——続いて、ジャケットワークに関してお聞きしたいのですが、今回のアートワークは、ハンブルグ在住のアーティスト、ステファン・マルクスによるものですが、彼の作品の中でもマッシュルームのイラストと色使いがかわいらしくて、ドリーミーなドローイングになっていると思いますが、今回のデザインについてどう思われますか?

Gonno 『endless flight』のジャケットは全部ステファンがやっているので、彼の絵の中から選んで欲しいと言われて、この絵が単純に一番アルバムのイメージに合っているかなと感覚的に選びました。ドリーミーって言葉は確かに僕の音楽でも結構重要なキーワードで。あと僕の今までの作品で「赤」って要素が全然なくて、赤ってとっても主張が強いと思うんだけど、自分としては新しくていいなと思った。

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『Remember the life is beautiful』ジャケット

——確かに、Gonnoさんのイメージに赤というのはなかったので、このアートワークは意外性を感じていました。ステファンといえば、日本のクラブシーンでは、〈mule musiq〉のアートワークのイメージが強いかと思いますが、本来はスケートカルチャーがベースであり、TシャツやZineに人気のあるアーティストですが、ダンスミュージックやGonnoさん自身の楽曲とのイメージとリンクする部分はありますか?

Gonno 僕自身ステファンの絵だけは知っていて、彼がどういう出自で、スケートカルチャーがベースの人だなんて知らなかったんですよ。僕自身スケートカルチャーや絵画にあまり詳しくないんですけど、でも絵と音楽って、それぞれ出自が違っていても感覚的にどこかしら共有できるものがあると思ってます。ストーン・ローゼズとジャクソン・ポロックだって経緯は違うし、ソニック・ユースとゲルハルト・リヒター、ロウレル・ヘイローと会田誠さんもそれぞれの出自に関連性があるわけじゃないですから。出自はメタ的なもので、その作品から受け取る感受性が大事なんじゃないかと。

——そうですね。全く関連性のないもの同士でも共鳴し合って素晴らしい作品になることがありますからね。Gonnoさんもあげてくれているように海外では特にそういったリンクが多い気がしています。Gonnoさん自身もヨーロッパなど海外でのギグも多いと思いますが、国内でプレイする時と海外でプレイする時の大きな違いはありますか?手応え、オーディエンスの反応などはどうですか?

Gonno  2007年に初めてベルリンに行ってBar25というクラブでプレイしたんですけど、当初からオーディエンスの音の好みが日本と全然違うなっていう印象で。でもどうだろう? 世界各地を全部回った訳じゃないから…僕が回った肌感だと、ロンドンや大きい都市は今は東京とそんなに変わらない。ベルリンはやっぱり今でも特殊で、週末2日間ぶっ通し営業なのが当たり前ですし。あと2013年に行ったフランスのバスクのフェスはそれらともまた違っていて、自分の音楽やムードによく合うな、という印象でした。

——Bar25と言えば、今となってはもう伝説のクラブですが、あそこでプレイした日本人DJはかなり少ないのではないでしょうか? かなり貴重な経験をされているんですね。

Gonno 当時岡田さんというVJの方がBar25の周辺の人と仲が良くて、日本人を沢山ブッキングしてくれたんです。その中に僕も居て、レーベル〈Merkur Schallplatten〉のShingo Suwaくんもそこで知り合った。懐かしい良い思い出です。

——そういった経緯があったんですね。少し前に雑誌の取材でBar25の創設者の1人にインタビューさせてもらったんですが、“どうして日本人はもっと主張したり、行動を起こさないんだ!”と喝を入れられてしまいました(笑)風営法がまだ改正される前だったというのもあるんですが……。それとは少し違った視点ですが、日本には才能のある若手アーティストが多いですが、なかなか海外で活躍の場を設けるのが難しい現実があります。その辺についてどうお考えですか?

Gonno まずひとつは言語ですよね。日本語で紹介されても海外ではまったく意味がない。今はインターネットが当たり前にあって海外にアクセスしやすいし、海外に日本人も沢山いるから、以前よりは環境は整ってると思うんだけど……ネットがあるといえど海外への地理的な距離が遠くて、活動するために行き来するのにお金が掛かるのが一番大きいんじゃないかな。レコードで言えば、90年代は日本とヨーロッパと相互交流していたというふうに見えたんですけど、今はそれがほとんど皆無で、〈mule musiq〉、瀧見憲司さんの〈Clue-L〉、渋谷のレコードショップTechniqueが運営する〈EFD〉というディストリビューション部門が〈Cabaret Recordings〉などを海外輸出しているのが数少ない明るい材料ですかね。レコードはまだしもですが、国内のテクノ/ハウスのクラブシーンは以前より日本と海外のシーンがあまりリンクしなくなってきてるのを感じていて、海外DJは普通に来日して、日本のDJは日本国内だけで回ってるような印象です。日本国内だけで回ると、シリアスな国民性からなのか、または絶対的な数が多くないからなのか、なぜか懐古的で閉鎖的になってきて、必然的に新しい才能が世に出づらくなっていく。なかなかカジュアルに楽しもうとか広がろうとか、有機的に発展していかないんですよね。それはとっても残念なことです。僕も日本でこの人凄いなって思うDJやアーティストが沢山いるんですけど、そういった人達が国内だけでなく海外での活動に繋がるようなことを、何かしなきゃいけないなって最近思います。

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次ページ:。“トライ&エラー”それに尽きます。そうすればいずれ共感してくれる誰かが現れる。