——<PLAY TODAY fes>を開催して、具体的にはどんな課題が見えてきましたか。

高波 フェスだけではビジネスモデルとして圧倒的にダメだな、ということを痛感しましたね。彼らの音楽活動だけでなく普段の仕事や生活も含めての経済活動までを動かすには、もっと色んなことをやらなければいけないし、全然足りてないな、とすごく感じました。そのひとつのきっかけとして、<PLAY TODAY fes>でも、ライヴと同時に出演アーティストそれぞれの地元にちなんだ物産展を開催していたんです。地域に寄り添っているミュージシャンや、地域の職人の方たちを含めて、一緒に出来ることを考えるというか。

——音楽と物産展を融合させるというアイディアはとても面白いですよね。当日のライヴだけではなくて、その外側にも広がっていくものがあるというか。

落合 たとえばロックとかハウスとか、音楽には色々なジャンルがあって、その中でも色んなサブジャンルに分かれていますよね。それに、今だとデジタルで買うこともほとんどで、検索してもアーティスト名が分からないと新しい音楽に出会うことって意外となかったりもする。その時に、ジャンルで絞ってもあまりに広すぎると感じる瞬間もあって。それなら、必ずみなさんどこかのご出身だし、手段のひとつとして、出身地で区切る方法があってもいいんじゃないかと思ったんです。ある意味、ミュージシャンもそれぞれの地元から生まれた物産のひとつかもしれないですし。そう考えると、音楽と食べ物という一見違うものでも、実はそう遠くはないんじゃないかな、と思ったんですよ。

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——ああ、それが「甲子園」のイメージに繋がっていくわけですね。

高波 そうなんです。それに、地元のものを言葉や音楽でミュージシャンが広げることが出来れば、それって地域の広報活動にも繋がっていくじゃないですか。

落合 メジャーなアーティストの方が地元の広報大使をやられていたりと、もともと(「音楽」と「出身地」には)繋がりがあるはずだし、それを全国規模で考えるフェスがあってもいいんじゃないかな、と。それは海外も同じなので、今後はその可能性も含めて考えていこうと思っていますね。課題は多かったですが、当日これまで知り合ってきたミュージシャンたちがリキッドルームの舞台に立って、お客さんと出演者が一体になっているのを観た時の、「よかったなぁ」という思いはすごく残っていて。同時に「彼らをもっと大きなステージで観てみたい」という、欲のようなものも出てきました。

——なるほど。15年はその後も色々なフェスを企画していましたが、振り返ってみて、2人の記憶に残っているのはどんなものでしたか?

落合 <PLAY TODAY music festival 2015>も印象的でしたし、あとは、規模の大きいところだと岐阜県大垣市で開催した<POST>もそうですね(出演は篠崎愛やDE DE MOUSE×山口崇司、SILVAらに加え、アフターパーティーに真鍋大度やTomadなど)。話を進めていくと地域の方々からの強い思いも感じて、「なぜ岐阜でやるのか、開催したらどうなるのか」というストーリーを作るのが本当に大変でした。「岐阜って何があるんだろう?」という人もいるでしょうし、そもそも漢字が書けない人もいるはずですし。でも、岐阜にはその土地ならではのよさがあって、実は日本でトップクラスの宇宙産業の拠点でもあるんです。そこで、地域で区切るものとは違うイベントを作ろうと考えた時に、テクノロジーというキーワードが出てきたんですよ。おかげさまでお褒めの言葉も沢山いただくことができました。

——アフターパーティーも含めると20時間もあるイベントだったんですよね?

落合 それに加えて設営と撤収の作業もあったので、本当に大変でしたね(笑)。

高波 でも、大垣は岐阜から少し離れていて、アフターパーティーにはクルマを使わないと簡単には来られないはずなのに、駅からみなさんがどんどん会場に向かって歩いてくれたりもして。

落合 会場もすごく盛り上がっていました。日中に真面目なビジネスシンポジウムやテクノロジーフェアがあって、そのギャップもよかったんだと思います。ひとつひとつ単体よりも、3つ集まったことで面白くなったというか。出演して頂いたミュージシャンの方々も、多様的な働き方をしている人にお声がけしたんです。たとえば、アーティストとして活動しながらタレントでもある篠崎愛さんもそうで、それが唯一の選考基準だったのかもしれませんね。

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——お話を聞いていると、『PLAY TODAY inc.』さんの活動からは、「異なる場所にいる人々や、様々な種類の人々を繋げたい」という思いが感じられるような気がします。

高波 やっぱり、結局は「人」だと思うんですよ。

落合 根本は、僕や高波自身が楽しいと思えるものを形にしているわけですし。

——高波さんがミュージシャンで、落合さんがデザイナーで、音楽とデザインが集まることで生まれる可能性を感じた瞬間もありましたか?

落合 そういう可能性があると分かっていながらも、現実問題クライアント・ワークに追われてしまったのが15年だったんです(苦笑)。でも、実はこの間合宿をして来年以降の事業計画を組んだんですが、16年以降は『PLAY TODAY inc.』としてハコを設けようと思っています。なので、そこで試していけることがあるのかな、と考えていますね。

高波 ミュージシャンやクリエイター、そして色んな人たちが自由に「PLAY=遊ぶ」できる環境や、「そこで日々色んなことが起こっている」「そこに行けば新しいものが掴める」、そんな場所を作りたいんです。そのために、音楽もデザインも、その他のものも含めて空間をデザインしていくというか。日々遊べるようなものが、仕事になっていけばいいと思いますしね。

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