元来、解毒剤やワクチンは、接種等を通じ、まずあえてその菌(Virus)を自らの中に取り込み、それに抵抗しうる免疫を体内で育み、免疫力や抵抗力を作り出すことから始める。そんな中、星野源が昨年12月19日に発売した3年ぶりの5枚目となったニューアルバム『POP VIRUS』は、その菌が聴いた者たちの中に侵入し、今でも多くの感染者を生み出している。しかも、その感染力は強烈だ。

この『POP VIRUS』。今年に入ってもその感染力は一向に衰える気配を見せず、その猛威は増すばかり。オリコンやビルボードといった主要チャートで4週連続1位を記録するなど、音楽ニュースを中心にその猛威を多く目にする。

最新作「POP VIRUS」の特異性と「星野源」というアーティストの本質

発売を一か月過ぎても未だその実売ペースに衰えを魅せない星野源のニューアルバム『POP VIRUS』。それは、2018年を振り返るタイミングでの彼の露出や当人の取り上げられ方も手伝い、発売~昨年末はファンを中心に、年末から年明けには作品の評価もあいまって、幅広い層が同作品に触手を伸ばしていると聞く。

そもそも星野源の人気の裾野は広く、日本国中の老若男女を巻き込んだものだ。NHK紅白歌合戦では「おげんさんといっしょ」での出演に際する「SUN」の歌唱と、後半に於ける自身での「アイデア」でのダブル出演。また、その日の歌手別視聴率では全出演者中3位の43.5%(後半平均視聴率41.5% 。共に関東圏ビデオリサーチ調べ)を記録。加え年始では、歌手方面以外の役者面や人間面がクローズアップされる場面も多々。CM出演や各種露出、NHKの新大河ドラマ「いだてん」での役者出演等々、国民的人気や幅の広さ、支持のされ方を伺わせた。

そんな『POP VIRUS』なのだが、彼のパブリックイメージや、TBS系火曜ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』での“恋”、NHK連続テレビ小説『半分、青い。』の“アイデア”、日本テレビ系水曜ドラマ『過保護のカホコ』の“Family Song”といった主題歌群。花王ビオレuボディウォッシュCMソングとしても周知の“肌”、スカパー!『リオ2016パラリンピック』テーマ曲“Continues”等々、昨今の彼の放ってきたシングル曲やヒット曲、タイアップ曲で構成された全編を想像し、プレイするとやや意外な面に出くわす。

星野源 – Family Song【MV & Trailer】/ Gen Hoshino – Family Song

それは上述の収録代表曲たちから想起させる、華やいだ明るさを有した、老若男女が楽しめる、ポップでキャッチーでエンターテインな楽曲だけでなく、プログラミングや現行のエッジーなな音楽的トレンドが多く用いられていた点だ。しかもそれらはどれもあえて音数を少なくしている感も伺える。これらは、「幅広く・分かりやすく」よりも、私信やパーソナル的な、より傍らで伝えられるかのように私の中では響いた。これこそが星野源が連綿と紡いできた本質。個と個のパーソナル、そして、どこか彼の歌にまとわりついている寂寞とした本質さが今作でも変わらず生きづいており、サウンド面に於いても元々リスナー体質で古今東西かなり幅広い音楽を聴き、それを自作でも落とし込んできた彼らしさとも結びつけることが出来、こちらも嬉しかった。

これまで以上にソウルフルさに重きが置かれた感のある作品。とは言え、それは別に表立っての高らかな熱唱とはまた違い、スウェイな部分や歌にグルーヴを感じさせる類い。そんな今作を紐解くと、MPCプレーヤーとしてのSTUTSの参加の影響に行き着く。MPCをリアルタイムでパットを打つことで、音質はマシナリーながら人間的なグルーヴ感を生み出していることは“アイデア”のMVからも立証済み。

星野源 – アイデア【Music Video】/ Gen Hoshino – IDEA

また、ヴィンテージのアナログシンセ類も多用され、それらはゴージャスに響く楽曲群に対抗するかのようにチープ感を擁しながらも、深みのある音となり、対象さやメリハリ、コントラストづけに一役買っている。長岡亮介(G.)、ハマ・オカモト(B.)、河村”カースケ”智康(Dr.)、櫻田泰啓(key)、石橋英子(Key&Cho.他)といったおなじみの豪華サポートメンバーも全面参加。適材適所な存在感を醸し出している。

