ま、間違いなくインダストリアル・サウンドの大波がザンバザンバと押し寄せている。ポスト・インダストリアルの旗手、ファクトリー・フロアが鮮烈なデビューを飾り、ナイン・インチ・ネイルズ(以下:NIN)やゲイリー・ニューマンらベテラン勢も渾身の新作をリリース。また先月には『INDUSTRIAL MUSIC FOR INDUSTRIAL PEOPLE!!!』という世界初のディスクガイド本も上梓された。そんな絶好のタイミングに往年の名作3枚がリマスター&紙ジャケで一挙にリイシューされたのが、シーンの開拓者ともいうべき超重要バンド、キャバレー・ヴォルテール(以下:キャブス)である。

イギリスの工業都市シェフィールドで結成されたキャブスは、79年に衝撃的デビュー・アルバム『Mix-Up』をリリースし、一方の雄であるスロッビング・グリッスルと共にインダストリアルという新たな音楽の地平を切り開いた。もっとも当時のキャブス(というか初期インダストリアル自体)は、現在のNINなどのようなヘヴィ・ロック色の強い体育会系ノリとは異なり、現代音楽や前衛芸術の流れも汲んだ文系的かつ音響的なサウンドが特徴で、這いよる反復リズムと呪詛めいたヴォーカルに、カット・アップやコラージュなどを多用した実験的エレクトロニクスが交錯する強烈な音世界を繰り広げていた。

その後キャブスは前衛路線からエレクトロ・ダンス路線へと大きくシフト・チェンジしていくのだが、その転換期に当たる作品が今回リマスター・紙ジャケ・ボーナストラック付きで再発された3作である。83年の『ザ・クラックダウン』はコラージュの氾濫する不穏な空気はそのままに、大胆なファンク・ビートの導入によって後の進路を決定付けた道標的名作。続く84年の『マイクロ・フォニーズ』は前作の方法論をより整合化した末にキャブス流インダストリアル・ファンクの完成をみた傑作で、フロア・アンセム“Sensonia”をはじめ佳曲揃い。そして85年の『カヴァナント、ソード・アンド・アーム・オヴ・ザ・ロード』は、後のアシッド・ハウスにも通じるような高揚感と享楽性が横溢する、ダンス・オリエンテッドなサウンドを極めた一枚だ。

彼らが試みたインダストリアルとダンスの融合は以降のロックやテクノ/ハウスに多大な影響を及ぼしたが、驚くのはその強靭な革新性が未だに劣化していないことである。いや、むしろ2013年のいまこそこの3作品は“聴きどき”であると断言したい。それを自らの耳でぜひ体感して欲しいと思う。

text by 北爪啓之

★キャブスの再発3作の”仕様”がスゴイ! 商品の中身は・・・?
・デジタルリマスター(メンバーの監修による)
・紙ジャケ仕様
・ボーナストラック収録
・歌詞対訳/ライナーノーツ付

商品情報は以下をチェック!!

Release Information

2013.11.06 on sale!
Artist:Cabaret Voltaire(キャバレー・ヴォルテール)
Title:The Crackdown(ザ・クラックダウン)
¥2,100(tax incl.)
Traffic/MUTE
TRCP-144
※デジタルリマスター(メンバーの監修による)、紙ジャケ仕様、ボーナストラック収録、歌詞対訳/ライナーノーツ付