――では、具体的に制作を始めた時のことを教えていただけますか。「こんなアルバムにしたい」という青写真のようなものはあったのでしょうか。

もともと、EGO-WRAPPIN’の時もそうなんですけど、私は作る前からコンセプトを考えたりはしないんです。森くんは考えてるかもしれないですけど、私は自然に出てきたものからバランスを取っていくという感じで。今回で言うと、最初に出来たのが“SCUBA”と“Ding Gong”と“大きな木の下”の3曲でした。これはもともとライヴでやったりしていた曲で、自分では今回のアルバムの中でも「激しいヴァージョン」というイメージなんです。でもアルバムをそういう曲ばかりにしたくもなかったんで、もっとメロウなものも作ろうと思って、“あのね、ほんとうは”や“濡れない雨”のような曲が出来ていったんですよ。

中納良恵 -“あのね、ほんとうは”

――確かに、“SCUBA”辺りは、四つ打ちのダンス・ミュージックと言ってもいいくらいの曲で、“あのね、ほんとうは”や“濡れない雨”のような曲とはだいぶ雰囲気が違いますね。

そうですね。“SCUBA”はサンプラーで声のサンプルから作っていった曲です。私はパソコンは苦手なんで、全部アナログで音を録って、それをパソコン上で散らしていったんです。それが結果的にエレクトロになったというか。名前は思い出せないですけど、昔からドイツとかの薄いテクノのようなものが結構好きだったんですよ。でも、そういう曲と“あのね、ほんとうは”のような曲の差が激しいというか。“濡れない雨”はニュー・ミュージックみたいですしね。それで、「全部出していいんかな?」って中村くん、菅沼くんに相談したんですよ。そうしたら、「音のバランスやマスタリングで調整していけば同じような色の曲になると思うから、出していい」ということで。今回はそういう部分を中村くんに調整してもらったり、ドラムの聞こえてくる位置とかを菅沼くんが調整してくれたりしたんです。

中納良恵 -“濡れない雨”

――なるほど。実際、前作よりも曲ごとにヴァラエティ豊かで、中納さんの色々な表情が見える作品になっているように思えます。ゲストの永積タカシさんや坂本慎太郎さんの存在もその雰囲気に影響を与えていると思いますが、このコラボはどう実現したんですか?

永積くんはフェスやTVで共演したこともありますし、もともと知り合いで。声も近いので、一緒にやらせてもらおうかな、と思った感じですね。坂本さんもフェスやイベントで一緒になったり、ライヴを個人的に観に行ったりもしていて、あの世界がめっちゃ好きなんで。それでお願いしたら快く引き受けてくださったんです。

――中納さんはお2人の音楽にどんな魅力を感じていますか?

2人とも正直なイメージがありますよね。私が思っているよりはそれぞれ考えてらっしゃると思うんですけど、どちらの音楽も一見平易にも聴くことが出来るけれど、実はとても繊細に作られていて。これは男の人と女の人の違いでもあるのかもしれないですね。男の人って細かいし、ものごとを点で捉えているというか。女の人の方がもっと感覚的で、ざっくりしていますよね。

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