1983年に結成したガイデッド・バイ・ヴォイシズ(Guided By Voices、以下GBV)は、デイトン州オハイオ出身のロバート・ポラード率いるバンド。刹那的なポップ・ソングを量産し続け(ロバートはアメリカの著作権管理団体のひとつ、BMIへ1600曲以上を登録する多作家として知られる)、90〜00年代前半にかけて代表作『Bee Thousand』(amazon.comベスト・インディ・ロック・アルバムに選出)や『ドゥ・ザ・カラップス』などをリリースしUSインディシーンを彩り、2004年に惜しまれつつも解散。唯一無二の過剰な活動をしてきた彼らの解散の一報を聞いたファンは、「ウソだと言ってくれ!」と信じられず、心に大きな穴が開いたような気分になったものだった。

しかし、2010年のマタドール21周年記念ライヴへの出演をきっかけに活動再開。2012年の復帰作『レッツ・ゴー・イート・ザ・ファクトリー』を皮切りに2014年までにアルバムを4枚リリースし健在ぶりを示した。ミュージシャンにもGBVのファンは多く、ザ・ストロークスとMVで共演したり、最近ではオーウェン・パレットサーファー・ブラッドワクサハッチーら若手が彼らの代表曲“Game of Pricks”をカヴァーしたり、トリビュート盤が複数枚作られるなど広くリスペクトを集めている。このようにバンドの肩慣らしは終わり再評価の機運も高まる中、2014年にリリースした2作品が日本盤化される。

ザ・ストロークスやオーウェン・パレットらミュージシャンにもファンが多い、USインディーの重鎮=Guided By Voicesとは? music140527_gbv_motivational-jumpsuit

モティヴェイショナル・ジャンプスーツ

本国では2月にリリースの『モティヴェイショナル・ジャンプスーツ』はGBV流『ホワイト・アルバム』と言える、宅録とライヴ指向がバランス良くシームレスに繋がった作品。1曲目“Littlest League Possible”は、大学時代に野球でノーヒット・ピッチングをしたりピート・ローズの映画『4192』に楽曲提供したりして、何かとロバートと縁のある野球を素材にしたポップ・ソング。歌詞の”考えうる限りの最小リーグでホームランを打とう”と、他人と張り合う気など無く、自分達が楽しめれば良いという吹っ切れた前向きさはトモフスキーの“うしろむきでOK!”に通じる趣がある。

“Littlest League Possible”

結成31年とは思えないほど新鮮なギター・リフがジ・アンダートーンズの“Teenage Kicks”を彷彿とさせる “Planet Score”では、モータウン〜ブリル・ビルディングまで思いを馳せ、”曲を産み出すために町のレコード屋を使い切るんだ!”と歌う。ロバートの無尽蔵な創作力の源泉へ向けた賛歌だ。自らの全盛期にリリースされた『Tigerbomb』(95年)を引用したジャケットからも、過去の自分達と向き合える自負を感じる。

“Planet Score”

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