第29回東京国際映画祭に出品された『太陽を掴め』、『女流闘牌伝 aki – アキ-』でも知られる中村祐太郎監督作の『スウィートビターキャンディ』が7月15日(金)より、下北沢『K2』、池袋『シネマ・ロサ』他、全国ロードショー。本作の試写会が6月28日(火)に都内で開催され、中村監督、主演の小川あん、共演の田中俊介がトークセッションに出席し、4年前の撮影の日々を振り返りつつ本作の魅力について語った。

「葛藤、感情、ぶつかり合いを感じていただけたら」

本作の撮影は2018年の夏に愛知県で敢行された。4年越しでようやく公開を迎え、田中は「大変お待たせしました」と感慨深げに語り、小川も「待っててくださってありがとうございます」と笑顔を見せる。

さらに“サプライズ映像”として、小川演じるサナエが恋に落ちる謎めいた家政夫・裕介を演じた石田法嗣からビデオメッセージが到着。石田も「2018年の夏から4年の月日が経って、ようやくみなさまに見ていただける日を迎えて嬉しく思っています」と観客へのお披露目を迎えた喜びを口にした。

そして「思い返すと愛知の夏の風景、限られた時間を必死で駆け抜けたことが思い出されます。田中くんとのシーンでは、ぶつかり合い、本気でやり合ったことが印象に残っています」とふり返り「田中くん、本当に蹴ってしまいすみませんでした(苦笑)」と4年越しに田中さんに謝罪も。そして「葛藤、感情、ぶつかり合いを感じていただけたら」と会場の観客に向けて呼びかけた。

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また当日は、映画本編に加えて、監督、小川、田中にそれぞれ焦点を当てたドキュメンタリー映像も上映された。

「あんちゃんの魅力。あの瞬間にしか撮れなかったものがある」

田中は本作「スウィートビターキャンディ」の見どころについて「あんちゃんの魅力。あの瞬間にしか撮れなかったものがある」と語る。「あんちゃんが『裕介』と駆け寄って抱きしめるシーン。あれは僕も現場で見ていて泣きました。サナエという存在がいて裕介が救われる――グッときましたね」と小川の演技を絶賛した。

一方で小川は、映像に残る当時の自分の姿に「いま見ると、恥ずかしくなっちゃいます(苦笑)。あの時は、確固たる思いで現場で(カメラが回っていない時も)ずっと役のままでいようと。いまではそれはできないと思うけど、当時はそういうやり方でしかできなかった。現場で役のままいるというのは、周りを巻き込んで、気を遣わせる大変なこと。未熟だなと思いますし、恥ずかしい……」と照れつつも「一切、妥協なく集中してできていたし、そんな現場はなかなかない」とまさにあの時にしか表現しえなかったものがカメラに捉えられていると語る。

そして、田中は「中村監督とは初めてでしたがビックリしました。唯一無二の監督で、演出も台本にないことをすごくやらせるし、現場でわけがわかんなくなりました。(自身が演じた)山下が深みのある多面的な人間になってよかったけど、やっている時は大変だった…」と苦労を述懐。とくに「台本にない歌を歌わされたこともあって、しかも本編ではバッサリ切られてた(笑)」とボヤくが「こんな現場はなかったし、この作品以降もない(笑)。でも当時は戸惑ったけど、ありがたかった。そんなこと普通は経験できないから。楽しく、大変だったけど、経験として良い時間でした」と充実した表情を見せた。

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もし、自分が応援でこの現場に入ってたら『大丈夫か、この監督?』と思ったと思う(笑)

小川は田中との共演について「本当に素晴らしかったです。安心感があって、安定していて、たぶんすごく真面目な方で、現場に入る時点で完璧なんです。ブレることなく強固で、田中さんとのシーンはずっと“受け”でしたが、無心でできました。きっと、海外の作品でグリーンバックで芝居をしても完璧にできる俳優さんだと思います」と手放しの称賛と感謝の言葉を口にし、会場からは温かい拍手がわき起こる。

また、現場で俳優陣にムチャブリを繰り返したという中村監督は自身の演出に「やり過ぎてたよね(苦笑)。あの時は28歳で、20代の元気のピークでした。いまだったらありえない。もし、自分が応援でこの現場に入ってたら『大丈夫か、この監督?』と思ったと思う(笑)。爆発しまくってたし、そのエネルギーがあったからこそ俳優部と一緒に全部を感じ取ってやれて、あの現場独特のものが生まれたと思います」と反省を口にしつつ、手応えを明かした。

改めて、4年という月日を経て公開をようやく迎えることに中村監督は「超長旅。結婚したら離婚してるくらい、4年って長い!」と結婚生活に例え「“超ラブラブ”な感じが映っています。4年前に別れた彼女にすごく久しぶりに会うみたいな、ちょっと気まずさがある感じ(笑)」と心境を明かす。さらに中村監督が「あんな感じではもうできない。かけがえのない時間が流れてるし、ジジイになって見たら泣いちゃう!」と語ると、小川は「(ドキュメンタリー映像を見て)自分で泣いちゃいました(笑)。切なかったです。私は芝居の仕方とかをずっと考えてしまうタイプで『あの時はああすることしかできなかった。衝動で役のままいれて『周りのおかげだな…』とすごく哀しくなりました』と明かす。田中も小川の言葉に同意し「学生の頃の夏の思い出みたいに、センチメンタルになる。ひと夏を映し出してる」とうなずいた。

最後に中村監督は7月15日(金)の公開に向けて改めて「2018年の『スウィートビターキャンディ』という“事件”が2022年、ようやく埋まります!」と作品をアピールし、トークセッションは幕を閉じた。「スウィートビターキャンディ」は7月15日(金)より、下北沢K2池袋シネマロサほか全国公開。ぜひ劇場でその全貌をご覧あれ。

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INFORMATION

スウィートビターキャンディ

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7月15日(金)より、下北沢『K2』、池袋『シネマ・ロサ』他、全国ロードショー

監督:中村祐太郎

脚本:小寺和久 中村祐太郎

主題歌:「そういう風の吹きまわし」 町あかり

企画・プロデュース:中村祐太郎・宮田雅史 撮影・照明:池田直矢 / 録音:小川武 / 衣装:松田稜平 / ヘアメイク:菅原美和子 / 編集:冨永圭祐 助監督:ジョン・ヒジリ / ラインプロデューサー:佛木雅彦、汐田海平 出演:小川あん 石田法嗣 田中俊介 清水くるみ 松浦祐也 町田マリー 蒼波純 若杉凩 片岡礼子

配給:MotionGalleryStudio

2022 / 日本 / 107分 / アメリカンビスタ / 5.1ch / カラー / デジタル ©MotionGalleryStudio

<ストーリー>

サナエ(小川あん)は、今年大学受験を控えている女子高生だ。ただ、同性のグループであったり、人と交わるのが少し苦手である。”大人にならなくちゃ”と、自分でも思ってはいるけれど、中々うまくはいかない。夏休みになり、東京の大学に通っていた姉が帰ってくると、サナエも受験を控えている手前、両親の都合で、家に家政夫を雇うことになる。家政夫の裕介(石田法嗣)は、無骨で少し恐く感じる。謎が多いと周りも言っている。けど、彼を知っていくうちに、どこか自分と似ている部分や、重なる思いに気づき始める・・・。それは、サナエの”甘い”初恋であるとともに、裕介の”苦い”思い出を巡る、旅の始まりであった―。

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