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夜限りのプレミア・ショウ<THE FREEWHEELING YO LA TENGO>開催のため、11月にひさびさの来日を果たしたUSインディの至宝、ヨ・ラ・テンゴ。<THE FREEWHEELING YO LA TENGO>とは、数年前から本国アメリカを中心に行われているスペシャルなショウで、オーディエンスの質問に答えながら、その内容に合わせてその場で演奏する曲目を決め、セミ・アコースティックのスタイルで演奏していくというもの。会場となったラフォーレ・ミュージアム六本木では、椅子席の和やかな雰囲気の中、「影響を受けたミュージシャンは?」といった音楽的な質問から、「夫婦仲の秘訣は?」 といったプライヴェートな質問まで、様々な質問が飛び交い、またサン・ラのカヴァー“Nuclear War”といったレア曲もたくさん演奏されるなど、まさにプレミアムなショウとなった。中でも印象的だったのが、質問をする人の中に「私もバンドをやっているのですが…」という人が多かったことで、年齢を重ねながらも、変わらぬスタンスで素晴らしい音楽を作り続けるヨ・ラ・テンゴは、同じように人生の中で音楽が大きなウェイトを占めている人にとって、憧れの存在であることを再認識した。あ、ちなみに客席には、小山田圭吾や坂本慎太郎といった、交流のある有名ミュージシャンの姿もありましたよ。

そして、そんなヨ・ラ・テンゴが、前作『ポピュラー・ソングス』以来、約3年ぶりとなる通算13作目『フェイド』を発表する。本作では、1993年の『ペインフル』から、約20年に渡ってバンドのパートナーを務めたロジャー・マテノに代わり、なんとトータスのジョン・マッケンタイアがプロデュースを担当。ジョンの所有するSOMAで制作されたアルバムは、50分弱という近年のヨ・ラ・テンゴの作品としては珍しくコンパクトな内容で、軽快かつ穏やかな、実に風通しのいい作品となっている。ジェームズ・マクニューに、<THE FREEWHEELING YO LA TENGO>と新作についての話を訊いた。

Interview: Yo La Tengo(James McNew / B)

Yo La Tengo “Before We Run”

――昨晩の、<THE FREEWHEELING YO LA TENGO>はすごくアットホームな雰囲気で、ゆったりと楽しめました。アメリカではいつ頃から開催しているのですか?

4~5年前からかな? ほとんどはアメリカでやってるんだけど、あとはオーストラリア、スペイン、ドイツ、アムステルダムでもやってて、今回東京にも来れて嬉しいよ。

――今回のような形式のショウを始めるにあたっては、何かきっかけがあったのですか?

ニューヨーク大学から講義をやってくれって言われたんだけど、でも僕らに講義なんてできないから(笑)、質問とかリクエストを受けて、その場で答えていくっていうことをやったんだ。音楽のことはもちろん、ビジネスのことだったり、中には「犬を飼ってる?」なんて質問もあって、すごく楽しくてさ。「こういうのもアリだね」って思って、それから今も続けてるってわけ。セットリストは決めずに、ライヴが始まる5分前ぐらいに最初の曲だけ決めてるんだ。

――ハプニングとか、印象に残ってる回はありますか?

ええと、誰かが怪我したとか、そういう悪いハプニングはまだ起きてないね(笑)。まあ、なかなか質問する人がいなかったり、ジョークを言っても誰も笑ってくれないとかはあったけど、それぐらいかな。

――日本とアメリカでは雰囲気が違いましたか?

日本人は規律正しいよね。アメリカ人は叫んだり、もっと野性的な感じ(笑)。まあ、ひさしぶりに日本のみんなと会えただけでも嬉しかったし、日本には何回も来てるけど、オーディエンスと話をすることはなかったから、とてもスペシャルな夜になったと思う。昨日は結構真面目な質問が多くて、僕らのことをすごく真剣に考えてくれてるってこともわかったから、本当に感動したよ。僕らもそれに応えようと真剣に答えたし、その結果いつもは演奏しないような曲もたくさん演奏したしね。うん、とっても特別だったと思う。

――こういうオーディエンスとの密度の濃いコミュニケーションを世界中でできるっていうのは、ヨ・ラ・テンゴが長い間インディペンデントな形で活動を続けてきたからこそだと思います。とてもじゃないけど、どんなバンドでもできることではないですよね。

まあ、自分たちではわからないけど、確かに他にこういうことをやってる人はいないかもね。でもホントに、自分たちが楽しいからやってるだけだよ。

――ぜひ、また結成30周年あたりに日本で開催していただければと思います。では、新作の『フェイド』についても聞かせてください。昨日の質問でも出ていましたが、プロデューサーが長年のパートナーだったロジャー・マテノではなく、ジョン・マッケンタイアに変わったことは驚きでした。この交代には何か理由があったのですか?

ジョンとやることは、僕らにとってすごくナチュラルな形だったんだ。レディ・ガガみたいなサウンドにするために、レディ・ガガのプロデューサーを連れてきたわけじゃないしね(笑)。まあ、ギャラが高くて僕らには呼べないだろうけど(笑)。

――シンプルに、いつもとは違う、新鮮なことをやろうと思ったということですか?

そういうこと。20年かかって、やっと新しいことができたんだ。

――ジョンにはどんな部分を期待していたのですか?

特に何を期待したってわけじゃなくて、友達だったからっていうのが一番なんだ。もちろん、彼がプロデュースした作品も好きだし、トータスもシー&ケイクも大好きだしね。彼のことは20年ぐらい知ってるからさ。

――メンバーとしてでも、プロデューサーとしてでも、ジョンが関わった作品の中で好きなものを一枚挙げるとしたら?

