――では、それぞれのコラボがどんな風に進んでいったかも教えてもらえると嬉しいです。

永積くんとの“beautiful island”は、曲も歌詞も作って、そこにギターと歌で参加してもらいたいなと思って、永積くんのスタジオに行ったんです。候補はもともと何曲かあったんですけど、甘い感じが合うのかなと思ってこの曲にしました。私のソロということでこっちを立ててくれて、私の世界観を尊重して気持ちよく泳いでくれたんで、いい感じに仕上がったと思います。永積くんにはギターと歌で参加して欲しいということだけお願いをして、あとは自然に進んでいきましたね。最初に私が作った曲のイメージに寄り添うような感じでした。この曲では寒い国の雰囲気を出したかったんです。

――寒い国だからこそ見える温かさと言いますか、そういう雰囲気を感じる曲ですね。

そうそう、そういう感じを出したかったんです。

――坂本さんが歌詞を提供した“写真の中のあなた”の場合はどうでしょう?

坂本さんは、私が「ラララ」で歌ったデモを送って、そこに歌詞を当ててくれたんです。「何かイメージないですか?」という感じで、世界観も坂本さんにすべて丸投げして。それで返ってきたのを聴いて感動しましたね。自分からは出てこない言葉だったし、また違うものになっていたんですよ。私は音に言葉を置いていく感じなんですけど、坂本さんはストーリーをバンッと投げてくる感じで、それにつられて曲も長くなって。最初は2番はなかったんですよ。でも歌詞につられて曲が変わっていく感じでした。なんか、足が生えたというか(笑)。

それで、せっかく頂いた歌詞なんで、弾き語りで潔くやりたいと思ったんですけど、これがなかなか大変で(笑)。練習しても追い付かなくて、「坂本さん、これ……大丈夫ですかね?」って訊いたりもして。そうしたら、「そんなこと言わないでくださいよ。もっと自信持ってくださいよ!」と言われました。こっちから頼んだくせに、相手に「自信持ってくださいよ」って言われるという(笑)。

――ははは(笑)。ちなみに、中納さんの中で今回の鍵になるような曲はありましたか?

それはもう、全部ですね。全部の曲が好きですし。私の中では、今回の曲はすべてポップ・ソングだと思っているんです。歌謡曲とはまた違うと思うんですけど、ポップ・ミュージックとして聴けるものにしたいという気持ちがあって。だからアレンジも出来るだけ聴きやすいようにして、難しいことは考えないようにしました。バンッと出てきたものをバンッと出すというか。たとえば“あのね、ほんとうは”にしても、始めのコードとメロディの流れは悩みましたけど、後はおもちゃ遊びのような感じで、自由に作業していったんです。

――――その自由度というのは、前作『ソレイユ』よりも上がってきていると思いますか? キャリアを重ねたことでそれが出来るようになった、という部分はあるでしょうか。

そうですね。前のアルバムよりも全部自分でやったというのもありますし、それが出来たのはやっぱり、前作からこれまでの7年間にEGO-WRAPPIN’で培ってきたものがあったからこそだと思います。ソロではバンドでは出し切れないことをやりたかったんです。たとえば、歌がちゃんと聞こえるようにするというのもそうなんですよ。もちろん、EGO-WRAPPIN’にも歌はありますけど、EGOの場合ってそれだけではないと思うんですよね。歌も音の一部という感じがあって。

――確かに、EGO-WRAPPIN’では、歌を生かすというよりも、中納さんの歌と森さんのギターが戦っているようなイメージを感じる瞬間があります。

そうなんです(笑)。だから、ソロではもっとストンと出してしまおうと思って。このアルバムではとにかく、自分が今やりたいことを全部出し切ってしまおうと思ったんです。

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