The Fat White Family – “I Am Mark E Smith”

——ホロコーストやナチズムといったテーマは前作にも出てきていましたね。

リアス うん、ある意味歴史的に最も興味深い出来事だと思う。

ソウル 俺たちは酔っ払ってホロコーストについて話すのが好きなのさ。

リアス そう、それが音楽を演奏している以外の時に俺たちがすることなんだ。瞑想しているか、酒を飲んでるか、酒を飲みながらホロコーストの話をしているかのどれか。このインタビューが終わったらジャグジーに浸かりながらダッハウかアウシュヴィッツの話をすると思うよ。

ソウル ショッキングなものを作るためや、ふざけてそういう話題を扱っているわけじゃない。それが重要な出来事だからさ。他に何について曲を書けばいいのかわからないね。

リアス なぜ他の人々がもっとこういう題材を扱わないのか不思議に思うよ。俺たちにとっては自然なことだからさ。俺たちは自分たち自身のことは何も記憶できないけど、この時代についての歴史書は山ほどあるから、このテーマはいくら追求しても尽きることはないよ。

——先ほど社会の右傾化について触れていましたが、それもナチズムの歴史に触れる理由になっていますか?

リアス 間違いないね、俺たちは(過去の右傾化と)同じ道を歩んでいるところだよ。もうすぐそこまで来ている。たくさんの戦争や殺人や虐殺が起こっているし、とても共通点が多い。そしてそれを表現するのには、ナチズムが人々にとって一番わかりやすい例なんだ、それについてたくさんのハリウッド映画も作られているからさ。何故かね。だから、俺たちがそうやって実在の人物や事件をテーマにしているのは、人々が曲を理解できるようにするためさ。出てくる人物の多くは俺たちが強く興味を抱いている人物か、その時面白いと思う人物で、人々が知っていたり馴染みのある名前を出すことで曲の内容をより消化しやすくしている。俺たち自身がアウトサイダーだから、これもまた自然なことさ。

ソウル 俺たちがやることの99%はなぜそうするのか分からないことだし、それが何故か知りたくもないね。

リアス なぜなのか知らない方がいいこともあるよ。曲のミステリーを人々から奪いたくはないし……。

ソウル 全てのことを分析しすぎたくはないんだ、深淵を覗きすぎて、深淵に覗き返されたくはないからね。それに、ずっと後になって、ほとぼりが冷めてからの方がよく見えてくることもある。

リアス 創作の炎の中では、自分が何と戦っていたのか分からないものさ(笑)。

ソウル 良いヘッドラインだね(笑)。

Fat White Family – “Auto Neutron”

——今回のアルバムの歌詞は特に、人間の愚かさや複雑に絡み合った関係のようなものにフォーカスしている印象を受けます。

ソウル うん、このアルバムでは自分たち自身の愚かさについて歌っているんだ。

リアス 自分の中の悪魔についてだね。

ソウル 俺たちは決して真面目な人間とは言えないけど……。

リアス 口も悪いし……。

ソウル でも、同じような友人たちを探しているのさ。

リアス 兄弟や姉妹をね。

——あなたたちはもともとカントリー・ロック・バンドとしてスタートしていますが、悪名高いあのチャールズ・マンソンのアルバム『Family Jams』を教えてもらったことから現在の音楽性が定まっていったそうですね。

リアス ああ、あれは良いレコードだよ。

ソウル でも、前回のアルバムのときには大きな影響を受けたけど、今回のアルバムでは特にそういうわけじゃないよ。俺たちはあの影響を使い切ったと思う。あのレコードから引き出せるものはすべて引き出して、もう次に進む用意ができているんだ。

リアス マンソンはもう枯れたよ。

——(笑)。

ソウル 影響を受けたのは音楽的にさ。もちろん、俺たちはイデオロギー的にマンソンの影響を受けたわけじゃなくて(笑)、単純にあのレコードにインスパイアされたんだよ。

リアス だから俺たちは別に妊娠中の映画スターを殺したいわけじゃないけど、あのレコードのメロディや歌詞はすごく良いよ。

Charles Manson – The Family Jams – Ra-Hide Away

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