Hostess Club Weekender DAY1
2014.02.15(SAT)@新木場STUDIO COAST

回の開催から丸2年、インディ・ロックのショーケース・イベントとしてすっかり定着した感のある<Hostess Club Weekender(以下、HCW)>。第7回目となる今回は未曾有の豪雪に見舞われ、一時は開催すら危ぶまれる大ピンチ。しかし蓋を開けてみれば、先着限定となる出演アーティストのサイン会参加券を求め、早朝から多くのファンが新木場に詰めかけたという。インディ愛たっぷりのイイ話にときめいたところで、さっそく初日の様子をレポートしていこう。

この日のトップバッターはエラーズ。おヒゲが物語るように、結成は2004年と実は古い。それだけに3ピースの機能性を活かした演奏も見事で、アグレッシヴなシンセ・フレーズ&突進型ドラムの合わせ技から高揚感たっぷりのグルーヴを生み出し、ぐいぐい踊らせる。良心の街グラスゴー出身らしく、ときおりパステルズみたいな淡いメロディも覗かせるのも微笑ましい。つづいては21歳の新鋭、アウスゲイルが登場。しっとりフォーキーへ傾いたかと思えば、エレクトロを駆使したリズミカルな音響も演出。細かいニュアンスも表現できるバンドの演奏能力も含めて、「ボン・イヴェール/ジェイムス・ブレイク以降」のシンガー・ソングライター象を正しく踏襲していた。何より、柔らかく伸びる歌声に別格のオーラがある。魂の旋律に会場中が聴き入り、音が止むと万雷の拍手が鳴り響く。生まれ故郷のアイスランドでは、全人口の10人に1人が彼のデビュー・アルバムを買い求めたそうだが、その支持率も納得。個人的にも一番のサプライズだった。

エラーズ

アウスゲイル

アウスゲイル

ここから、昨年の夏フェス出演を契機に人気アクトとなった新人勢がつづけて登場。まずは<フジロック・フェスティバル>以来の来日となったドーター。凛々しい紅一点エレナの穏やかな魔性にも惹き付けられるが、ライヴで存在感を強く示すのはイゴールのボウイング奏法だ。〈4AD〉の幽玄なレーベル・カラーを正しく継承する彼らだが、ときに轟音も纏いつつ、水面を揺らす雫のように静寂もコントロールしてみせるなど、抑揚の快感をドラマティックに演出する術に磨きをかけていた。それを上回る成長を見せたのがチャーチズ。グラスゴー発のエレポップ3人衆も<サマーソニック>ではこじんまりとした印象が否めなかったが、今回はビートも太く強烈になり、フロントを担うローレンちゃんのアクションも派手になるなどエンタメ性が一気にアップ。楽曲がもつスタジアム級のスケールをステージ上でも再現できるようになったのは今後にも繋がりそうだ。〈ホステス〉の中の人も「きれっきれ中のきれっきれ!!」と興奮する、マーティンお兄さんが歌うコーナーは何度見てもウケる。

ドーター

ドーター

チャーチズ

チャーチズ サイン会

フードにお酒、サイン会など休憩時間も楽しく過ごせる<HCW>だが、今回の目玉はモグワイによるオリジナル・ウイスキー、その名も「RockAct81w」。324本の限定発売で、アルコール度数はシビれる57.1%。くいっと飲み干すと、口内から体中へ熱が沁み渡る大人のロック・アクション。まぐわいのような酩酊感は轟音を浴びるように心地よい(イイ加減な感想も旨かった証拠!)。そして、アルコールよりも遥かに強烈なバッドトリップをもたらし、感動を刻み込んだのもトリを務めたモグワイだった。最新作『レイヴ・テープス』のジャケをあつらったバックドロップを背に、新曲“Heard About You Last Night”からスタート。シンセを効果的に配置した新作の曲をセットリストに挟みつつ、耳も焦げそうなノイズ・アンサンブルこそ真骨頂。観客の反応が高まるのもギターを何本も構えるナンバーである。そのテンションは曲を重ねるごとに跳ね上がり、アンコール前のラストを飾った“Batcat”あたりでK点を越えた。この日はグラスゴー勢の活躍が目立ったが、ポストロックの王者はやはり別格。終焉を知らぬ騒音的美学には平伏すばかりだ。

モグワイ ウイスキー

モグワイ

text by Toshiya Oguma
photo by古溪 一道(コケイ カズミチ)