Kana 今日はせっかくAbleton本社にお邪魔させてもらってるので、LiveやPushに関する話も聞きたいんですが、Kyokaさんはいつぐらいから使用されてるんですか?

Kyoka 2006年からですね。アメリカ人のアーティストの友人と一緒に曲を作る時に、すでにその人が使っていて、それで使い始めたのがきっかけです。

Kana 私のようなアーティストでもなく、かなりのメカ音痴からすると、やはりLiveはプロフェッショナル向けのソフトだと思ってしまうんですが、その辺はどうですか?

Takeshi いや、簡単です。誰でも楽しく使うことが出来ますよ。Live の利点はとても直感的に使えるところです。使用マニュアルを読むことが嫌いなビギナーはとても多いと思いますが、まさにそういう方たちにうってつけです。もちろん、込み入った深い使い方をするにはマニュアルもしくは詳しい人に聞くのが早道ですが、LiveはとてもフレキシブルなDAWなので、いろんな使い方が可能です。

Kyoka そうですね。おもちゃ感覚で使えますから。でも、プロに対してもきちんと網羅していて、突き詰めているところがすごいと思います。楽しめて使えるソフトウエアって他になかなかないんですよね、他は”作曲”って感じで。あと、Pushは演奏用に作られたものだと思うんですが、私にとっては作曲に便利なツールなんです。PCだけだと、頑張った挙句にゴミを作った、みたいになってしまうこともありがちなんですが、Pushを使うと感覚的にやり尽くしても、ゴミになる確率が減る気がします。

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Kana ゴミて(笑)。でも、そういったアーティストによって活用法が違うというのはおもしろいですね。TakeshiさんはギターリストとしてLiveを使う利点はどんなところですか?

Takeshi ギターリストとしての利点は、伴奏にもソロ楽器としても、また即興演奏の時の共演者として使えるところですね。楽器演奏者でこれからDAWを使ってみようと考えてる皆様、是非一度Liveをお試しください。僕の言ってることが分かるはずです!! (笑)。

Kana 一般的な考えだと、生バンド以外って、DJでもラップトップのライブでも、どのソフトを使って、どうやって音を作ってるとか分からないじゃないですか? 逆に、ファンやプロを目指してる人は知りたいだろうし、そういった意味でも昨年ベルリンで開催された“Loop”はユーザーにとって、かなり意義のあるフェスですよね。初めて参加させてもらったんですが、Kyokaさんのプレゼンテーションで必死にメモを取るユーザーの方たちを見て実感しました。

Takeshi ありがとうございます。Kyokaさんには、ディスカッション、スタジオセッション、DJ、プレゼンテーションと4回も登場してもらったんですが、ヘビーユーザーであるアーティストの方たちにスピーカーになってもらって、話してもらうのが一番だと思っています。来場者はユーザーがほとんどで、一般の人もプロのアーティストもいろいろです。しかも、”Loop”は誰でも参加出来るわけじゃないんですよ。応募して当選した人だけがチケットを買えるシステムになってるんです。なので、そういった意味でもユーザーにとって、本当に貴重な場になっていると思います。

Kana 日本からだとなかなか参加するのは難しいと思うんですが、日本のシェアやユーザーについてはどうですか?

Takeshi ユーザー数は確実に増えてきましたね。

Kyoka 私の周りは8、9割がLiveユーザーです。私が電子音楽のアーティストだからかもですが、リハで人のセットを見てるとほとんどがAbletonです。

Takeshi え、すごい!それは嬉しいなあ!

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『Loop2016』 photo by Udo Siegfriedt

Kana プレゼンテーションの時って、制作時に使ってるソフトウェアやハードウェア、楽器だけでなく、どうやってサンプリングしてるとか何をフィールド・レコーディングしてとか、全部明かしちゃってるじゃないですか? 盗作とか真似されてしまう危険性とかないのかな? と、素人目線で心配になってしまったんですが。

Kyoka うーん、公開して、誰かに真似されたとしても絶対同じにはならないから大丈夫ですね。Loopのようなイベントの場に限らず、海外のアーティストってけっこう明かしてると思います。逆に、日本って明かさないアーティストが多い気がするんですが、どうですか?

Takeshi え、ホントに?聞けば教えてくれる気がするけど、違うんですかね?

Kyoka 楽曲制作のノウハウをまだよく分かってない時に、教えてもらいたくて聞いたことがあったんですけど、隠されてしまって。。日本ではそれが普通なんだと思ってたんです。でも、ロスに行った時に、アーティスト同士でシェアするのが当たり前だったんですよ。誰にも聞けない日本だったら一つの不明点を理解するのに1年掛かってしまうところが、情報共有出来るロスなら3ヶ月で解決出来るんですよね。そういった点からしても日本って共有せずに企業秘密にすることが多い気がします。

Kana それすごい分かります!!音楽業界だけに限らない話ですが……。

Takeshi 日本のそういった状況は知らなかったですね。すごいマーケティングに役立つ話をありがとうございます。

Kyoka たとえ、人の手段を知って、それを真似したところで、人にはそれぞれ個性があるから絶対同じにはならないと思うんですよ。それよりも、公の場やステージ上で教えることによって、もっと才能を爆発させる人が出てきて欲しいと思いますね。そしたら、世の中がもっと楽しくなるじゃないですか? みんなで協力し合えば、発見する速度が上がって、楽しみ方も倍速になると思っています。

Kana 素晴らしい!!

