佐藤快磨監督の劇場デビュー作でありながら、<第68回サン・セバスティアン国際映画祭>で最優秀撮影賞を受賞したほか、<シカゴ国際映画祭>などでも新人部門のコンペティションに選出されている映画『泣く子はいねぇが』が、11月3日(火・祝)に映画祭<東京フィルメックス>にてジャパンプレミア上映された。このたび、同映画祭での上映前に行われた舞台挨拶、そして上映後に実施されたQ&Aセッションのレポートが到着した。

イベントレポート:映画『泣く子はいねぇが』舞台挨拶/Q&Aセッション

映画『泣く子はいねぇが』の本編上映前に行われた舞台挨拶では、佐藤監督が登壇し、「ジャパンプレミアという事で大変緊張しております。ここからどんどん拡がっていってくれることを願っています」と緊張を滲ませながらコメント。その後、来場者と一緒に本作の日本初上映を鑑賞した佐藤監督は、上映中に湧き上がった笑い声や感動、感嘆の声、終映後に巻き起こった拍手を直接感じながら、少し照れた様子で上映後に再び登壇した。

佐藤快磨監督作『泣く子はいねぇが』舞台挨拶、Q&Aセッションのレポートが到着!主題歌担当・折坂悠太起用の経緯も明らかに film201105_nakukohainega_6-1920x1280

早速、映画を見たばかりの来場者からの質疑応答がスタートした。“本作はオリジナル脚本ということだが、どのようにキャラクターを作り上げていったのか?”という質問に対して、「自分が20代後半を迎えて、同級生たちが結婚して父親になっていく中で、僕も当たり前のように父親になれる思っていましたけど、その未来がどんどん遠ざかっていく感じがありました」と振り返り、「僕も父親になれるのかということを映画の中で探してみたかったんです。父親ではない自分が“父性を探す”映画を撮りたいというところがスタートだったので、主人公のたすくには自分が投影されていると思います」とコメントした。

佐藤監督と秋田県男鹿市の繋がりは?”という質問については、「秋田市の生まれなので男鹿市は隣接してはいましたが、実は男鹿のことはあまり良く分かっていませんでした。ただ、幼い時に一度だけナマハゲを友人の家で体験したことがありました。その時、友人は泣き叫んで自分の父親に泣きついていたんですけど、僕には泣きつける父親がいなくて心細い思いをした記憶がトラウマのように残っていたんです。ナマハゲは子供を泣かせるというイメージが強いと思いますが、子供が父親に泣きつくとか、父親が子供を守るとか、そういった中で父親としての自覚や責任を芽生えさせる側面もあると思ったんです。だからこそ、男鹿を舞台に映画を撮りたかった。そして、この映画を応援してくださる方々と知り合えて、今はふるさとのように思っています」と、自身の体験から本作への着想があったことを明かしつつ、舞台になった男鹿市、そして男鹿の人たちへの感謝の気持ちを述べた。

ナマハゲについての別の質問では、「普通子供はお正月になるとお年玉がもらえたりするので、大晦日はすごくワクワクすると思うんですけど、男鹿市の子供たちは、まずおっかないナマハゲを耐えないといけないので憂鬱だと思います(笑)。でも男鹿のみなさんはそういった体験があって良かったと思っているからこそ、ナマハゲを残そうとしてるんだと思います」と、伝統文化のナマハゲに触れたことで、改めて大切な伝統文化であると認識したことを明かした。

佐藤快磨監督作『泣く子はいねぇが』舞台挨拶、Q&Aセッションのレポートが到着!主題歌担当・折坂悠太起用の経緯も明らかに film201105_nakukohainega_1-1920x2880

折坂悠太さんが今回初めて映画音楽を手掛けたが、どのような経緯で起用したのか?”という質問に対しては、「劇伴を誰にお願いするのかをプロデューサーたちとも話し合いながら、現場でもずっと悩んでいました。その話を聞いていた太賀君が『折坂さんはどうですか?』と提案してくれて、僕もプロデューサーも『いいですね!』となったんです。今思い返せば、太賀君はロケハンの時から『いま折坂さんの“さびしさ”ていう曲を聴いてるんですよ!』とかちょくちょく薦めてくれていたんです。その時は『いいよね!』とか普通に返事しちゃってたんですが(笑)」と経緯を発言し、会場は笑いに包まれた。

そして、「僕と折坂さんは同じ年で、折坂さんはお父さんでもあります。なのでこの映画に父親としての視点で音楽をつけてくれたのだと思います。折坂さんは最初、『この映画、音楽をつけなくてもいいんじゃないのか』と言ってくださり、それは素直に嬉しかったですね」と語った。当初はリモート会議でスタートした打ち合わせも、LINEや電話でのやりとりを始めてから加速していき、折坂ならではの独自の意見や視点をしっかりと伝えてくれたことで、この作品に深みが加わったと、音楽制作の裏話も披露した。

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また、ラストのシーンで一気に気持ちが込み上げ、涙が零れたという観客からの“ラストシーンは当初から決めていたのか?”という質問については、「ラストシーンから着想した作品なので、あそこは5年前から変わっていないんです。一番大事なシーンでもあるので、キャストさんもスタッフも全員でそこを共有してた分、ラストシーンは緊張感が一番大きかったと思います」と撮影当時のことを振り返り、「自分が想像していたよりも素晴らしいシーンになったと思いますし、僕自身が撮り終えたときに感動できたのが良かったです」と話した。

最後に佐藤監督は、「今回、初めて商業映画を撮らせてもらいましたが、本当に恵まれた環境で好きなように撮らせてもらいました。ちゃんとキャストのみなさん、スタッフのみんなと全員で作ったという感覚があります。本当に一人でも多くの人に観てもらえたら嬉しいです」とコメントし、会場からは大きな拍手が送られ、イベントは終了した。

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親になることからも、大人になることからも逃げてしまった主人公が、過去の過ちと向き合い、不器用ながらも青年から大人へ成長する姿が描かれている映画『泣く子はいねぇが』。主人公・たすく役を仲野太賀が演じるほか、吉岡里帆寛一郎山中崇余貴美子柳葉敏郎といった実力派俳優が出演している。11月20日(金)より全国公開となるので、是非お楽しみに!

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映画『泣く子はいねぇが』本予告 | 11/20[金]公開

INFORMATION

泣く子はいねぇが

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11/20(金)より、新宿ピカデリー他全国ロードショー

仲野太賀 吉岡里帆
寛 一 郎 山中 崇 田村健太郎 古川琴音 松浦祐也 師岡広明 高橋周平 板橋駿谷 猪股俊明 余 貴美子 柳葉敏郎
監督・脚本・編集:佐藤快磨
主題歌:折坂悠太「春」(Less+ Project.)
企画:是枝裕和
エグゼクティブプロデューサー:河村光庸
プロデューサー:大日向隼、伴瀬萌、古市秀人
企画協力:分福
制作プロダクション:AOI Pro.
配給:バンダイナムコアーツ/スターサンズ
製作:『泣く子はいねぇが』製作委員会

©2020「泣く子はいねぇが」製作委員会

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