1994年、ニルヴァーナの『ネヴァーマインド』をプロデュースするなど、ロック界にその名をとどろかせたブッチ・ヴィグを中心に結成された、カービッジGarbage)。全世界で売上400万枚を突破したセカンド・アルバム『ヴァージョン2.0』の完全リマスタリングされた20周年記念盤が2018年6月22日(金)に発売される。ボーナス・ディスクには、B面曲や未発表曲も収録され従来のファンにとっても喜ばしい内容であることは間違いない。

秋にはアルバム全編再現ツアーを控えているガービッジ。今回、20周年記念盤の発売を受けてリード・シンガーでもあるシャーリー・マンソンにインタヴューを行った。

いま再評価されるべき!ガービッジの紅一点シャーリー・マンソンが名作と名高いセカンド・アルバム『ヴァージョン2.0』を語る。 interview180612_garbage_kawasaki_sub01-1200x972
Joseph Cultice

Interview:Shirley Manson [Garbage(Vo)]

——今回のインタヴューにあたって資料を読み直していたんですが、昨日4月8日がガービッジ結成の日だそうですね。4人が初めて会った日ということですか?

そうそう、ちょうどニルヴァーナのカート・コバーンの遺体が発見された日でもあるの。だからずっと覚えているのよね。あの日私は、ガービッジの3人の男性メンバーとロンドンのランドマーク・ホテルで初めて対面し、実際に喋ってみたんだけど、具体的にどういう活動をしたいのか、彼らの気持ちはまだ固まっていなかったみたい。曲ごとに異なるシンガーをゲストに迎えてレコーディングしたいという話をしていて、そのひとりとして参加することに興味はあるかと訊ねられたのを覚えているわ。そして別れ際に3人に、「私が参加するか否かは別にして、このプロジェクトがうまく行くよう祈っています」みたいなことを言ったの。で、滞在先に帰ってテレビを付けたら、カートの死のニュースが盛んに報じられていたっけ。そんなわけでガービッジの始まりは皮肉にも、ひとつの悲劇と一緒に記憶に刻まれているのよ。

——なるほど、そういうことだったんですね。では本題のセカンド・アルバム『ヴァージョン2.0』の話に移りますが、改めて聴いてみて、未だにフューチャリスティックな印象を与えることに驚かされました。あなたは本作を「ガービッジの典型的なアルバム」と評していますね。

ええ。もしガービッジについて一切知らない人に、「君のバンドってどんな音なの? 何が君のバンドを駆り立てていたの?」と訊ねられたら、このアルバムを聴かせるわ。『ヴァージョン2.0』こそガービッジを象徴するアルバムだから。ここには、ファーストの成功をバネにしてさらに進化できるという非常に恵まれたポジションにいた、当時の私たちの目的意識が凝縮されている。ファーストが大ヒットするなんて、ぶっちゃけ、私たち4人を含めて誰一人として予測していなかったのよ(笑)。しかも『ヴァージョン2.0』も結果的には同じくらい大ヒットした。それって、誰の基準で判断しても奇跡に近いことよね(笑)。そんなわけでこのアルバムは、ガービッジというバンドの存在を正当化したようなところがある。ほらどんなアーティストでも、ある程度状況を味方をつけて、ある程度の才能を備えていて、ある程度の運に恵まれていたら、ファーストをヒットさせることは決して不可能じゃない。でもそれを礎にして、セカンド・アルバムで同等の成功を手にするのは非常に難しい。実際それを達成できたアーティストがどれだけ少ないか、記録を振り返れば分かるわ。だから『ヴァージョン2.0』に対して私はこの上なくポジティヴな想いしか抱いていない。そしてまさにあなたが指摘したことが理由で、すごく誇りに感じているの。今でもモダンに聴こえるのよ。20年前に作られたアルバムだってことを考えると、ただならない快挙だと思うのよね。

——着手した時にはやっぱり、自信もそれなりにあって、意気揚々としていたんでしょうか?