Takeshi でも本当にそうですよね。Loopを開催する意義もそこにあると思っています。特に今女性ユーザーを増やすプロモーションに力を入れているんですが、苦手な部分や不明な点をみんなでディスカッションすることによって、個々が抱えていた問題を解決することができます。そしたら、男女関係なく、もっともっと活用の場が増えて、新たな才能が生まれるきっかけになると思っています。

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Kyokaさんの自宅スタジオにて、普段使っている機材を公開。
(左下)Octatrack、(左上)MFB、(真ん中下)Push2、(真ん中2段目) Roland phrase lab、(真ん中上左))OTO biscuit、(真ん中上右) monome、(スピーカー)YAMAHA,ムジーク

Kana 素晴らしい締めの言葉を頂いたところで(笑)最後になりますが、お二人の今後のスケジュールを教えてください。

Takeshi 2月にベルリンで、ギターリストのヤマジカズヒデさんのプロジェクトが開催されるんですが、ベース&キーボードの堀江博久さん、ドラムの中村達也さんとスペシャルセッションライブに出演します。世界初の試みなのでとても楽しみにしています。それ以外にもいくつかスケジュールが決まっているので、下記を参照にしてください。

Kana すごい豪華ですね!まだTakeshiさんのライブ未体験なので、是非行きたいです! Kyokaさんは?

Kyoka 2月頭に重大発表があります。SNS要チェックでお願い致します。3月10日(金)から25日(土)は、予定を絶対空けておいてください!!

Kana めちゃくちゃ気になるので、あとでこっそり教えてください(笑)。今日はお忙しい中貴重な時間とお話しをありがとうございました!!

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EVENT INFORMATION

Blue Field album release party

2017.02.17日(金)
HRD Bar Mitte, Berlin

2017.02.24(金)
URBAN SPREE,Berlin

“ヤマジカズヒデ スペシャルセッションプロジェクト”

ヤマジカズヒデ
堀江博久
中村達也
Takeshi Nishimoto

2017.04.29(土)
安養院、板橋、東京
Christoph Berg & Takeshi Nishimoto

2017.04.30(日)
TBA 浜松
Christoph Berg & Takeshi Nishimoto

2017.05.05(金)
TUPELO 福岡
Christoph Berg & Takeshi Nishimoto

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Kyoka プロフィール

現在進行系の実験・電子音楽レーベルの最高峰の一つである“raster-noton”における、初の女性ソロアーティスト。ベルリン、東京を拠点にインターナショナルで活躍。激しくラフなその音楽はブロークンポップビートとも呼べるダンサブルな要素を含む。幼少期にピアノ、フルート、三味線を学ぶ。その傍ら、ラジオやチューニング音をテレコで録音し、録音機器の可能性と低音に魅了される。
1999年、シンセサイザーやコンピューターを購入、小さなシンセを片手に、単独でバックパック旅行を開始。
2008年 初EPをベルリンのonpa))))) レーベルから3タイトルリリース。
2012年 12インチEP「iSH」、2014年にはアルバム『Is (Is Superpowered)』を共にraster-notonからリリース。次回作、『SH』のリリース日程を現在調整中。
国内外問わず多くのフェスティバルやレーベルショーケースに出演、国際的に非常に高い評価を獲得している女性アーティストである。
詳細はこちら

Takeshi Nishimotoプロフィール

Guitarist, Composer, Producer, Multi-instrumentalist

福岡出身であるものの、これまでの人生のほとんどを海外で過ごし、今もドイツにて世界中で賞賛を浴びている「I’m not a gun」での活動、さらに日本やアメリカ等、ギタリストとして世界中で公演やレコーディングに参加し活躍しているTakeshi Nishimoto。

1998年、盟友John Tejadaと出会い数々の作品を発表。 ジャジーで透き通ったギターの響きに絡む、空間を漂うクリックビートの絶妙なアンサンブルが、エレガントで美しいサウンドを生み出している。ドイツの名門レーベル〈City Center Office〉より「I’m Not A Gun」として2003年に1st album『Everything At Once』、2004年に2nd album『Our Lives On Wednesday』,2006年には3rd album『We Think As Instruments』、2008年に〈Palette Recordings〉より4th album『Mirror』、そして2010年に5th album『Solace』を〈City Center Office〉よりリリースしている。2005年に20年間滞在したアメリカを離れ、ベルリン(ドイツ)へ移住し独自のプロデュース、公演活動を展開する。

現在は公演活動のほか、アート作品に添える音楽や映画のサウンドトラックも手掛けるなど、ドイツに来て活動の幅を着実に広げている。2007年、全編を旧東ベルリンの教会にて録音されたクラシックギターによるソロアルバム『Monologue』を発表。2013年8月にソロとしての2ndアルバム、『Lavandula』を〈Sonic Pieces〉(ベルリン)よりリリース。

ギター一本で表現される深みのある世界観は、「I’m not a gun」での活動で、デジタルの力を知る彼だからこそ作り出せるアナログの極みです。
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Abletonオフィシャルホームページ(日本語版)

photo by Sylvia Steinhäuser
Hair & Make by Sayuri Sakairi(Kyoka)