——katyushaの活動全史って感じなんですね。

そうですね。ハタチから9年間の歴史が詰まってるんじゃないかなというか。

——聴かせていただいて、非常にドキュメンタルというか、生々しいなと。

そうですね(笑)。

——だからと言って女性の怖さともまた違うというか。

怖さというよりは弱さが前面に出てるのかなと。でももう大人だし、生きていかなきゃいけないっていう中で、這い上がる気持ちとかジタバタする気持ちの方が大きいのかなと思うんです。“I Like Me”は私が26ぐらいの頃に作った曲なんですけど、その時、まぁ多分、プライベートでなんかあったんでしょうけど(笑)、「I Like Me」ってフレーズが浮かんだ時に、やっぱり人って大事な人がいたり、好きな人がいたりとかして、その人のために何かできたらとか、生きられたらとか思うけど、結局、それを実行してみると最後は自分のためだけに動いてるんだな、みたいなことを思うことがあって、ふと思ったのがその言葉で。

これをちょっとテーマに書いてみようと。で、書いてみたらなんとなく今までの私の人生観というか、生き方にすごく通ずるものがあったので、じゃ、これをテーマにアルバム作ろうかなと。これをリード曲にして、曲をかき集めてみたら割とこのテーマに沿った内容になったので、すごい私らしいアルバムだなとは思います。

——10代だとまた違うでしょうし、20代の女性ならではの感情が詰まってるなと思いました。

そういう世界観の曲をハタチぐらいの時から書いていて、だけどライブする時に歌ってる本人はハタチそこそこの女なわけですよ。だけど、歌詞が妙に大人びていたり、声質もハタチそこそこの女にしてはちょっと老けてるなと自分でも自覚してたし、周りからも結構言われてて。「なんか若くないね」みたいな(笑)。だからずっと自分のやりたい音楽はこうなんだけどっていうギャップを感じてて、ハマってないなってモヤモヤした状態が20代前半はずーっとあって。

20代後半になって、曲の世界観に対する自分の年齢がだんだん合っていって、このアルバムを出せる近辺ぐらいで、ようやく重なり合ってきたなみたいな。で、多分、この先はそれがぴったり重なって、またこう遠ざかっちゃうんじゃなくて、一緒に年をとって、katyushaの音楽とともに私も年を重ねていくみたいな風にできたらいいなとは思ってるんですけど。

——30前ぐらいって、女性は一番悩むと思うんです。

一番ターニングポイントで、仕事面でも恋愛面でもすごい悩む。周りもどんどん結婚してて、子供がいてとか。で、友達の結婚式も呼んでくれるけど、こういう仕事してるからなかなか顔出せなくて。今、SNSが発達してるからそういう様子がすぐ見れちゃう。で、そこに自分がいないっていうことに、「私はやっぱみんなとはちょっと違う道を歩かせてもらってんだな」というありがたい気持ちと、そこに自分は昔はいたけどっていう、なんとも言えない虚しさがあるというか。

——そういう普遍的な20代後半の女性のリアリティが、今時のSNS的なテーマじゃなくて、恐らくいつの時代に聴いても「こういう部分、自分も重なるな」って共感する曲が多いと思いました。

ああ、嬉しいです。とても嬉しい。

——中でも特にピアノの弾き語りの曲が……。

どれが好きですか?ちなみに。

——“友達でいてね”。

ですよね? ははは!

——(笑)。これはみんな一度は思うことじゃないですかね。別れたけど微妙な距離感と心情といいますか。

結構だからなんだろうな? 表現がさっきおっしゃってくれたように生々しかったりとか、そういうのって20代前半の時ってそれをもうちょっと包み隠すように、ちょっと遠回しな表現をしてたりとかしていたんですけど、なんか大人になってくると若い頃に比べると、自分のプライベートも人に言わなくなってくるし、悩みとかも、基本的に私、人に言わずに自分で自己解決しちゃう方なので。人に相談したところで結局、話聞いて欲しいだけで答えを相手に求めてる訳ではなくて、結局自分で決めたことをやってしまうので。