そうね。さっきも言ったように前作は大ヒットしたんだけど、ガービッジを結成した時、4人とも決して若くはなかった。だからこそ成功を心からエンジョイしたのよ。私が最年少で、当時30歳だったかな。ほかの3人はずっと年上で、すでに40代半ばのメンバーもいたから、そういう年齢に至って与えられたチャンスがいかに貴重なものか、しっかり心得ていたわ。ファーストの発表後に2年に及ぶツアーをこなしたことも関係しているんだけど、自信一杯でアルバム作りをスタートしたし、ツアー中にアイデアもたくさん貯めてあった。だから自信もあったしエキサイトしていたし、もちろん同時に、このチャンスをぶち壊すわけにはいかないっていう不安も、少しあったんじゃないかな。つまりストレスがゼロだったわけじゃないんだけど、それ以上にエキサイトしていたわ。

——どんなアルバムにしたいか、メンバー間で話し合ったりしたんですか?

その質問に対する答えは、イエスでもありノーでもある。まずあの頃の私たちは間違いなく、新しいテクノロジーに夢中になっていた。『ヴァージョン2.0』が面白いアルバムに仕上がった理由は、そこにもあるのよ。あのアルバムは、初めて新しいデジタル・システムを使ってレコーディングされた作品で、私たちは最新のテクノロジーを無尽蔵に導入できたの。というのもブッチはプロデューサーとして非常に高く評価されている人だから、レコーディング機材を開発している会社が次々に彼を訪ねてやってきて、プレゼンテーションをしてくれて、スタジオで使える手段がどんどん広がっていったのよ。しかも私たちは、最新のテクノロジーを導入しながらも、いたってアナログな考え方でアプローチしていた。だって説明を受けたとしても、実際にこれらのテクノロジーが何をもたらしてくれるのか、全貌は理解していなかった。だから、技術的には時代の先端を行っているんだけど、色んなミスやズレや、ちょっとした誤作動がたくさんあったのよね。そういう不完全さが、アルバムにユニークな質感を与えてくれたと思うわ。

——当然、みんなエレクトロニック・ミュージックをたくさん聴いていたんですよね。

そうね。いわゆるエレクトロニカ系のアーティストを聴きあさっていたし、メンバーの内2人は、大学でエレクトロニック・ミュージックの勉強をしているの。特にスティーヴは深い知識の持ち主だから、すごく心強かった。そして当初から、エレクトロニカの要素を積極的に取り入れようと決めていたわ。ファーストはどちらかというと、よりトラディショナルでアナログなサウンドだったけど、今回は私たちが“SFポップ”と命名した表現を掘り下げたかった。つまり、より革新的な思考に根差したポップ・ミュージックを鳴らしたかった。それで、エレクトロニックな要素をギターと融合させたり、独自のループを作ったりしていたの。ファーストの時はかなりたくさんサンプルを使ったんだけど、当時はまだサンプリングのルールが曖昧だったのよね。でもここにきてみんなが使い始めて、厳しく管理されるようになってしまった。当然の話なんだけど、あまりにも使用料が嵩むから、自分たちで必要な音を作るようになったってわけ。

——あなたが全曲の作詞をするようになったのもこの時からです。リリシストとしてはどうアプローチしたんですか? 自己分析の手段として、作詞という作業を積極的に利用し始めたようなところもあるんでしょうか?

どうかしら、これまでちゃんと考えたことがなかったわ。私はファーストでもほとんどの歌詞を書いていたんだけど、『ヴァージョン2.0』で初めて、ひとりの女性として、自分が人生においてどういう場所にいたのかを踏まえて、私自身の主張をし、自分らしさを言葉に刻むことができたと思う。ほかのメンバーを満足させようとか、余計な気を遣うことなく。バンドがこの先も成長してさらに花開くためには、シンガーとしての私がより積極的に主張してリードしなければならない……と、私は悟ったのよ。その点ファーストを作った時の私は、ほかのメンバーを喜ばせるために歌詞を書いていた気がするの。彼らの嗜好を理解していたから、そこに訴えかけるようなものを書いて、喜ばせたかった。それが、バンドにおける私の役割の一部なんだと思っていた。でも『ヴァージョン2.0』に着手するにあたって、誰よりも私自身を満足させるために歌詞の方向性を考えて、じっくり取り組まなければと感じたのよ。なぜって前作のプロモーションをしてみて、究極的にはシンガーである私が矢面に立つんだってことを思い知らされたの。言葉のひとつひとつ、決断のひとつひとつを、私が説明しなくちゃいけなかった。そんなわけで『ヴァージョン2.0』の時は、全ての言葉を私が生み出したいと、ほかの3人に強く主張して納得させたのよ。幸運なことに3人ともすごく寛大な人たちだから、一切異論を挟むことなく作詞の役割を委ねてくれて、好きなように自分を表現する自由を与えてくれたの。結果的にあの時綴った歌詞には、当時のバンドを巡るカオスと向き合って、状況を理解しようとする私の姿が投影されているんじゃないかな。

