––––あなたの音楽的背景をおしえてください。どんな風にしてダンスミュージックと出会い、キャリアをスタートさせたのですか?

僕はロンドン南部の郊外で生まれ育ったんだけど、若い頃はダンスミュージックに無茶苦茶にされた(いい意味で)思い出しかないよ(笑)。10代の頃イギリスではエレクトロミュージックが爆発的に流行っていたんだけど、SOHOのアートディレクターだった僕の親父が、その時のダンスミュージックシーンをけん引していたアーティストたちと一緒に仕事をしたんだよね。だから幼い頃から僕の周りには日常的にダンスミュージックが溢れていたんだ。そしてある日親父がプレゼントしてくれた『Wildstyle』のサウンドトラックが僕の人生を変えることになったんだよ。それはもう今でも思い出せるほど衝撃的にかっこよくて、それからというもの僕はブレイクビーツカルチャーを筆頭に、四つ打ち音楽全般に傾倒し、まさに虜になってしまった。ありとあらゆるダンスミュージックのレコードを買い漁って、飽くことなく朝から晩まで聴き続けていたよ。それまで美術で食っていこうと思っていた僕は、その後出会ったハウスミュージックに大きな衝撃を受けて、音楽家への道を選ぶことなったんだ。小さなクラブでDJデビューを果たした僕は、90年代のすべてを膨大な数のDJギグとパーティ体験に費やしたんだよね。また友人と共同で小さなスタジオ持っていて、よく分かってないながらも、楽曲制作のはしりもそこからスタートし、今の僕の基盤を作ったと言えるんじゃないだろうか。ただね、そのスタジオでは本当の意味での僕のオリジナリティが込められた音をクリエイトとすることはできなかったんだよ。1999年にブライトンに引っ越して自分のスタジオ持ってから、他人に干渉されることなく100%自分の感性だけで作った音楽をクリエイトできるようなったんだ。そこからキャリアというものをスタートさせることができたんだよ。

––––ある意味完成の域に達しているように感じられるRadio Slaveの音楽ですが、ここ何年かで変化などはあったのでしょうか?

昔のスタイルに戻ってきている感じがするよ。モダンかつ未来的なサウンド、つまりテクノミュージックのあるべき姿だね。

––––DJの役割ってなんだと思いますか?

パーティはいろんな環境で開催されるよね。大箱だったりアンダーグラウンドなウェアーハウスだったり、野外だったり。だからこそその日、その場に合うのはどんなバイブレーションなのかを把握して、それをそのDJの個性を反映させたトラックで紡ぎながらクリエイトしていくこと。その結果出来上がる空間は、クラウドの心をオープンにするものでなくちゃいけない。それがDJの役割だと思う。とてもシンプルなタスクだけど、いつなん時でもその状況を作れるようになるには、とてつもない訓練と鍛練の上にできあがる知識=経験値が必要。だからDJは難しいし面白い。鍛錬の結果得ることのできる知識=経験値はクラウドの心をオープンにする鍵(キー)になる。The Best DJって呼ばれている人たちはすべての音楽に対する幅広い見識と、さまざまな扉を開けることができる鍵を持ってるんだと思うな。

次ページ:最近のお気に入りのトラックトップ5は?