両腕で約5,000ユーロ。景気が良いとされるベルリンであっても貧しい人が多いのは変わらないし、5,000ユーロとくれば、かなりの贅沢品となってしまうだろう。それでも、ミラノやロンドンを始めとするヨーロッパ諸国で開催されるタトゥーコンベンションなどに参加し、知名度を上げながらアーティスト活動の幅を広げている。コンベンションとは、各自ブースを出し、その場でデモンストレーションを行うことであるが、人気のものでは、来場者数が1万人を超え、出店したいタトゥーアーティストが何千人も待っていると言う。

ワンアンドオンリーな生き方から何を感じるか!? ベルリン在住の和彫り師に迫る column150309_km_6

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