Takeshi 友達が話を振ってくれたのがきっかけです。でも、ギターリストとして仕事もあったし、バンドもいくつも抱えていたので、最初は断ったんです。でもまた半年ぐらい経ってオファーが来て、他に適任者がいないってことで受けることにしました。でも面接5回もあったんですよ!

Kyoka & Kana え、5回も??

Takeshi ドイツはまず簡単には雇ってくれません。なぜなら簡単に解雇出来ないからです。当初は日本のユーザーの窓口として入ったんですが、バイリンガルだし、Liveを使って曲を作っていたし、楽譜が読める数少ないギターリストだし、条件が揃ってたんでしょうね。それで採用されました。

Kana 実際どうですか? ドイツの企業で働くということは?

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Takeshi まず待遇が日本とは全然違います。基本フレックス勤務で残業はないし、パートタイム勤務であっても社員と同じ福利厚生が国から認められていて、男女問わず、産休、育休、長期育児休暇を取ることが可能で、カップルで取ることももちろん可能です。実は僕、今育休中なんです。2月頭まで(笑)。

Kana 育休中にすみません(笑)。ドイツだけでなく、海外の企業は残業がなくて有給が多いのはよく聞きますが、男性にまで産休や育休があるっていうのは驚きですね。

Takeshi そうですね。あと、今現在約250名のスタッフが所属しているんですが、ドイツ語がネイティブのドイツ、スイス、オーストリア人のスタッフは半分ぐらいで、それ以外はみんな違う国から来ているので、公用語は英語だし、とにかくインターナショナルで、自由ですよね。部長がドレッドヘアーですから(笑)。

Kana もうそれはベルリンならではですよね! 教師でもモヒカン&タトゥーがいる街ですから。日本のような厳しいマニュアルとかも当たり前になさそうですね。

Takeshi そんなものはまずない!! 各部署にディレクターはいますが、上からあれしろこれしろって指示は出されません。自分で企画して提案していくスタイルが基本です。バイトがやれば良いってことをやるんではなくて、“何でこの人じゃないとダメなんだ”ってところを求められます。それが出来ないとここでは働けないし、その分責任も重大になってきます。もうね、8年以上もいますからね。ラブ&ヘイトの繰り返しになってきますよ(笑)。

Kana 専門知識だけでなく、自発的に動ける人間性と発想力も必要になってくるわけですね。そういった環境だからこそ最先端の発明が生まれるんでしょうね。

Kana Kyokaさんは、ミニアルバム『SH』のリリースに、Raster-norton20周年、Loop2016最多出演、その他に国内外での出演もかなり多くて、昨年は常にどこかでKyokaという名前を目にしていた気がするんですけど、拠点であるベルリンと東京だけに限らず、ずっと忙しいですよね?少し前にスウェーデンにも行ってませんでした?

Kyoka はい。スウェーデンのヨーテボリーのレジデンス(アーティスト・イン・レジデンス)に招待されて、昨年から進めています。でも通常のレジデンスと違っていて、突如、一等地のマンションに住まわされて、主要スタッフの連絡先だけ渡されて“自分のやりたいことを自由にやって良いから。でも、この街で何をするのも君次第で良い。何の義務もないから、何もしないということすらも尊重する”と、言われたんです。なので、マンションに住んだ初日、妙にモルモットになった気がして、部屋に隠しカメラがないかとか勘繰ってつい探してしまいました。(笑)

Takeshi & Kana えー! どうゆこと?? (笑)

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Kyoka 例えば、現地のホテルで毎日寝てて作品を作らなくてもいいってことです。あなたをこの街に呼んだけど、ここでは何も見つけることが出来なかったんだね。ということさえ尊重されるということですね。ヨーデボリが主催してる実験的なプロジェクトでトライアル的に行ってるんですが、実は私が世界で初めてのアーティストみたいで……。

Takeshi え、Kyokaさんが初めてのアーティスト??

Kyoka はい。私、なぜかいつもそうゆう実験的なとこに投入されるんですよ。やっぱりモルモット?? (笑)。怒らないから呼ばれるのかな?

Kana そんなことはないと思いますけど(笑)。Kyokaさんだったらおもしろいことやってくれるって期待されてるからじゃないですか?現地では具体的にどんなことをしてたんですか?

