――そこから「adidas Originals」と仕事をすることになるきっかけを教えてください。

イアンが当時「adidas UK」で働いていたギャリー・アスプデンという人を紹介してくれたんです。この人もマンチェスター出身で、僕の好きなイギリスのミュージシャンは殆ど知り合いでした。それで彼に「A BATHING APE®」でシューズを作れないかという相談をしたらドイツに話を通してくれた。それがきっかけで僕が「A BATHING APE®」を辞めた後、「adidas」でギャリー・アスプデンと同じ部署のトレンド・マーケティングを任されることになりました。影響力のある人にプレゼントしてPRしたり、イベントを開催したりするような仕事ですね。当時、日本にはまだこのポジションが存在していなかったんです。

――自身でブランドを始めようとは思わなかったんですね。

いや、それは思っていたんですが、(藤原)ヒロシ君に話したら「今は時期じゃない。どこかで自分のラインを持つほうがいいよ」とアドバイスされたんです。ヒロシ君みたいに知名度がある人なら出来るけど、僕に仕事が来るかな? と言う疑問もあったのですが、「じゃあ、そうします」と。まさにヒロシ君が「fragment design」でやっているような、自分が色んなブランドとコラボレーションする形式です。その後5年感ぐらい「fragment design」の仕事に携わらせてもらいました。それが今の自分の基礎になっているぐらい、良い経験をさせてもらいました。

――倉石さんが「adidas」時代に開催したもっとも印象深いイベントを教えてください。

スーパースター35周年のイベントでRHYMESTERやMUROさん、リー・ジョージ・キュノネス(映画『ワイルド・スタイル』の主演を務めたグラフィティ・アーティスト)が出てくれたのは印象に残っています。あと、「adidas」で僕のラインがスタートした時のローンチイベントでは、イアンがローゼズの曲を演奏してくれました。その日は、まだファッションにあまり進出していなかった東信さんがリーフマンという自身の作品に僕がデザインした洋服を着せたり、ORANGE RANGEのNAOTOがソロのdelofamiliaで出演していたり、トミー・ゲレロがアフターパーティで演奏してくれて……かなり盛り上がりましたね。

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――そういえば、イアンのアルバムにNAOTOが楽曲提供していたこともありましたよね?

実はイアンにNAOTOを紹介したのも僕なんです(笑)。

――当時そのコラボにはかなり驚いたのですが、まさか倉石さんが引きあわせていたとは! そうして「adidas」で仕事を続けながら、代々木で自身のショップ「Heather Grey Wall」をスタートしたのはなぜですか?

自分の事務所が入った物件があまりに広くて、それじゃ余ったスペースでお店でもやるかと。当時から「adidas」以外にも色々なブランドで働いていたので、そのアイテムたちをまとめて見せるような場所を作りたかったんです。

――2015年12月、「Heather Grey Wall」は原宿に移転してリニューアル・オープンを果たしました。その印象はゴリゴリの洋服屋というわけでもないし、いわゆる“ライフスタイル”系でもありませんよね。

ここは “お土産屋”にしたいんですよ。パリの「コレット」のようなイメージですね。洋服にシリアスになりすぎず、あくまで“面白い”という感覚を優先させています。そのために買いやすい価格というのも意識していますね。今は自分も洋服ばかりの気分ではないし。

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――なるほど。そんな倉石さんが個人的に今もっとも注目しているエンターテイメントは何でしょう?

『スター・ウォーズ』の最新作。視点が360度自由に変えられる予告編を観て、それだけで興奮しました。

――普段、けっこう映画は観るほうですか?

飛行機の移動が多いので。映画館にもよく足を運びますよ。

――2015年のベスト映画を教えてください!

ウェス・アンダーソンの『グランド・ブダペスト・ホテル』って2015年でしたっけ(※日本公開は2014年6月)……あれは良かったですね。あとはビーチ・ボーイズの映画。

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――ブライアン・ウィルソンの半生を描いた『ラブ&マーシー』ですね。せっかくなので、ベスト・アルバムも発表していただけますか?

うーん、迷うな……ナタリー・インブルーリアのカバー・アルバム(※キュアーやダフト・パンクなど、男性ミュージシャンのカバー曲のみを収録した『メール』)はよく聴いています(笑)。ブリット・ポップの頃からエコーベリーとかエラスティカとかの女性ヴォーカルが好きだったんで。彼女もその頃に“Torn”で売れましたよね。あと、デビューの時からファンだったリバティーンズのニューアルバムも聴いたんですが、さすがに昔は越えてこない。再結成のライブは観たいけど。

――今年もいくつかフェスには出ていましたよね。倉石さんって夏フェスとかは行かれるんですか?

凄く好きだし行くのですが、かなり軟弱です(笑)。本当は観客席のやや前方ど真ん中で聴きたいのですが、それよりも快適に過ごせる環境を選んでしまいます。ストーン・ローゼズが<フジロック>に出た時はステージ脇で観させてもらいました。ちなみに、イアンが着ていたファーストアルバムのカバー柄のジャケットは僕がデザインしたんです。お店でも売ったんですが、数が少なくてすぐになくなってしまいました。

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Heather Gray Wall

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TEL:03-5354-5577

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photo by Chika Takami