——今回他に影響を受けた印象的な出来事やアート作品、社会の出来事などは? 

リアス 周りで起きることはすべてインスピレーション源だけど、音楽で言えば最近ミート・ラッフルってバンドと親しくなった。俺たちの音楽に興味を持ってくれたみたいでさ。彼らもサウス・ロンドン出身で、最近一緒にツアーをしたけど、どんどん良いバンドになっているよ。

——近年はイギリスも含め世界中で多くの社会問題が取りざたされています。こうした状況も新作に影響を与えた部分があったと思いますか。

リアス 社会が急激に右傾化する中で左寄りの政治的な意見を持っていると、そこに余計に焦点が当たるようになるものだよ。危機に対応するために、そういった政治的な視点がより基盤的なものになる。俺たちは英国の保守政党による政治にうんざりしているんだ。今の厳しい状況は奴らのせいだと思ってる。

ソウル あいつらが全員射殺されるところを見たいね。

リアス ああ、ムッソリーニに起きたこと(処刑後ミラノの広場で逆さ吊りにされ、さらしものになった)がデイヴィッド・キャメロンにも起きると良いよな。彼の取り巻きと一緒にね。

ソウル なんなら家族も一緒にさ。

——(苦笑)。

リアス 彼の子供も含めてだよな。彼らのような考え方が二度と復活しないように。

ソウル 根っこから排除しなきゃならないよ。

リアス 同感だね。あれは病気みたいなもので、胞子も含めて全て根絶しないといけない。子供も含めて排除したいと大きな声で言えるよ。ま、そんなことが俺たちにできればだけどさ。もしも何かの拍子に俺がバンドをやめて権力を握ることになったら、まず最初にそうするね!

——そもそもファット・ホワイト・ファミリーは、最近のUKロック・バンドの中でも飛びぬけて反体制/反権力的な姿勢を感じるバンドの一組だと思います。

ソウル いや、俺たちは反権力じゃないよ。プロレタリアートの権力を信じてるんだ。

リアス ああ、俺たちは正しい権力を信じている。秩序は正義によって保たれるべきなんだ。俺たちが権力さ。

ソウル 俺たちの王冠の宝石(重要な資産という意味もある言葉)を取り戻さないといけないよ。

——では、体制には反対、でも権力には賛成ということ?

ソウル(爆笑)

リアス そう、その通り! そりゃ随分変に聞こえるかもしれないけどさ。

ソウル なぜって、俺たちは全ての人に権力があると思っているんだよ。誰も全員が特別か、誰も特別じゃないかのどちらかさ。

リアス そう。反体制っていうのは、自分自身の人生に関しては何の権力も存在しないってことだ。

——では、あなたたちが共感している現在の音楽シーンのアーティストというと、どういった人たちなのでしょうか。また、その理由は?

ソウル チェイン・アンド・ザ・ギャングには共感するね。スリーフォード・モッズも同類って感じがする。俺たちは何か言いたいことがある奴らだったら誰でも共感するよ。

——それが自分たちとは違う意見であっても?

ソウル 今は味気なくて退屈な時代だから、何も言うことのないバンドよりは保守的なイデオロギーを持ったバンドに入ることの方がよっぽど興味をそそられるね。それほど事態は切迫しているよ。

——新作『Songs For Our Mothers』の楽曲をどんな風に書き始めていったのか教えてください。

ソウル いくつかの曲は、まだバンドが始まる前に書いたものだったんだ。だから、アイディアのうちいくつかはもうずっと長いこと浮かんでいたものだよ。5年くらい遡るものもあるんじゃないかな。でもひとつのアルバムとしてまとめ始めたのは一年前くらいからだね。ツアーの合間にセッションをしながら作っていったんだ。

ヒトラーからティナ・ターナーまで語る。ロンドンの反逆バンド! interview160210_fatwhitefamily_2

『Songs For Our Mothers』ジャケット

——その時バンドで共有していたテーマや方向性のようなものはありましたか?

リアス ああ、もちろんさ。それが何だったか今は思い出せないけど、何か考えていたことはあったはずだね。何かしらのアイデアはさ。

ソウル そうだね。バンドとしての何か集合的なアイディアはあったよ。

——ほとんど何も言っていないのと同じなんですけど……。

リアス それが何だったか思い出すには、アルバムを聴き返さないといけないな。

ソウル でも確か、ロックンロールよりももっと「ポップをベースにしたレコードにしたい」ってアイディアだったと思う。

リアス ああ、俺たちはポップ・ミュージックの要素をもっと研究したかったんだ。

——実際、先行シングルとなったあなたたち流のスロー・ディスコ“Whitest Boys On The Beach”は、いつになくビートが曲の中心に据えられて、きらびやかな雰囲気もある新機軸になっていました。

リアス ファースト・アルバムをリリースした後、俺とソウルと他の友達で一緒にバルセロナに行って、路上演奏をすることにしたんだ。

ソウル でもバルセロナでは路上演奏が違法らしくて、稼ぐことができなくて金が尽きてしまった。

リアス それで俺たちはビーチに行って、暑さに慣れてないから陽射しから隠れていたんだよ。日焼けもしてなくて、全身真っ白で。そうやって情けなく日陰にうずくまりながら、波打ち際の綺麗に日焼けした小麦色の肌のスペイン人たちを遠目に眺めているうちに生まれた曲だね。

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