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Joseph Cultice

——同時に、バンドの見え方も大きく変わりましたよね。当初はブッチ・ヴィグのニュー・プロジェクトとして注目を集めたガービッジですが、その後あなたのパーソナリティがバンドのイメージを塗り替えてしまいました。そういう自分の位置付けは自覚していたんですか?

あまり自覚はなかったかもしれないわ。もちろん、ロックンロールってものを私は理解していたし、リード・シンガーが担うべき役割も理解していた。私のペルソナがほかのメンバーに圧倒されてしまったら、私は自分の役目を果たしていないことになる。そこはちゃんと心得ていたから、すごくパワフルな存在として自分を提示しなければと思っていたわ。“リード・シンガー”と呼ばれるからには、リードしなくちゃいけないのよ。先頭に立っているように見えなくちゃいけない。ロックンロールの歴史を振り返ると偉大なパーソナリティの前例に事欠かないし、私が頑張らないとバンドとして生き延びられないと分かっていた。強いリード・シンガーがいないバンドは長続きしないのよ。それは紛れもない事実であって、自分に課された役目の重要さを十分に認識していたし、実際、悪くない仕事をしたと思っているわ。そう思いたい。でも簡単じゃなかった。バンドのみんなにとっても、そういう私と付き合うのはなかなか大変だったでしょうね(笑)。

——このアルバムには、ふたつの変則的なサンプリングが見受けられます。ひとつは“プッシュ・イット”で引用したビーチ・ボーイズの“ドント・ウォリー・ベイビー”、もうひとつは“スペシャル”で引用したプリテンダーズの“トーク・オブ・ザ・タウン”で、どちらも許可を取ったそうですね。中でもプリテンダーズのクリッシー・ハインドは豪快に「なんだろうが好きに使う許可を与える」と許諾してくれたそうですが、彼女とは面識があったんですか?

その前に一度、BBCの番組『Top of the Pops』で会っていたの。確か私たちは“クイアー”のパフォーマンスのために出演して、プリテンダーズはレディオヘッドの“クリープ”のカヴァーを披露した覚えがあるんだけど、そこで初めて対面して、そのあとでロンドンのブリクストン・アカデミー(注:現O2アカデミー・ブリクストン)でのライヴを観にきてくれたのよ。プリテンダーズとガービッジ、ふたつのバンドの間には、すぐに堅固なコネクションが生まれたわ。特に私はクリッシーと仲良くなって、今でも連絡を取り合っているし、心から愛しているし、尊敬している。でもこのふたつの引用については、ちゃんと意図があるのよ。私たちはロックンロールの歴史を踏まえた作品を作りたかった。『ヴァージョン2.0』は基本的に未来志向のアルバムなんだけど、同時に過去を振り返ることも重視していた。ほら、まるで自分たちが歴史と切り離されているかのように振る舞うバンドがいるでしょ? 「僕たちは何の影響も受けていません、僕たちがロックンロールを発明しました」みたいなノリの(笑)。それってカッコ悪いと思うのよね。逆に自分たちのルーツを明らかにして、敬意を表することはすごく重要だと思う。自分たちの創造欲の種を蒔いたのは誰なのか、インスパイアしてくれたのは誰なのかを。そういうインスピレーション源が、音楽を作っていると意図せずして姿を見せたりする。「さあて、これから私のヒーローに倣った曲を作るわよ」と狙って書くわけじゃない。自分の音楽性を形作った人たち、ミュージシャンとしての自分を形作った人たちの影響は勝手に現れるもので、「あらやだ、これってクリッシー・ハインドみたいじゃない!」とか、「あれ、“ドント・ウォリー・ベイビー”の歌詞を使っちゃったわ」と気付いてビックリする。それに気付いたら素直に認めるべきだわ。だから私たちは彼らと連絡をとって、許可をもらったのよ。道義的に正しいことだし、楽しいことでもあるし、モダンに感じられた。そして、より素晴らしいアルバムにしてくれたと思う。

