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単なる“視覚”や“聴覚”といった概念では割り切れない、音から見える景色もあれば、絵から聞こえる音もある。人間の持つ感覚にあるポテンシャルを引き出すべく、サウンドとアートワークをリンクさせ圧倒的なオリジナルを提示することに、並々ならぬこだわりを見せてきたバンド、NOISEMAKERが、ミニ・アルバムとしては自身6枚目となる新作『RARA』を完成させた。

まずはその音楽性について。小細工なしのタフで人間臭いバンドサウンドを軸に、エフェクトを駆使しエレクトロやヒップホップなど異ジャンルの要素なども取り入れることで生まれる、柔軟なグルーヴや繊細で美しいサウンドスケープの融合。『RARA』は、これまでにNOISEMAKERが打ち出してきたスタイルを、もう一段階アップデートした“成長し続ける”彼ららしい作品だ。

そして『RARA』はそのサウンドだけでなく、ジャケットのアートワークにおいても、NOISEMAKERの新たなフェーズを示している。彼らがあくなき挑戦を続けてきたからこそ、念願のアーティストを口説き落とすことに成功したのだ。AG(ボーカル)とHIDE(ギター)の兄弟が、ストリートアートの世界にのめり込み、DIYでバンドのグッズやレコードジャケットのデザインなどを手掛け、2018年に入ってからはバンドとはまた別に、アートだけにフォーカスしたアートプロジェクト「DOTS COLLECTIVE」を結成。ライブペインティングや個展などを開催するまでに至ったストーリーのルーツだという、そのアーティストの名はWK Interact(以下、WK)。

人物の動きを収めた写真をもとに、モノクロのインクを使って壁などに絵を描くスタイルで世界中から注目されている、フランス出身ニューヨーク在住のアーティストだ。

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女性らしき人物が、アナログな機械を持って、どこかと交信しているような姿からは、まさにNOISEMAKERの“NOISE”が聞こえてくるよう。シンプルで強靭なインパクトを持ちながら、よく見ると細部にまでさまざまな情報が詰まっているところもまた、NOISEMAKERのサウンドとばっちりリンクしている。そして今回は、単にWKが作品のアートワークを手掛けた、ということだけにとどまらない、ビッグな企画が決行された。なんと、このジャケットの絵そのものを、渋谷桜丘にあるビルの約12メートル四方の壁面に、WK自身が描くという情報を入手した我々は、さっそく現場へと向かった。

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プロジェクターを使って巨大な壁に作品を拡大して投影し、まずは下絵を完成させる。そこにWK自身と彼の指示を受けた作業員たちが、クレーン車に乗って筆で色を入れていく。近くで見ると、全体の大きさに対して、手のひらサイズにまで分けられ繊細なタッチが求められる箇所も多くあり、そのこだわりを強く感じると同時に、技術的に既存の編集ソフトやプロジェクターを使うだけで、ここまで細かくはっきりと下絵が描けるものなのか、という疑問も出てきた。これはWK自身に話を聞いてみようとコンタクトを試みると、彼は快くOKしてくれた。

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Interview:WK Interact

——よろしくお願いします。

(作業用のバンの後部に座って)僕のオフィスへようこそ。

——いつもこうして車で移動しているのですか?

アメリカではもっと大きな車だよ。日本は道が狭いしね。ギャラもそんなにもらってないから、寝泊まりもここでしているよ。昨日は女の子を5人を呼んだんだ。冗談だよ(笑)

——(笑)。今回なぜNOISEMAKERのジャケットを手掛けようと思ったんですか?

彼らの音楽を聴いて、ミュージックビデオを観てかき立てられたんだ。すごく衝動的に「やりたい」と思った。だから、ただジャケットのために絵を描いただけで終わりにはしたくなくて、こうして実際に日本に来て、彼らに会って、ここに描いてる。お金を払ってでもでも来たかったんだ。まあ、そこは払ってないけど、それくらいの気持ちの表れが車をホテルにしてるってことさ。してないけどね(笑)。

