【対談】マヒトゥ・ザ・ピーポー×OMSB×Hi’Spec×YELLOWUHURU×三宅唱｜GEZANとGHPDのコラボ『BODY ODD』

MVについて

三宅　最初に聞いたのは〈GHPD〉サイド。翔くんの家のスピーカーで聴かせてくれた。その前日に『The Carters』とか『ye』を聴いてたんですけど、そういう、世界最高峰のレベルなんだなあって、なんか遠い目になってさ。ゴージャスな感じ。その時にPVもお願いされたけど、やりたい気持ちと無理無理って気持ちがありつつ、まだその時点では〈GEZAN〉サイドを聞いてなかったけど、一本のビデオにするってどうだろうとか話して。

Hi’Spec　最初は通しのビデオにする予定だった。

三宅　結果は分けることになった。俺はPV見るのがちょっと苦手で。PVありきで音楽聴くよりも、音楽は音楽単体で、まずは絵なしで聴くものだと思ってる。だから今回も最初聴いた時はPVなんて無くて良いんじゃないかって思ったぐらいで。もう五木田さんの絵もあるしさ。でもまあ、撮るのはほんと楽しいし、気合いいれようと思って。

言葉にならないけど出したい、純粋な表現

三宅　＜GEZAN＞の曲はいろんな人が出てくる。最初は大騒ぎするイメージが湧いたけど、結局はスマホでPVを観る人が多いわけで、その小さい画面の中で大騒ぎしたとしても醒めちゃう気がした。

その中でポイントになったのが、カベヤシュウト（odd eyes）くんのヴァースからマヒトの流れで。なんかおもいっきり切なくなったんだよね。ギターもすごくエモーショナルだし。それで今の方向を決めた。

こういう機会だし、〈GHPD〉とGEZANがみんな映ってるものを撮りたかったから、みんなにスケジュールを合わせてもらって。夏だし、どっか行こうって話になり、オムスが伊豆の「アンポンタン共和国」がすごい、と。それで、2日間伊豆に行った。

YELLOWUHURU　やっぱりA面のビデオはマヒトのシーンが良いよね。シュウトくん終わりのやつ。

マヒト　海老名のパーキングエリアにある公衆電話で撮ったやつでしょ。PVではみんな死ぬって設定。速い曲なんで、カット数も多くなってごちゃごちゃするのかなと思ってけど、みんな静かに死んでく。

三宅　浜辺の手のカット、結構長く使ってみたんだけど、極端なことを言えば、このカットだけのPVでもアリなんじゃないか、と思ってた。

マヒト　それはさっき三宅さんが言ってた音楽に対してのリスペクト、本当はそのまま聴いた方が良いみたいな所にも通じてると思う。

三宅　翔くんのアルバムでPV作った時は、音をはめるのが楽しくてしょうがなかったけど、今回は違う作戦。

Hi’Spec “Phantom Band”

Campanella氏は撮影のタイミングなかったのもあって写真にさせてもらって、ハマジ氏のトイレのカットはマヒトが撮ってくれたんだけど、素材見た時、ほんとすいませんと思いつつ、美しい顔だなあ、と。あの目がすごい良いんだよ。その後がLOSS氏。「Vシネだね！」って言いながら倒れてくれて。あのシャウトを撮れたのは嬉しかったな。生で見ると、シャウトする体ってすごいよくて。言葉なんかじゃ伝わらないものがすごい響いた。

マヒト　みんなリリックがあるから、お願いする時に曲のテーマも話した。でも言葉じゃなくって、身体が1つの詩になってるみたいな。オムスも出てもらったんだけど、去年の＜全感覚祭＞があって、その時にやった“wasted youth”のライブ動画が上がってるんだけど、客とか友達がダイブしまくってて「ダイブ選手権」みたいになってた。

GEZAN”wasted youth” 全感覚祭2017 OSAKA

その時も自分が何を歌ってるかじゃなくって、その光景が詩だなと。言葉がどうこうではなくて、この光景みたいなものを作れたら良いなって思った。そういうコンセプトでLOSSさんに伝えたら、「ENDON（LOSS所属のグループ）は一個も歌詞がないから大丈夫」って。

「まさか……」

三宅　そのあとのカベヤシュウト氏（odd eyes）は自分で撮ってくれたもんね。

マヒト　Madeggがカメラを回したんだよね。あいつはちゃんとリリック書いてきた。

三宅　マヒトが「あれは良いリリックなんですよ」って言ってたのはすごく印象に残ってる。それで、最後にオムスをどうするのかどうするのかって問題はあった。

マヒト　エレベーターオムスは評判良いんじゃない？　大ボス感ある。

三宅　小林幸子感ある。

マヒト　オムスの撮影時に友達が横で見てて、エレベーターが降りてきてライトがチラチラっと光るシーンで「まさか……」って言ってた。曲も少し変わって、生が出てくるから。