——インスピレーション源と言えば、デラックス盤のB面曲集には、ビッグ・スターの“Thirteen”のカヴァーも収録されます。このヴァージョンは、アレックス・チルトンのお気に入りなんだそうですね。

そうなのよ。私たちの当時のプレス担当者が偶然アレックスと会って、その話になったらしいわ。<サウス・バイ・サウス・ウェスト>だったかな。その手の業界のイベントで会って、ビッグ・スターのカヴァーの中で一番のお気に入りだと言ってくれたらしいの。それを知って、本当に興奮したわ。心から尊敬するアーティストだし、偉大なソングライターだし、そんな彼の作品の中でも“Thirteen”は飛び切り美しい曲だし……うん、私たちのキャリアを振り返っても、こんなにうれしい言葉をもらったことは、あとにも先にもないかも。

Garbage – Thirteen

——ほかのB面曲の中で、あなたが思う“隠れた名曲”は?

“Thirteen”も間違いなくそういう曲のひとつよね。カヴァーとしてすごく意外なチョイスだと思うし、みんな驚いたんじゃないかしら。あと、“Lick the Pavement”も大好き。なんと5分で書き上げたの。というのも、ある日の夜中12時にいきなりレコード会社から連絡があって、「B面曲が急に必要になったから朝8時までに届けてくれ」と言われたのよ。しかもその時ちょうど、『ローリング・ストーン』誌のジャーナリストが取材でスタジオにいて、彼にいい印象を与えたかったっていうのもある。ダメなバンドだと思われたくなかったから、なんとかして瞬時にカッコいい曲を書かなくちゃならなかったの(笑)。それって、私たちの普段のやり方に完全に反するのよ。いつもは何をやるにしてもものすごく時間がかかって、途方もない苦痛を伴うから。でもこの時だけはゲストがいたおかげで、スピーディーで楽に仕上げることができた。それゆえにほかの曲とは少し異なる趣があって、そこが気に入っているの。すごくダーティーな曲でもあるし、勇気をくれるし、ある意味でフェミニスト・アンセムでもある。最近改めて聴いた時、「あら、イカした曲じゃない!」って思ったわ(笑)。

Garbage – Lick The Pavement (Audio)

——このアルバムは最終的には全英チャートで1位を獲得。前作以上の絶賛を浴びて、グラミー賞最優秀アルバム賞候補にも挙がりました。長年の活動が報われたように感じましたか?

う~ん、別にそういうことは感じなかったわ。っていうか、作品への評価って一過的なものでしょ? もちろん、当時はすごく興奮したと思うの。何か意味があるんだと思ったはず。でも、バンドを結成してから四半世紀が経った今、こういう評価が本質的にどういうものなのか分かったのよ。その瞬間はものすごくゴージャスな気分にさせられる。何か素晴らしいことをしたからこそ評価されたわけだし、その気分を最大限に楽しむべき。ただその一方で、実質的にはたいした意味はないわ。ほら、偉大なアーティストなのに、まともに評価されたことがない人が大勢いるでしょ? かと思えば、クソみたいなアーティストがやたら賞をもらったりするわよね(笑)。だから意味はないんだけど、もらうのはうれしい。そういうものなのよ。

——では個人的に、『ヴァージョン2.0』にまつわる最もハッピーな思い出と言うと?

1999年7月に、権限移譲を経て新たに創設された、スコットランド議会の開会式典の一環としてパフォーマンスをしたことかな。300年の歴史の中で、初めて私の祖国が独自の議会を持った日だったの。で、私たちは政府に招待されたんだけど、間違いなく、私の人生おける最高の出来事のひとつよ。祖国が私を誇りに思ってくれて、歴史的イベントに招いてくれたんだから、筆舌に尽くしがたい栄誉よね。家族もみんな喜んでくれて、両親が本当に誇らしげだったことを覚えているわ。とにかく美しい夏の一夜だった。それに、スコットランドのオーディエンスって最高なの。本当に熱狂的で、盛り上がってくれて、スコットランド全体が大きな希望に包まれていた。だから、色褪せない最高の思い出というと、これを挙げないわけにはいかないわ。でも、『ヴァージョン2.0』にまつわる全てのプロセスが、素敵な思い出に溢れているの。ほら、映画『007ワールド・イズ・ノット・イナフ』のテーマ曲も担当したわけだから、クレイジーな話だわ(笑)。これもスコットランド絡みの栄誉よね。007シリーズの原作者イアン・フレミングは最も有名なスコットランド人のひとりだし、私たちがテーマ曲を委ねられたなんて、衝撃的なサプライズだったわ。

