第155回 過去の清算

私はこの集落でしっかり者で有名だった。集会がある日は先に会場に到着して掃除をし、人数分のお茶を用意しておく。団体旅行の時には私が全ての観光先を決めて、スケジュールを組み、バスと旅館を手配した。もちろん経理も私だ。もう何十年もそんな感じだからか、最近は何か催しがあると自然と私の所にお金が集まって来る。今回は集会所の立て替えのお金だ。何百万というお金が私の家に集まった。そして無くなった。

「この集落に泥棒がいる」そんな噂はすぐに広まった。私を疑う人は一人もいない。今までお金が無くなったことなんて一度もなかったし、今回は多額のお金が私の家に集まることを皆が知っていたからだろう。皆が皆を疑い始め、至る所で犯人探しが始まっている。騒ぎを聞きつけた村長の提案で私達は集会所に集まることになった。私はいつものように先に会場に到着し人数分のお茶を用意する。今日が私の最後のお茶汲みだとは誰も知らない。私は罵り合いが始まった頃に集会所を抜け出して、そのまま長距離バスに乗り込んだ。今までの手数料をバッグに詰め込んで。

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