OMSB　エレベーターでは首を傾けてたんだけど、気管が絞まってマジで苦しかった。それを10回くらいやったんだよね。

三宅　俺が笑ってNG。

OMSB　爆笑されて、俺も笑っちゃうから。「死ねないよ！」って（笑）。

三宅　〈GHPD〉サイド、まずオムスのバースは青空で行こうって決めて。ゴージャスな青。USOWAは自分から色を提案してくれて。マヒトのパートはそもそもそうやってイメージを分けていいものかどうかすら迷ってたけど、あの場所発見できて良かった。

マヒト　あの場所まではマジで大変だった。

OMSB　二度と行かない。

三宅　行くまで山をだいぶ歩くからね。体感40分くらい。万が一、行きたくなったらPV見ればいいしょ。

YELLOWUHURU　めちゃくちゃフナムシがいた。

OMSB　めっちゃいた。最悪だったよ。

グレート・カマドウマ

三宅　PVの撮影現場で出会った虫。

Hi’Spec　あの虫の名前分かったの。カマドウマ（検索注意）。

三宅　どんくらいだったんだっけ。

OMSB　本当にこんなんで（オムスの片手くらいの大きさ）、“タカタカタカ”って歩くの。

三宅　この前の話と違うじゃん（笑）。“ガシャンガシャンガシャン”って言ってたでしょ。

OMSB　そういうレベルのやつで、どデカかった。真っ黒だったよね。

三宅　BODY ODDだった。

OMSB　ただのカマドウマじゃなくて、グレート・カマドウマ。

マヒト　あの宿代はこの世で一番無駄にした金だよね。カルロス（GEZANのベース）には本当に悪かったな……。1日目の夜に取ってた宿に行く道は面白くて、何かここありそうだなと。良い感じにRPGで。でも着いたら、山小屋なのは良いんですけど、蜘蛛の巣張ってるし、布団は何色だよっていう。黄色より黄色。

OMSB　工事現場の詰所だったよ。

マヒト　電気つかないし、トイレに入れない。

OMSB　押入れに布が掛かってて、その中にガサガサになってる布団があって……。

三宅　みんなここに泊まろうって言ったらどうしようかなって思ったよ。

OMSB　「虫倒したらいけんじゃね」とか言わないでって思った。

YELLOWUHURU　WI-FIありますって書いてあったよね。

三宅　絶対ねぇよ！　それだけあってもどうするんだって。

OMSB　ふざけないでくれよって（笑）。

三宅　海辺沿いで鬼暑い中、みんな体も死んでるし、風呂も入って飯も食いたかったのに（笑）。

マヒト　飯屋もなかなか開いてるところがなくて、結局ジョナサン。

OMSB　伊豆まで来てジョナサンかと思いながらも、ジョナってたね。

『きみの鳥はうたえる』

マヒト　三宅さんの映画は9月1日（土）からなんですよね。

Hi’Spec　函館は25日（土）から。

OMSB　マジで良い映画。

三宅　自分は去年1年くらい山口にいたんだけど、東京に改めて戻って来て思うのは、ライブとか映画、美術館に行くとかやらないと、東京にいる意味がない。美味い飯を食べるとかリラックスした時間を過ごすって、東京である必要は全くない。

映画『きみの鳥はうたえる』の中の登場人物たちも、本を読んだり、友達と酒を飲んだり、ライブを観に行ったり、バイトをサボって映画を観に行ったり、そういう人たちの映画で。

それは、自分たちにも似ていて。少なくとも自分の場合で言えば、この映画を作ったことと、〈GHPD〉とGEZANと作品を作ったりすることは、どこか根っこが一緒。

公開日前日は『BODY ODD』のリリースパーティーがあるんですけど、映画好きもこのパーティーで遊んだらいいと思うし。音楽ばっかりの人も、ぜひ映画館へ。翔くんがつくってくれた劇伴音楽、最高級品だから。

Hi’Spec　予告編にも使われてましたね。

マヒト　セリフはあるの？

Hi’Spec　オムスはある。なんて言うんだっけ。

OMSB　観てからのお楽しみで。

三宅　あと、あんなライブのシーンは誰も撮ってないよ。

OMSB　マジでチェキった方が良いと思います。

撮影協力：Contact Tokyo
Photo by 三宅唱、松井宏、Qetic・船津晃一朗

GEZAN GHPD三宅唱Contact Tokyo