――さて、新作『WAVINESS』の歌詞には、大きく分けて3つのパターンがあると思ったんです。ひとつは先ほども話した「英語と日本語が絶妙に混ざり合ったもの」。もうひとつが「王道のJ-POP的な魅力を持ったもの」。そして最後が、「全編英語詞のもの」。それぞれについて、みなさんが印象的だと思う曲とその制作過程を教えてもらえますか? たとえば、「英語と日本語が混ざり合ったもの」で言うと、“uplift”の「人 from 猿へ 続いて to be 進化論」(進化論がシンガロングにも聞こえる)という歌詞はすごいですね。
△ “uplift”はすごいですよね。内容はディスりソングなんですけどね(笑)。
Agsai 詳しくは言えませんが、日本も世界も色々あるじゃないですか。この曲を作った2012年は世界情勢も不安定で、色々起こっていた時期で。その中で「いい加減大人になろうよ」ということを憂いとして書いた曲ですね。○さんの仮歌の時点で、「人 from」ぐらいまではすでに言っていて、「進化論」というのも既にそう聞こえていて。最初にそれをあて込んだんです。
△ もう、『空耳アワー』の世界ですね(笑)。本人が何と言っていたかは分からないんですけど、○さんが気持ちよく発声して。トラックは、最初はもっと爽やかな曲でした。でも、歌詞がそういう方向性になってきたので、ちょっとエッジのあるパートを追加しましたね。
Agsai 私からすると、もともとトラックが爽やかだったので「これに爽やかな歌詞を乗せると当たり前のものになってしまう」と思って歌詞を考えていった部分もありました。
△ 基本的にみんな、ひねくれものなので(笑)。
――「王道のJ-POPに振り切れたもの」というと、どの曲を挙げますか?
△ 王道としては“全世界 NEVER GAME OVER”かな? これはGReeeeNの共同制作者/プロデューサーのJIN先生にも手伝っていただきました。JIN先生が“Yume Be The Light”を初めて聴いて、CTSに興味を持ってくれたんですよ。それで繋がらせていただいて。トラックもゼロから作っていきましたね。
□ CTSの曲で、初めて生のギターが入っていたりと、新しい挑戦をした曲でもあります。「聴きやすさ」をJIN先生と話し合いまして、新しく生の音を入れました。
△ JIN先生はJ-POPのツボを分かり尽くしているので、曲が出来てきて、歌詞も出来てきた時に、「この歌のこの言葉のところは絶対にマイナー・コードをあてるべきだ」とか、すごく大事なことを教わりました。結構時間かけましたもんね。何度もディスカッションして。
CTS – 「全世界 NEVER GAME OVER」Short Version
――「10代に向けた」という曲のテーマも、その中で出てきたものですか?
Agsai そうですね。ティーンに向けて発信したかったというか。
△ JIN先生は、「これを中二病のやつらに届けるんだ!」と(笑)。この時、やたら「中二病」を連呼していましたからね。「こっちよりこっちの方が中二でしょ?」って。
□ こだわっていました(笑)。
Agsai でも、素晴らしいこだわりようでしたよ。最初は、歌詞になかなかどう落とし込んでいけばいいか考えあぐねていたんです。その時に、「アニメ映画『秒速5センチメートル』の世界観で!」というのがドン! と来て、私も色々おさらいし直していきまして。
――CTSさんのいい意味で「面白いことをやっていこう」というマインドが出ていますね。
△ そうですね。これはJIN先生あっての振り切りかな、と。
――最後に「完全英語詞のパターン」で言うと2曲ありますが、今回はどれにしましょうか?
Agsai 英詞をシン・バラカンさん(ピーター・バラカン氏の息子)が監修してくれたという意味でも、“Love the past, Play the future”ですかね。
CTS -「Love the past, Play the future」Teaser
△ 国語の先生に続いて、ここで英語の先生にも登場していただいた、と(笑)。
――これはPlayStation 3&4用のゲームソフト『ウイニングイレブン2016』とのタイアップ曲です。
△ この曲に関しては世界向けの作品でもあるので、もともと「英語詞で」というオーダーがあったんですよ。「じゃあ英語の先生だ」と(笑)。
Agsai そもそもゲームのサブタイトルが「Love the past, Play the future」だったので、それを分かりやすく伝えるためにはどういうストーリーにしようかと考えていきました。それで日本語の歌詞をたくさん書いて、それをシン・バラカン先生に渡したんですが、なかなか日本語のニュアンスを表現するのって難しくて。意訳でしか表現できない、というところで譜割りも考えつつすり合わせていきました。○さんも含めてレコーディングをしながら考えましたね。たとえば、「is」とか「of」とか「to」を入れてしまうと一文字多くなってしまうので、それをどうにかできないか、ということを考えていったんですよ。
△ あとは、発音の指導ですよね。
Agsai すごく時間がかかりました。最終的に着地するまで、およそ10時間コースでしたね。
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