<FUJI ROCK FESTIVAL’19>
2019.07.26(FRI)
BIGYUKI@RED MARQUEE
The Chemical Brothers、THOM YORKE TOMORROW’S MODERN BOXESの怪演から日付が変わって深夜0時過ぎのRED MARQUEE。地鳴りのような重低音から始まる雨の夜、BIGYUKIが紡ぎ出す美しく凶暴なあの混沌にいた人々は、どんな朝を迎えたのだろう。
アメリカの超名門・バークリー音楽大学を卒業後、NYを拠点に、ピアノ・シンセプレイヤーとしてその才能を惜しみなく発揮してきたBIGYUKI。タリブ・クウェリ/キューティップ(Q-Tip)/ロバート・クラスパーといった錚々たる名とともに歩む彼の経歴と各方面から受けた賞賛については、ここではとても語り尽くせない。2017年に発表されたソロ・アルバム『Reaching For Chiron』リリース時のインタビューを参照されたし。
年始のジャパンツアーをともにしたランディ・ラニヨン(gt.)とティム“スミソニオン”スミス(dms.)を迎え、前述アルバムのラストを飾る“2016 Chiron”で幕を開けたこの日のショー。毛細血管レベルで振動を感じるロウの効いた荘厳なトラップが、一瞬にしてその場を別次元に変えてしまった。
続く、“Simple Like You”では、ハビエル・スタークスを客演に迎えたアルバム収録ver.とひと味違う世界を魅せ、流麗なピアノイントロで始まる“Red Pill”、“Nunu”ではピアニスト然とした圧巻たる指さばきを披露。音圧で胸が詰まるほどの重厚なドラミング、泣きのギターでムード満載の人力ベースミュージックを奏でていく。トラヴィス・スコット(Travis Scott)の“Antidote”の生音リミックス、フライング・ロータス(Flying Lotus)の“See thru to U”を肉感的な生音ギターで聴けたのも感動的だったし、ラストに披露したエイサップ・ファーグ(A$AP Ferg)の“East Coast REMIX”のリアレンジは、あらゆるシーンが交差する領域でサヴァイブし続けてきたBIGYUKIのアティチュードを感じさせた。
足元から捲り上げる音の波に揉まれるうち、毒がまわっていくように耳以外の器官が麻痺しているような感覚に陥ってくる。と同時に、最新鋭のトラップ・ミュージックでありながらプリミティブでどこか宗教的な高揚感をもたらすミニマルミュージックの要素もあり云々……と、この感動を形容することが本当にバカらしくなってくる。あの夜、既存の言葉や記号では表すことが出来ないほどの新次元を体感してしまったのだ。
Photo by Tokyologist
Text by 野中ミサキ(NaNo.works)
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