我々は、富と名声を追っかけるためにやってきたんじゃないんです

――これまで<HCW>をオーガナイズしてきて新たに気付いたこと、あるいは反省点などはありましたか?

もちろん恐ろしい部分もいっぱいあるんですけど、逆に素晴らしい部分もいっぱい見えて、本当にやってて楽しいですね。当日は忙しくて出演バンドのライヴをちゃんと見られなかったりもするので、悔しい思いもしますけど、それはまあしょうがないです(笑)。

――個人的には第1回目のザ・ホラーズが過去最高のライヴをやってくれたと思ってるんですけど、これまでプラグさんが見てきた<HCW>のステージで、もっとも印象的だったアクトは何でしょうか。

あの日のホラーズは本当に素晴らしかったですよね。前回の<HCW>で印象的だったアクトを挙げるなら、(アンド・ユー・ウィル・ノウ・アス・バイ・ザ・)トレイル・オブ・デッドの『マドンナ』再現ライヴですかね。これを観るためだけに、わざわざ海外から遊びに来た人もいたぐらいですよ! ちょうどアジア・ツアーで台湾、香港、韓国と回ってきた中で、<HCW>の出演日は最新アルバムのリリース直後でしたから、バンドもオーディエンスも凄まじい熱量でした。しかも、日本でやった翌日の日曜日にはテキサスに弾丸フライトという…(笑)。

――ファックト・アップと一緒に<Fun Fun Fun Fest>に出たんですよね。

そうです! そこは本当にニュー・アルバムのお披露目でもあり、自分たちのホームタウンだったわけですけど、その前に東京でやってくれたんですよ。もう、完全試合とも呼べるショウでした。正直に言って、<HCW>では良くなかったショウなんてひとつもないんですよ。それと、アンナ・カルヴィやヒア・ウィ・ゴー・マジックみたいに、今や欧米ではキャパ数千人の前で演るようなアクトを<HCW>の規模感でやれたっていうのは、我々にとっても自信にもなりましたね。

2013年の<Hostess Club Weekender>も豪華絢爛! 仕掛け人にして〈ホステス〉の代表プラグ氏の独占インタビューで明かされる、イベントへの想い feature130124_hcw_thehorrors_021

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――実際、世界的にもフェスティバルが乱立している状態ですよね。経済的理由で開催そのものがキャンセルになったり、目玉となるアーティストの奪い合いがあったり、昔よりも音楽イベントを成功させることは難しくなっていると感じます。そんな中で、東京を舞台にした<Hostess Club Weekender>だからこそ出来ることって何だと思われますか?

そもそも我々は、富と名声を追っかけるためにやってきたんじゃないんですよね。すでに〈ホステス〉というレーベルとして10年間あまりやってきてますし、東京という街ではそれ(富と名声)だけを追っかけてきたらやってこれなかった部分もいっぱいあると思います。特にこのイベントは、そういう意味ではファイナンシャルな成功を追っかけてやってるようなイベントではないです。ただ、自分たちが「正しい」と思ってることを信じて続けているだけ。そして、これを続けていくことがとにかく大事なんです。今後、もしかしたら軌道修正することはあるかもしれませんが、絶対に諦めることはありません。まあ、西欧の世界で起きていることと東欧で起きていることは全然違うので、温度差をなくすのは難しいですけどね……。だから、ちょっとだけ視点を変えて、やり方もオープンにして、間口を広げたいという気持ちがあるんです。

――今って洋楽の新人バンドだとなかなか来日公演がソールドアウトにならないんですよね。ましてや「東京一夜限り」でもチケットが余ってしまう…。でも<HCW>のようなイベントであれば、「バーター(抱き合わせ)」と言ってしまうと言葉が悪いですが、それなりに名の通ったアーティストと組み合わせることで新人にもライヴを見てもらえるチャンスが生まれる。実際、ウィリス・アール・ビールのライヴはすごかったですし(笑)。そのへんは狙い通り?

その通りです。今回の<HCW>のラインナップを上から下まで見てもらえばわかりますよね。たとえばヴィレジャーズは、あくまで個人的な意見ですが…1stアルバムでは何か約束されたものが見えてるんだけど、まだ掴みきれていなかった。で、2ndアルバムを聴いてみたらもう迷いがない。私の数あるコレクションの中でも本当に応援したいと思えるアーティストだし、ライヴも素晴らしいものを見せてくれると思いますよ。<HCW>は午後からスタートするイベントなんですが、まさに彼らのような若手が出演する最初の3~4時間ぐらいにミラクルが起きるんです。ウィリス・アール・ビールもイベントのスタート時間からいたオーディエンスにとっては、まさに「見っけもの」でしたよね(笑)。だから、<HCW>はヘッドライナーがすべてじゃないんです。

――なるほど。たしかにおっしゃるとおりですね。

アンナ・カルヴィの時も、ライヴが終わってからお客さんがアレコレ会話してるのが聞こえましたし、そういう未知数のアーティストをきっかけに会話も生まれるじゃないですか。<フジロック>に行っておきながら、「ケミカル・ブラザーズ見たかい?」っていう会話はあまりしないですよね(笑)? そういった予定調和とは無縁のイベントだという自負はあります。