——わかりました(笑)。あなたの作品が渋谷の街のど真ん中にあるのは、素晴らしいですね。

渋谷は面白いよね。昼は多くの人がここで働き、夜はみんながあちこちでパーティをしている。白と黒がはっきりしたミニマルな街。そういう意味では僕のモノクロの作品とはコネクションがあるよね。でも、渋谷はそのミニマルななかに、いろんなカルチャーがうごめいてるだろ? 最高にクレイジーな街だよね。そこも、この絵とマッチしているように思う。ここに描いた女の子は、情報が溢れるソーシャルメディア、すなわちスマートフォンなどを使うのではなく、レコーディングシステムを持ち歩いていろんな音を録音して集めることで生きている。“ムーブ・オン”のなかでは、みんながアーティスト。そこにある情熱を感じてるんだ。

——12メートル四方の壁に画像を投影するやり方で、かなり細かいところまで描かれていますが、既存の処理ソフトでここまでできるものなんですか?

それはね、独学で研究した企業秘密(笑)。一つ言えることは、コンピューターはほとんど使ってないってことだね。

——今回はモノクロの世界のなかで、NOISEMAKERのバンド名は赤色ですが、意味はあるのですか?

結果的にだけど日本っぽいよね。でも日本の旗は素晴らしい。あの赤は、小さな島国でありながら、そこにあるすさまじいエネルギーを表しているように僕は感じるんだ。実際に素晴らしいカルチャーが日本にはたくさんある。

——時代を遡ると、ストリートのアートはイリーガルという視点や、アカデミックなアーティストからの目線との戦いでもありました。今はどうなんですか?

どんどん大きくなってる。今はもはや“ストリートアーティスト”という言葉自体がないくらいに。ほんとうに素晴らしいことだよね。でも日本はそうやって描ける場所が少なすぎると思うんだ。壁はたくさんあるのに、広告のポスターとかそんなのばかり。昔は日本こそが前を走ってるようにも思ってたんだけど、今は遅れてる。今回僕が描いたこの壁は、来年には取り壊されるって聞いたけど、これがNOISEMAKERや見てくれた人の心に残って、何かいい影響を及ぼすようになればいいね。

——そう思います。

そうやって自信を持って言えるくらい、いい仕事をさせてもらった。もしかしたら、日本の人は謙虚だから、僕に“やってもらった”と思ってるかもしれないけど、まったくその逆。だってさ、空港に僕を待っている人たちがいて、旗を振って迎えてくれるのなんて日本だけ。僕のアートは内に籠るものではなくコネクションだから、その時点ですでに作品の制作は始まってる。そして、NOISEMAKERとこの作品に触れてくれた人たちがいて完成するんだ。

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インタビューが終わってレコーダーを置いてからも、WKはずっと日本のことを話していた。こちらから「日本のファンはどうですか」というテンプレート的な質問は一切していない。それでも、日本を称えたり都心部で彼の思う日本らしさが薄れていることを寂しがったり。海外から見た日本の、日本人のアイデンティティを彼は心から愛しているのだろう。自らのアートを“コネクション”と言うその意味が、作品からも立ち振る舞いからも、ひしひしと伝わってくる。そんなWKとの仕事について、NOISEMAKERのメンバーにもインタビューをおこなった。

Interview:NOISEMAKER

——まずは『RARA』の音楽的なことについて、話しを伺いたいと思います。あくまでもロックバンド然とした人力のパワフルなサウンドに比重を置きながら、エレクトロニックやさまざまなロック以外からの音楽的要素も取り入れられて、アップデートされていることに刺激を受けました。

HIDE オールドなロックのサウンドと、そこと対極にあるエレクトロや今のポップの要素をどう混ぜ合わせるか。そこで、例えばレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン(Rage Against The Machine)がもしエレクトロを採り入れたら? みたいなが発想のもとにあるんで、そう感じられたんだと思います。バンドらしさ、そこにある生々しさが失われたものにはしたくないんです。

——そこのバランス感覚が絶妙。

AG バンドのメンバー以外の作家やプロデューサーが悪いとは思わないけど、そこに委ねすぎちゃってるのか、世界中のいろんな音楽がコピーに聞こえるんですよね。僕らは、HIDEがプロデューサーとして立って、4人で徹底的に作り上げてるんです。NOISEMAKERの音とは何なのか。そういうアプローチが伝わればいいなって。