そうだな…トータスの『イッツ・オール・アラウンド・ユー』かな。とても美しいアルバムだよね。

――ああ、素晴らしいですよね。じゃあ、付き合いも長いということで、実際の作業もやりやすかったですか?

それに関してはYESでありNOでもあったかな。彼はとても有能なエンジニアで、技術的にも機械みたいにすごかったけどね。

――20年やってきたやり方を変えたわけで、決して簡単ではなかったと。

その通り。僕らはロジャーと20年間一緒にやってきて、お互いを知り尽くしてたからね。今回はジョンを含めた4人でずっとスタジオに籠って作業をしてたんだけど、アイデアを共有するのが大変ではあったかな。

――スタジオはジョンが所有するSOMAを使ったのですか?

うん、とってもきれいなスタジオだった。クリーンな宇宙船って感じだったな(笑)。

――作品の内容についてですが、とてもコンパクトな作品になりましたよね。最近は必ずあった10分以上の長尺の曲もないですし。これは意図的なものですか?

それについても、すごく自然な流れだったかな。曲を書いてる時点では特に何も考えてなくて、レコーディングをする前になって、「あ、今回10分以上の曲がないね」って感じでさ。「短い曲を書こう」って考えてたわけじゃないから、自分たちとしてもショッキングだったよ。「2分の曲書いちゃった!」 ってね(笑)。

――曲の作り方自体は、これまで同様ジャムで作っていったわけですか?

うん、ジャムで作ったよ。まあ、これまでも作品ごとに変化してきたと思うから、今回も今までと同じように変化したってことじゃないかな。

――ただ、先行で発売された『Stupid Things EP』には、12分を越す“Stupid Things”のインスト・ヴァージョンが入ってますよね。

そう、あれがオリジナルで、それを短くして、歌を乗せて、完全に別ヴァージョンにしたんだ。あとはボアダムスのEYEによるリミックスも入ってるしね。すごく美しくて、宇宙から来た音楽って感じだよ。SOMAとはまた違う、「OSAKA SPACESHIP」だね(笑)。

――アルバムにゲストは参加してるんですか?

ストリングス、トランペット、トロンボーンとかはゲスト・プレイヤーにお願いしてる。あとは、ジョンもいくつかの曲でドラムを叩いて、ヴィブラフォンも弾いてるよ。

――ストリングスと言えば、“Is That Enough”のストリングスと歪みのギターのレイヤーが素晴らしかったです。

ありがとう。僕もあれはすごく気に入ってるよ。その曲と、あと何曲かは、トータスのジェフ・パーカーがストリングスのアレンジをやってくれてるんだ。彼は素晴らしいよね。

――なるほど、そうでしたか。では、『フェイド』というアルバム・タイトルの由来について話していただけますか?

僕らが思ってる解釈は一応あるんだけど、いろんな風に解釈できる言葉が好きだから、これを選んだんだ。例えば、「F」「A」「D」「E」っていう、4つのコードのようにも受け取れるよね。僕と君は同じような解釈をしてるかもしれないけど、でもそれは内緒(笑)。

――僕の解釈としては、「FADE」つまりは「弱まっていく」っていう意味が、前作『ポピュラー・ソングス』の壊れたカセットテープのジャケットと、イメージ的にリンクしたんですね。つまりは、音楽の存在意義が弱まっていくことへの危惧が、本作の背景にもあるのではないかと。

なるほど。前のジャケットは知り合いのアーティストが作った作品を使ってて、彼は別の意図であれを作ったみたいなんだけど、僕は確かに音楽が壊れていくようなイメージがあったね。レコーディングをして、プロモーションをして、ツアーをするっていう、そういうすべてが壊れていくイメージがあったんだ。

――では、それに対して本作のジャケットの大木は何を意味しているのでしょう?

あのジャケットになったのはアクシデントみたいなもので、あれはポートランドで撮影したんだけど、プレス用の撮影のために、カメラマンがあそこに連れて行ってくれたんだよね。でも、その木がものすごくパワフルで、自分たちの中では「これがジャケットだ」って思ったんだ。あの木の前では僕らはものすごく小さな存在で、それがひとつのステートメントになってると思う。時間と、自然と、いろんな要素が入ってると思うから…あとの解釈は、みんなにお任せするよ(笑)。

(text & interview by Atsutake Kaneko)

Release Information

【Interview】ヨ・ラ・テンゴの新作『フェイド』はジョン・マッケンタイアがプロデュース! プレミア・ショウで来日したジェームズ・マクニューに訊く music130108_yoratengo_jk-200x180 2012.01.09 on sale!
Artist:Yo La Tengo(ヨ・ラ・テンゴ)
Title:Fade(フェイド)
MATADOR/HOSTESS
BGJ-10163
¥2,490(tax incl.)
※ボーナストラック、歌詞対訳、ライナーノーツ付予定

Track List
01. Ohm
02. Is That Enough
03. Well You Better
04. Paddle Forward
05. Stupid Things
06. I’ll Be Around
07. Cornelia and Jane
08. Two Trains
09. The Point of It
10. Before We Run(日本盤ボーナストラック)
11. Cornelia & Jane(Instrumental Version)
12. Oriole
13. I Saw The Light (トッド・ラングレンのカヴァー)
14. Move To California(タイムス・ニュー・ヴァイキングのカヴァー)

Qetic編集部

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