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Joseph Cultice

——アルバム発表後、<フジロック・フェスティバル>に出演したことは覚えていますか?

暑すぎて死にかけた記憶があるわ(笑)。パフォーマンスを終えてステージを降りる頃には、4人とも全身真っ赤で、汗だくで、ちょうど次にプレイするソニック・ユースとすれ違ったのよ。彼らは怯えた目で私たちを眺めて、「いったい何があったんだい?」って訊かれたっけ。確かラインナップが素晴らしかったわよね。オルタナティヴ・ロックの黄金期だった90年代を象徴するようなアーティストたちが、あの年の<フジロック>に集結していたんじゃないかしら。

——日本絡みでもうひとつ伺いたいことがあるんですが、ファースト・シングル『プッシュ・イット』のリミックスを、ブンブンサテライツに依頼しましたよね。当時まだR&Sからシングル・デビューしたばかりだった彼らに、なぜ白羽の矢を立てたんですか?

彼らのスタイルに惚れ込んだのよ。ほら、折衷志向のバンドだったでしょ? そういう意味で、私たちとメンタリティを共有していたと思う。フューチャリスティックなんだけど、同時に、アナログな思考の持ち主だってことが分かった。単純にエレクトロニックなマシーンのプログラミングだけで作られた音楽じゃなくて、ヒューマンな要素が感じられて、そこに惹かれたの。私たちにとっては、マシーンと人間のコラボレーションであることが重要なのよ。

——このあと秋には、アルバム全編を再現するツアーが控えていますね。

そうね。リハーサルもまだこれからなんだけど。

——次のアルバムの進行具合は?

『ヴァージョン2.0』関連の作業に時間を取られてしまったんだけど、今年は新曲作りに専念するつもりよ。実は来週からカリフォルニアのパーム・スプリングスで、4人でひとつ屋根の下で生活しながら、セッションをすることになっているの。そんなことをするのは初めてだから、どうなることやらって感じなんだけど、面白いことになりそう(笑)。

——ここ数年は、旧譜のリイシュー及び再現ツアーをしつつ、同時に新作を作ってそのツアーもして……と、過去と未来を同時に見ながら精力的に活動しているようなところがありますね。

そうね。でも実を言うと、元々ファーストのリイシューを提案したのは、私たちじゃなくてマネージャーだったの。「君らの功績は忘れられている気がするから、20周年を機に再発してはどうかな。改めて評価されるべきだと思うんだよね」と言われて、4人ともちょっとビックリしたのよ。というのもバンドとしての私たちは、常に前を進むことにこだわってきた。そうすることで、ここまで続けられたと思うの。でも彼はそうやって過去を再確認することの重要性を指摘して、私たちを説得してくれた。で、一旦やろうと決めて取り掛かったら、すごく楽しめたのよね。正直言ってそれは想定外で、ここまで楽しめるとは思っていなかった。ファンの反応にも驚かされたし、だからこそ『ヴァージョン2.0』でも同じことをしようって話になったのよ。アルバムを誇りに感じているし、新曲作りの息抜きにもいいんじゃないかと思って。新作に向けて長い作業に集中するとなると、気分転換が必要でしょう? でもリイシューはこれで終わり。保障するわ!

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Joseph Cultice

——昨年8月には“No Horses”という新曲を発表しました。これは新作の方向性を予告するものなんでしょうか?

