――池永さんの具体的な表現を避けるというスタイルは、音楽と映画からの影響が大きいんですか?

どうなんでしょうね、性格なんでしょうか。あまりはっきり言わないタイプなんで。でも、違和感のある間の取り方とか音の切り方を好むのは、映画からの影響ですね。例えば、今みたいに喋ってるカットを印象付けたい場合には、ガヤ音をなくすんですよ。

――ガヤ音ってザワザワした音とか、いわゆる環境音ですよね。

そうそう。印象づけたいカットでそのガヤ音を一気に抜いてしまうんですよ。そうすると、急にしーんとなって、台詞に意味付けがされるんです。何気ない言葉を喋っていても、やけに神妙な言葉に聞こえたりしてドキッとする。「あれ、何か意味あるんちゃう?」って。しかもみんなガヤ音なんて意識して映画観てないから、雰囲気だけものすごい違和感がにじみ出てくるんです。そういう演出の仕方って、映画ですよね。

――聴き流せないというか、立ち止まるポイントが必ずあるというか。

そうそう。やっぱり最後は飽きさせないことは考えてますね。飽きる作品って、言いたい事云々の前に結局つまらないので。

――なるほど。ちなみに、あら恋は今回自主レーベルを立ち上げましたが、その辺りについても聞かせていただけますか?

僕らにとって昔から、自分で作ったものを自分でプレゼンして回るのは基本だったんです。「いい曲作ってん。聴いてや」から始まって、ライブハウスに出たいからデモテープを持っていく。自分のアルバムに自信があるならば、それを色んなところに自分でプレゼンして回るのって、ごく当たり前のことじゃないかなと思って。ネットもあるわけですし、時代的にもそうなってますしね。だったら、自主で挑戦してみたいなっていう。でも「絶対に自主レーベルをやる!」っていうわけでもなくて、自分で出来る事は自分でやろうっていう基本的なところです。自分でできない所は人にお願いしたら良いし、どんな状況であれ、あくまで核になる部分はバンドの音楽が中心にあったらそれで良いと思います。

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――音楽と向き合い始めた頃の体験ですよね。

宅録の時代ですね。みんな委託で置いてもらいに回ってましたから。自分で作ったものに自分でお金をベットする、ある意味で賭け事みたいなものなので。自分で作って自分でプロモーションして、ダメだったら全部自分の責任だし、誰のせいにもできない。レーベルが悪い、事務所が悪い、逆からしてみればバンドが悪い、ってことになるなら、自分の責任でやった方が一番健康的じゃないですか。

――じゃあ、あくまでも自分たちの作品を出すためのレーベルということですか。

そう。他の人の作品を出すつもりはないので、自分たちの作品を自分たちで売る。もちろん大きくしたいし、大きくします。生活かかってますから(笑)。でも、あくまで制作の面ではイチミュージシャンでないとダメだなと思います。やっぱり僕はミュージシャンになりたかったので。