Kyoka まず最初に1週間滞在したんですけど、ひたすら街の中を歩いて、何をやりたいか、何が出来るかの構想を練るんです。そこで、もし会いたい人がいたら紹介するし、必要なことがあったら何でも言ってくださいと言われたので、インスタレーション用の場所として、コンサバではないオープンマインドな時計台を使いたいって言ったら、中央駅で交渉してみるね! って、あっさり言われたんです。さらに、地元の有名なオーケストラの方たちを紹介してもらったんですが、好きに使って良いよって言われました。

Takeshi & Kana すっげーーーーー!!!!!

Takeshi もうアーティスト支援がすごいよね。ドイツもすごいと思うけど、スウェーデンとか北欧はもっと進んでますよね。そのオーケストラとレコーディングしちゃえばいいじゃないですか!!

Kyoka ですよね。いちいち言うことデカイな! って思いましたよ。なぜかもう至れり尽くせりで、驚くことばかりでした。今はそれを持ち帰ってる状態で、4月にまた行くことになってます。 

Kana 北欧は教育も進んでますもんね。そのレジデンス是非とも現地取材したいなー。でも一人で全部やってるんですよね?すごい大変じゃないですか? プレッシャーとかもあるでしょうし。

Kyoka 私の性格上、一人のほうが臨機応変に対応出来るんですよ。だから、さっきのAbletonの社風の話ではないですが、上司が指示しないっていうのはすごく働きやすい環境ですよね。

Takeshi ですね。でもその分、スタッフ同士のディスカッションがとにかく多いですよね。こうゆうことしたい、ああゆうことしたい、これをするにはどうしたらいいか、常に話し合いを設けています。だから、一つのことが決まるまでがすごい時間が掛かりますよね。最終3つぐらいまで絞って、そこからやっと一つに決まる。

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Ableton社の会議室にて。左はスタッフのTimさん。

Kyoka 私もスウェーデンのレジデンスは同じ状況ですね。何かあればすぐに担当者とディスカッションしてました。

Takeshi それを仕事って思わずに楽しくやれてるからいいかなとは思います。でも、僕は日本のサラリーマンみたいに朝早くから夜遅くまで働いて、やりすぎちゃうところがあってそれは良くないなあと思ってます。

Kyoka 私も同じですね。今回のレジデンスみたいに、何もしなくてもいいよって言われたら逆にクオリティーあげたくなっちゃって、ついがんばっちゃうんです。適当に出来ない!

Takeshi 僕もそうですね。完璧主義。だからこそ海外で生き残れてるんじゃないですか?

Kana 結局それって教育ですよね。真面目にやることが当たり前、そうすべきだということを叩き込まれたことは、日本の教育で良かったことの一つだと思います。海外に来てもそれが根付いてるから一生懸命出来ますよね。同じ日本人でもびっくりするぐらい適当な人もいますけど。(笑)

Kyoka 私、自分の音楽やアート以外のことはけっこう適当ですよ。

Takeshi & Kana 笑

Kana Kyokaさんに個人的に聞きたいんですが、これだけ世界を回ってて、時差もあるし、気候も全然違う中でライブをやらないといけないってすごく大変だと思うんですけど、健康面で特に気をつけていることや美容法があったら教えて下さい。

Kyoka やっぱり食べ物に一番気を使いますね。ベルリンでも東京でもそうですが、基本自炊で、何でもバランス良く食べるようにしています。あと、海外で1週間滞在とかになる場合は、現地のアボガドオイルとかヘンプオイルを必ず買って、料理に使うようにしてます。それだと体調が良いんですよね。

Kana だいぶプライベートな話になってしまいますが、料理上手ですもんね! 毎回キッチン付きのアパートメントホテルに滞在してるってことですか?

Kyoka 基本そうですね。1、2日だったら外食でも構わないんですが、長期の場合はキッチン付きのホテルを希望するようにしています。あとは、ホテルにあるプールやジムを出来るだけ使って身体を動かしています。

Kana なるほど。それはかなり良いホテルに滞在出来ているという証拠ですね(笑)。でも、すごい大事なことですよね。アーティストが完璧なコンディションで本番を迎えれる環境を用意するって、受け入れる側の配慮も大切ですよね。全部のアーティストにそう出来るわけではないと思いますが……。

Kyoka 本当にいろんな国へ行く機会が増えたので、そういった環境を準備して頂けるおかげで自信も持てます。自分の楽曲選びでも同じですが、土地とか現地の流行りとかそういったものに左右されずに自分らしいプレイが出来ていると思っています。

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