『POP VIRUS』全収録曲を一挙紹介

以下は各曲における“ポップ・ウイルス”の採取報告だ。

まずはウォームなギターと星野のソウルフルな歌声による出だしから、長岡亮介、石橋英子とのコーラスとSTUTSの作り出すスネア処理にアクセントをつけたリズムに、傍らで永遠を伝えるようにしっとりと歌う星野の歌声と、徐々に生命力を帯びていくバンドサウンドとストリングスも印象的。ここから愛が花を咲かせ、根を張り、種となり、また芽吹き、花をさかせていくアルバムジャケットとのリンク性も伺える“Pop Virus”から今作は幕を開ける。うって変わりパーッと華やかな空気に。

星野源 – Pop Virus【MV】/ Gen Hoshino – Pop Virus

老若男女を一緒に踊り歌わせた大ヒット曲“恋”が続いて登場。アルバムミックスで聴くとその印象がまた違うのが新鮮だ。

星野源 – 恋【MV & Trailer】/ Gen Hoshino – Koi

また、モータウンポップスライクなブラッキーでファンキーながらもポップさやバカラックテイストも織り交ぜた、ゆっくりと身体をスウェイさせたくなる“Get a Feel”。スネアのアクセントと躍動感のあるベースラインとウォームで左右にパンされた2種のファンキーなギターと泳ぎ回るストリングスも耳を惹く、肌を合わせていれば言葉は要らないかのような情景が思い浮かぶ“肌”。

星野源 –「肌」【Studio Live from “POP VIRUS”】 / Gen Hoshino – Hada

そして、グリッチポップ的なトラックの上、音数少ない隙間の多い楽器類、いつまでもそばに居て欲しいとの願いを込め、聴き手に各人の愛しい人を想い起させる“Pair Dancer”。チェロを始め厳かなストリングスと厳格なピアノとが神妙さを醸し出し、サビではそこから開放された明るさを得、最後には光へと包まれるかのような、どの水の流れも全ては大海へと向かい出会うことを信じさせてくれる“Present”が次々と現れる。

対して中盤では音数が少ないながらも存在感のある曲たちが耳を惹いた。かなり隙間や余白が多く、コーラスの山下達郎も交え、山下特有のドゥワップ要素やハーモニーも耳を惹く『最後の一葉』の一場面を思い浮かばせる“Dead Leaf”。アコギによる弾き弾き語り風のギターと打ち込み、途中のチューニングもご愛敬な、凄く間近で歌われているように響く、自身の子供の頃を想い起させ、今もあまり変わっていない様に気づかさせる“KIDS”が各々独特の輝きを魅せる。

折り返し地点では、生命力や躍動溢れる曲が響いた。命は続く、日々は続く、素晴らしい光景を眼前に広げてくれ、豪華なゲストコーラス隊とゴスペルを彷彿とさせる生命力と活力、そしてバイタリティを与えてくれる、会場を交えてのハミングする光景も思い浮かぶ“Continues”。また、ブロークンビーツの疾走感と躍動感に乗せ、走り出してくかのような気持ちが歌とサウンドで表された、サビで出会う解放感と、それでも行くんだ感がたまらない“サピエンス”。再びパーッと、彼独特のエキゾチックさと、現代風のウェーヴィな要素もキチンと交えたサウンドと共に、どこまでも行けそうな気がする、大ヒット曲“アイデア”が続いた。

後半は願いや祈りを感じる曲が並んだ。日常感や情景感、ほのかな幸せを広げるように、日々の営みへのささやかな祈りを思わせた“Family Song”。アーバンでアダルティなサウンドの中、星野のウォームなファルセットも印象的。空虚を歌う、この“Nothing”からもどこか祈りの本質が伺えた。そして、ラストは大団円とばかりに、明るくポップにエンタテインメントにとTo Be Continued感たっぷりに“Hello Song”が今作を締めた。

この2月2日からは<星野 源 DOME TOUR 2019『POP VIRUS』>とタイトルされた全8公演にも及ぶ全国5大ドームツアーも控えている星野。今年に入っても、このニューアルバムやツアーの続報、役者やその他面白い動きや話題を交え、数々の彼の話題を随時、各所で耳にすることだろう。そんな中、この『POP VIRUS』は、これからも猛威をふるい、多くの人に感染していくに違いない。しかし残念ながら、まだ現在のポップス史上では、このウイルスに対抗するワクチンや処方箋は開発されてはいない。ならば、逆に自ら積極的に取り入れ、自身を抗体化させるのが最適というもの。但し、この『POP VIRUS』、中毒性がかなり強いので、用法・用量を守り、その摂取と自己管理には充分にご注意あれ。

RELEASE INFORMATION

『POP VIRUS』

星野源『POP VIRUS』収録曲解説|日本中で感染者続出の「POP菌」その対処法 music190117-hoshinogen-2-1200x1051-1-1200x1051

星野源
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池田スカオ和宏

池田スカオ和宏

ライター/インタビュアー/編集人

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