ポスト・パンクを代表するバンドであり、パンク、ニューウェーヴのヒストリーにおけるマスターピース……それが、ザ・ポップ・グループだ。

ザ・ポップ・グループは、1979年にファーストアルバム『Y』をリリース。ファンクやフリージャズ、土着的な音楽からの影響を感じさせるフリーキーなリズムに、強いメッセージ性を有した歌詞を乗せたそのサウンドは、今尚、後続のミュージシャンに多大な影響を与え続けている。

その後も革新的な作品をリリースし続けるが、81年に解散。ニューウェーヴの黎明期を駆け抜けた、まさに”伝説”のバンドとなった。

しかしながら、ザ・ポップ・グループは、2010年に劇的な復活を果たす。リユニオンしたバンドは、2011年の<SUMMER SONIC>で待望と驚きの初来日公演を行い、現在に至るまで世界各地でライヴを繰り広げている。

更に、今年の2月には実に35年ぶりとなるニューアルバム『シチズン・ゾンビ』を発表。そのリリースを受けて3月に行われたバンド初の単独来日公演は、チケットが早々とソールドアウトになるなど、現在進行形のバンドに対するファンの期待値の高さを感じさせるものとなった。

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『シチズン・ゾンビ』ジャケット

そして、12月には早くもザ・ポップ・グループの再来日が決定。

現代の音楽シーンに甦った革命家として、刺激的かつ精力的な活動を行っているザ・ポップ・グループ。バンドやニューアルバム、そして、目前に迫った来日公演についての話を聞くべく、バンドの中心人物であるマーク・スチュワートに、メールインタビューを行った。

The Pop Group – S.O.P.H.I.A.

Interview:The Pop Group(Mark Stewart[Vo])

——今年の3月に行われた来日公演はいかがでしたでしょうか?

実際のところ、前回日本に来たときはアルバムがリリースされてまだほんの数日しか経っていなかったから、新曲は数曲しか演奏できなかった。昔の曲の方が多かったくらいだ。その後で世界中をツアーで回って、フェスティバルにもたくさん出て、その頃とは全然違うセットになっているし、新曲にもかなり手を加えた。俺たちは“ゾンビ・オペラ”って呼んでいるんだが、あの時とは違う今の俺たちのライブを是非もう一度日本のファンに観てもらいたいね。

——日本のファンの印象についてもお聞かせください。

日本人は昔からずっと俺たちザ・ポップ・グループをサポートしてくれているし、俺たちもネオ・トーキョーに出現したたくさんのバンド、ハイライズや灰野敬二、それに前回オープニング・アクトをしてもらったKK NULLなどの革新的なアーティスト達にインスパイされてきた。俺に言わせれば日本のオーディエンスは世界でもっともオープンな感性を持っているよ。間違いないね。

——2008年にマーク・スチュワート+ザ・マフィアとして<FUJI ROCK FESTIVAL(以下、フジロック)>に、2011年にはザ・ポップ・グループとして<SUMMER SONIC(以下、サマーソニック)>への出演を果たされています。日本のフェス出演時に、何か記憶に残っている特別な出来事はありますか?

<フジロック>ではグランドマスター・フラッシュのショーを見ることができたことと、ここ最近全然会ってなかった古い友人のトリッキーと一緒に朝飯を食べたことが俺にとってのハイライトだった。<サマーソニック>では俺みたいにでかい図体で暴れまわっているハウス・オブ・ペインの連中と久しぶりにつるめたのが最高に楽しかったな。

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——ザ・ポップ・グループが再結成に至るまでの経緯を改めて教えていただけますか?

あの最高の漫画『シンプソンズ』の原作者のマット・グローイングが、あるフェスティバルでキュレーターを頼まれて、彼は誰でも好きなバンドを選ぶように言われた。それで彼はイギー・ポップにザ・ストゥージズを再結成するように依頼し、俺たちにポップ・グループを再結成してくれないかと言ってきたんだ。それで、今の俺たちがあるってわけさ! いやしくも俺たちみたいな変人たちがポップ・グループの名のもとに集結して、反体制側の意見の代表者としてもらえる事に心から感謝しているよ。

——35年ぶりの新作『CITIZEN ZOMBIE』ですが、制作時にバンドに特別なインスピレーションを与えたアーティストや作品はありますか?

俺個人的には最近ハイファイ・ヒップ・ホップやらジューク/フットワーク、トラップなんかを聴きまくっているから、そういった新しいダンス・ミュージックのベースとキックのポジショニングにはかなり影響されていると思う。今、ベルリンのベルクハインみたいな世界最高クラスのダンス・クラブで、まったく新しい低音域のフォーマットが急速に発展しているからな。

——バンドの解散後、急激にテクノロジーは進化を果たしました。そうした音楽シーンの変化が新作アルバムの制作に与えた影響はありましたか?

俺たちが(『CITIZEN ZOMBIE』のプロデューサーである)ポール・エプワースが新しく作ったスタジオを一番最初に使わせてもらったんだ。まるでスタートレックのUSSエンタープライズのデッキみたいなスタジオで、ポールは、最新の機材を完璧に使いこなしていたよ。まさにかつてダブ・プロデューサー達が機材を駆使してハイハットをレーザー・ビームみたいに、バス・ドラムを爆弾みたい鳴らしていたようにね。

——バンド解散後のメンバーそれぞれの活動や、そこで得たヒップホップやテクノといった新たな音楽要素は、再結成後のポップ・グループに何かしらの影響を与えましたか?

さっき挙げたようなヒップ・ホップやダンス・ミュージックもたくさん聴いているけど、同時に(ブラジルのロックバンドである)オス・ムタンチスやダークなアンビエント・ミュージック、それにクンビアなんかも大好きだからね。思うにこのバンドは、メンバー全員が地球上のさまざまな音楽の探訪者みたいなもので、いつでも自分たちのパレットに加えられそうな新しい色の音楽を探しているのさ。

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photo by TEPPEI

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