——例えば、エレクトロでダンサブルな曲でも、スマートには叩かずにパワードラムを捻じ込んでる。そこに覚える高揚感がたまらなくて。

UTA ドラムパターン自体は全体的にすごくシンプルで難しいことはしてないんですけど、そのなかで、おっしゃるようにごり押しでパワーを入れた部分も多いです。だからそこを感じ取ってもらえたのは嬉しいですね。

——そして、そういったパワフルで生々しい側面もありながら、実に美しいサウンドスケープも見える。その緩急はさすがだと思いました。

HIDE 基本的に根っこにあるものは変わらないんですけど、そこにプラスアルファ、何ができるか。ヘビーなバンドはどんどんヘビーになっていくし、エレクトロを採り入れても同じような感覚でカテゴライズされるようなものが激化していく時代の流れのなかで、“To Live Is”で言うと、もろにU2を意識したクリーンサウンドを入れてるんです。そういうどこか懐かしいテイストを加えるとか、いろんなことを自然にやれてるのは強味だと思います。

——『RARA』というタイトルには「誰しもが特別な人」という意味があるということですが、まさにそのメッセージを自らが体現した、価値のある作品だと思います。

AG 音もそうだし曲もそうだしアートワークも、自分たちでとことん考え抜いてやってる意志を、本気を伝えたいんです。NOISEMAKERにしかできないことが詰まっていると思います。

——今回はアートワークをWK Interactに依頼したわけですが、それはなぜですか?

AG 僕が10代の頃、WKの絵に衝撃を受けて、彼の作品集を買ったことがきっかけで、どんどんストリートアートにのめり込んでいったんです。だからNOISEMAKERを始めた時からずっと、いつかWKにジャケットの絵を描いてもらうことを夢見ながら、自分で描いたり、DOTS COLLECTIVEというプロジェクトを立ち上げて個展をやったりしてきました。その個展で僕らのことを気に入ってくれた方がWKと知り合いで、そこから繋がることができて、想いが伝わったんです。

——WKとは、どのようにやりとりしてこの絵ができたんですか?

AG 音源とリリックとアルバムのテーマを伝えて、あとはおまかせしました。この女性が機械でいろんな音を録音して、自分のなかで欠けてしまった何かを取り戻していく。そこで重要なのが僕らのコンサート、というイメージらしくて。めちゃくちゃ嬉しいです。

HIDE すごく細かいところまで描かれてますよね。きっとまだ僕らにもわからない隠されたメッセージがあると思うし、まだ完成したばかりだから、もっとこのジャケットを楽しみたい。あとは、プロジェクターを使って絵を拡大して壁に投影するやり方とかは、僕らが大きな場所に描くことがあったら、と考えると、また一つ大きな勉強になりました。

——愚問かもしれませんがあらためて、なぜそこまでアートワークにこだわるのでしょう。

AG 自分たちのルーツがそこにあるんです。90年代とか2000年代、リンキン・パーク(Linkin Park)やリンプ・ビズキット(Limp Bizkit)、インキュバス(Incubus)、ランシド(Rancid)、挙げればたくさんのバンドがいるんですけど、アートと音が密接で、メンバーが個展を開いてるバンドもいる。そういうストリートのアートと音楽の関係性が具現化された表現を、リアルに食らってきた世代ですから。

——バンド名や曲からジャケ写が頭に浮かぶ。その逆も然り。そこで、おっしゃったようなバンドの文脈を辿っても、今の国内シーンを見渡しても、今作の音に対してこのアートワークの組み合わせって、私の知識だと近いものが見当たらない。でも不思議と腑に落ちるんです。それは、過去に対するリスペクトと、新たなものを生もうとする意欲の賜物なのかなと。

HIDE ありがとうございます。当時タギングとかスプレーアート、流行ってたじゃないですか。そこと音楽が確実にリンクしてた。僕らはそこに受けた衝撃を大切に、変わらずにやってきた。その結果なのかなと。

AG 実際にスプレーで描く、筆を落とすって、やっぱりカッコいいじゃないですか。

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——出会いって、言うまでもなくとても大切。それによって感性が豊かにも乏しくもなる。まあ何が豊かで乏しいかは判断が難しいですし、本人が幸せならいいのかもしれないですけど、正直、そこでコンビニエンスなものが多すぎる気はしています。そんな世の中で、NOISEMAKERのやることは信じられる。だから若い人たちにこのCDに触れて、聴いてみてほしい。