——ですよね。

まぁなんか学生の頃って、喧嘩しただの、デートしただの、メール来ただの、いちいち報告するじゃないですか。そういうことが大人はだんだんなくなってくるんですよね。プライベートで全然言う必要がなくなってしまったことを音楽に変えて、そのリスナーの方に伝えてるんだなって。だから結構、直接的な表現が多かったりとか、生々しさとか、そういう表現はこの年齢になって増えた気がしますね。

——そしてサウンドプロダクション的にはピアノの弾き語りもあれば、「この部屋いっぱいに」のように複雑なバンドアンサンブルの曲もあり。

“この部屋いっぱいに”はかなりリズム隊のカッコ良さは出てるなぁって思います。私の曲、そんなに早い曲がないので、そういう意味では“この部屋いっぱいに”は“I Like Me”というアルバムの中ではすごいアクセントになってるのかなと思います。

——あと、ラストの“東京”の駅のホームや電車の情景と心情がクロスする歌詞も恋愛物とはまた違うリアリティを感じます。

この曲は、それこそ全然、事務所も決まんないし、全然CDも出せそうにないしっていう状況の中で新たに面倒見てくれそうなところが見つかって、そこに結構通ってたんですよ。で、私、当時千葉に住んでて、総武線の各駅停車の電車に乗って都内まで行って、で、その会社でデモのレコーディングとかして、でも結局、それがポシャったり、「できません」って言われたりとか、「もっと頑張んなきゃダメだよね」って口頭で言われたりとか、なんだろな? 結局、「ちょっといけるかもしれない」と思ってた自分がバカみたいだなぁと思いながら、途轍もない疲労感と虚無感で体を重くしながら帰るみたいなのを描いた曲ではあるんですけど。

【インタビュー】ゲスの極み乙女。でも欠かせない存在、えつこのソロプロジェクト「katyusha」。時代を貫く傑作『I Like Me』の全容に迫る pcd24678-700x700
アルバム『I Like Me』ジャケット

——ところで、えつこさんの中でロールモデルになってるアーティストっていますか? もしくは部分的な影響でもいいんですけど。

歌い方とかコード感だったりとか、影響をかなり受けてるのはaikoさんだと思いますね。歌詞で言っても、私自身が友達の歌とか、家族の歌とか、そういうのをテーマにした曲を聴くよりも、恋愛の歌を聴いて「わかるわー」と思って生きてきた人間だから、自分もそういう風なアーティストでいたいなぁと思ってるんでしょうけど。

——えつこさんに対して、リスナーもいろんなイメージを持ってると思うんです。DADARAYのフロントウーマンでもあり、ゲスやindigoの欠かせないサポートメンバーでもあり。その中でkatyushaはやはりえつこさんそのもの?

うーん……女子会みたいなもんですかね。音楽観としては。私が言いたいこと普段言わないぶん、それを歌詞に乗せて言いたいこと言って、それに対して聴いてくれる人が、「ああ、わかるわかる」とか、「いや、そんなことなくない?」とか、そういう考えを持ってくれればすごく嬉しいと思います。うん。

——これはきっと一人女子会が行われるんじゃないかと(笑)。

そうですね。女性の方に会社の帰りとかに、疲れた体にイヤホンかなんかで、電車の中や、歩きながら聴いてもらったりとか、家で一人、ちょっと部屋を暗くしながらでも。もちろん、男性にも全然聴いていただきたいんですけど。

——なんとなくの未練とかを罵詈雑言で終わらせないというか、それでも人生は続いて行くしなぁ、みたいなところがリアルです。

そうですね。それこそ私自身が生きて行くモットーというか、引きずりたい気持ちがないことはないけど、それもしょうがないから、そんなことして止まっててもしょうがない、もう生きていくしかないから、どうせ生きてくんだったら、まぁちょっとでもそんな自分を好きでいたいし、自信も持ちたいしっていう気持ちも込めて、“I Like Me”ってタイトルがハマってるなとは思います。自分をちょっとでも好きになって欲しいなと思う。

EVENT INFORMATION

katyusha 1st full album “ I Like Me ” releaseワンマンライブ – 歌えば尊し –

2017.12.16(土)
新宿MARZ

詳細はこちら

RELEASE INFORMATION

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text by 石角友香