それはいい質問ね。実を言うと自分でも分からない。ただ、あの曲の制作プロセスそのもの、そして、こういう時代に寄り添う曲を完成させられたという事実は、私に大きな満足感を与えてくれた。ようはプロテスト・ソングなのよね。これまでパーソナルな面でずっと葛藤を抱えていたことを、正確に表現できた気がするの。つまり私たちが暮らす国々で起きている、人類の進化に逆行するような、深刻な保守化傾向について語りたかった。そういう意味で、私たちにとって非常に重要な曲だわ。でも、アルバムがどういう作品になるのかは、スタジオに入ってみないと分からない。逆に、方向性を決めてかかるのは危険だと思う。その時の自分の気持ちによるから、それまでに何が起きるか分からないでしょ? ただひとつだけ言えるのは、ほかの3人にも伝えたことなんだけど、この先どんな道を選ぼうと、一か八かの大きな勝負をしようじゃないかと。それだけは分かっているの。私はくだらないポップソングなんか書きたくない。人間として、アーティストとしての立ち位置を正確に反映させた、一定の価値と重みのある曲を書きたい。だってもう若くないから(笑)。消えてしまう前に、自分たちの存在を刻んだ、何か意味のあるものを残したいの。……ちょっと暗い話になっちゃったわね(笑)。

——そういえば、『NMEアウォーズ』のアイコン賞受賞、おめでとうございます。素晴らしいスピーチでしたね。

あの時は何か意味のあることを言いたくて、前もって準備するつもりだったんだけど、なぜか書けなくて、結局その場で思いついたことを話したの。何を喋ったのか全然記憶がないのよ(笑)。でも夫が、ちゃんと意味を成していたと言ってくれたから、それで満足したわ。

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Joseph Cultice

——最後に、昨年夏にブロンディと組んで行なったツアー<Rage and Rapture>に関する質問です。デビー・ハリーは70代に突入してなお、パワフルにパフォーマンスを続けていますよね。そんな彼女を毎晩観ていて、「私もあの年までやれるかも」と思いましたか?

どうかしらね。何しろデビーは、慣例やルールを完全に無視して好きなように生きている人だし、如才がなくて、圧巻のパフォーマンスを見せつける。果たしてそんな彼女のレベルに自分が辿り着けるのか、彼女みたいに立ち止まらずに活動を続けられるのか、分からないわ。でもね、例えば私が複数のアーティストとステージで共演するとなると、私はほぼ確実に、女性では最年長のアーティストなのよ。そのことに時々不安を感じてしまう。なぜって、私たちは年齢で人を差別する世界で生きていて、女性アーティストの場合は常に、35歳くらいで活動をストップするべきだと言い聞かされているわよね。だからこそ、ブロンディとガービッジが組んでツアーをすることには、大きな意義があると思う。しかもデビーという、私より20歳も年上で、なのに昔と変わらない説得力とセクシュアルな魅力と情熱をもってパフォーマンスを行なう女性を観ていて、私自身が心底インスパイアされたし、ツアーが終わった時には、悲しくて赤ちゃんみたいに泣きじゃくったわ(笑)。これまでもデビーは私のお手本だったし、これからもお手本であり続けるだろうし、彼女の存在そのものをありがたく感じるの。女性が持ち得る最大のパワーは若さにあるという嘘を刷り込まれている、世界中の女性みんながデビーを見習うべきね。最高のお手本だと思う。そんな話はデタラメで、女性の真のパワーは頭脳と才能とスピリットにあるってことを、彼女は身をもって証明しているわ。

ガービッジのセカンド・アルバム『ヴァージョン2.0』
メンバー全員のサイン入りの超貴重なヴァイナル盤をプレゼント!

本人たちがベスト盤だと語る、全世界売上400万枚を突破したセカンド・アルバム『ヴァージョン2.0』の発表から20周年を記念して発売されるリマスタリング・バージョン!ボーナスディスクにB面曲や未発表曲を計10曲も収録した豪華盤。メンバー全員のサイン入りの超貴重なヴァイナル盤を1名様にプレゼント!

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PRESENT INFORMATION

メンバー全員のサイン入りセカンド・アルバム『ヴァージョン2.0』 ヴァイナル盤 1名様

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応募期間

2018年6月22日(金)~2018年6月29日(金)23:59まで
※当選者の発表は賞品の発送をもって代えさせていただきます。
※複数回応募は無効となります。
※万が一物品が破損していた場合でも交換は受け付けられませんご了承ください。

RELEASE INFORMATION

2018.06.22(金)
ガービッジ
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text by Yoko Shintani