UTA そうですね。若い人たちに見てもらって感じてほしい絵ですよね。

YU-KI 僕もWKのことは知らずに、AGとHIDEの描く絵はすげえなって思ってたんです。で、あとからWKの存在を知って、なるほどって。“不思議だけど腑に落ちる”っておっしゃったじゃないですか。もしかしたらそれは、ルーツがしっかりあったうえで、いろいろと開拓していくことで、ロックがどうとかメタルがどうとか、そういうことを超えて“NOISEMAKER”というジャンルの音とアートのリンクが生まれたってことなのかもしれない。だったら素晴らしいことだし、多くの人に感じてもらいたいですね。

——そうやって、自らをどんどん更新していくNOISEMAKERが、WKと組むという大きな出来事を経て、これからどうなっていくのか。すごく楽しみです。

YU-KI 今度はWKから仕事を依頼されるくらいになりたいですね。

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——海外に出ていくことにリアリティは感じてますか?

HIDE 影響を受けているのは海外の音楽がほとんどですけど、それだけでなく、バンドとしてのオリジナリティとかアイデンティティを常に探してるんです。そこで思ったのが、輸入されてきたものの猿真似みたいに思われるようなことをするのではなく、日本のバンドとして出ていきたいということ。今回歌詞に日本語を入れたのも、日本で売れるためじゃない。

AG 自分の血とかルーツを考えたときに、2か国語を使うというのはスペシャルなこと。英語圏のバンドは英語だけだし、そのアメリカやイギリスの音楽に影響を受けた母国語の異なるバンドが、2つの言葉をエモーショナルに使えてたら、素晴らしいじゃないですか。

HIDE そこで今回、この『RARA』を聴いてくれたWKが、ジャケットの制作を引き受けてくれたことも一つの結果かもしれません。その前に、DOTS COLLECTIVEというチャレンジがなくて、ただ憧れてて頼んだってだけなら、この話はリアリティがなかったかもしれないし、やってきたことって繋がって膨らんでいく。だから、これで満足して終わりではなくて、さらにどんなことをやっていけるか。前を見て考えていきたいと思います。

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確かに、HIDEが言うようにただ“好きだった”と言うだけなら、極端でひねくれた見方をすれば、これだけ情報が溢れている社会なら、あとからいくらでも調べて語ることができる。スタッフが描いた絵図に乗っただけとも、とらえられなくもない。

しかし、彼らには憧れを実践してきた強さがある。おそらくはWKもそこにある真の熱意を感じ取ったからこそ、本来なら企画立案から完成までかなりの日数を要するであろうプロジェクトに対して、来年2019年の1月にリリースする作品のレコーディングが終わって、この年末までの超短期間ですべてを決めて来日したのだろう。

NOISEMAKERとWKの“本気”が詰まったこの『RARA』が、本人たちの手を離れて今後どう育っていくのか、誰にどんな影響を及ぼすのか、楽しみで仕方がない。

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Text by TAISHI IWAMI

Photo by 横井明彦

RELEASE INFORMATION

RARA

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2019.01.23
NOISEMAKER
¥1,800 (taxin)
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EVENT INFORMATION

RARA ツアー

2019.02.10(日) 千葉 LOOK
2019.02.15(金) 金沢 VANVAN V4
2019.02.17(日) 札幌 BESSIE HALL
2019.02.18(月) 苫小牧 ELLCUBE
2019.02.20(水) 仙台 enn2nd
2019.02.23(土) 岡山 CRAZY MAMA 2nd
2019.02.24(日) 名古屋 APOLLO BASE
2019.03.02(土) 福岡 QUEBLICK
2019.03.03(日) 高松 TOONICE
2019.03.08(金) 水戸 LIGHT HOUSE
2019.03.09(土) 静岡 Sunash
2019.03.10(日) 京都 MUSE
2019.03.16(土) 大阪 CLUB DROP
2019.03.17(日) 神戸 太陽と虎
2019.03.24(日) 渋谷TSUTAYA O-EAST※ツアーファイナルワンマン
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