aquarifa 〜「君は誰のせいにする?」ワンマンライブ〜
2013.10.25(fri)@渋谷O-Crest

7月に2ndミニアルバム『月明かりのせいにして』をリリース後、対バンやイベントで、さらにバンドのオリジナリティをライブの場で磨いてきたことへのリアクションが、この初ワンマンをフルハウスという結果へ導いたのだろう。何しろファンにとって、彼らの曲・・・それは思わずバンドキッズがコピーしたくなるテクニカルな痛快さでもあり、ボーカル岩田真知(Vo.&G.)の人と繋がろうとする本心と現実の言葉の距離感、そうしたすべてが自分ごとなのだと感じたからだ。

歓声に感謝しつつ、その爆音でこの日のストーリーを叩きつけるような気迫で鳴らされたのは2ndアルバムの実質的な1曲目“Alice Blue”。フロアをまっすぐ見据える岩田の視線の強さに決意を感じる最初のブロックはエクストリームでありつつ、絶妙な間さえ感じる“36.5℃”まで一気に走りきった印象。緊張を隠さない岩田のMCにむしろ温かな声援が送られると、ムードは一転。背景にはバンドのトレードマークでありシンボリックな三日月が映し出され、シーケンスと聽きまごう透明感に満ちた松川真也のギターが夜に溶け出すような“水平線のむこうがわ”。不在のキミと見たもの、聴いたもの・・・にフロアの女性ファンが思いを重ねているのがわかる。どこか素直になれない自分を歌う“幼い靴”など、やさしい歌をうたいたいと願う岩田の切実さが滲む曲をともに歌うようなバンドアレンジがしみる。

中盤にはヴァースごとに変化するリンタロウ(Dr.)のリズムパターンが、いわゆるキャッチーとは一味違う盛り上がりを見せる人気曲“closet”、ギリギリの精神状態を松川の多彩なエフェクトが醸すギターサウンドも強力にイメージを凝縮する“バーミリオンキッチン”、そして「新曲です」と紹介されたナンバーはユニークなリズム、琴線に触れるギターソロなど純粋にいい曲! と心のなかで快哉を上げてしまった。松川とベースのTAKUTOはステージ前方まで出て熱量を伝えるが、煽るというより自然なアクションに見えたのも曲のせいだろう。

気づくと背景の月は満月に。時間の経過や月とリンクする人の本能を表現したような演出もワンマンならではの世界を描いている。そして圧巻だったのが岩田の「ここにいる意味を教えてくれた人に向けた曲をやります」というMCから始まった“シロツメグサ”。じっくり聴かせる大きなグルーヴを醸成するアンサンブル、<昨日は誰かの誕生日、明日は誰かの最後の日>という、命のかけがえのなさを想像させる歌詞を筆頭に、岩田の歌が心の真ん中に飛び込み続け、そのやさしくも狂おしい感情とリンクするように演奏もエモーションの色を濃くしていった。このバンドが無二の道を歩み始めたきっかけのこの曲を本編ラストに置いた意味は大きい。アンコールを含め、約1時間半のステージから伝わってきたのは、今を生きる誰にとってもリアルテーマを持った歌をアップデートされたスキルフルなバンドサウンドで聴かせるというaquarifaならではの所信表明だった。

text by Yuka Ishizumi
photo by Viola Kam (V’z Twinkle Photography)


Release Information

Now on sale!
Artist:aquarifa(アカリファ)
Title:月明かりのせいにして
redrec/sputniklab inc.
RCSP-0041
¥1,890(tax incl.)