従来のダンスミュージックのスタイルに追従するというプレッシャーから解き放たれた結果として、彼女の音楽は無限の可能性を感じさせている。

― WIRE

2012年のデビュー作『クァランティン』がいきなり英WIRE誌のアルバム・オブ・ザ・イヤーを獲得し、その他Guardian紙、Pitchfork、Resident Advisorなどの主要メディアからがこぞって賞賛するなど衝撃的に登場したローレル・ヘイロー。アートワークに日本の現代美術家、会田誠の『切腹女子高生』を使用したことでも話題となった。グライムスを筆頭にマリア・ミネルヴァ、ジュリア・ホルター、インガ・コープランド(ハイプ・ウィリアムス)らの活躍で活況を迎えるインディー・ダンス・シーンの宅録女性クリエイター達の中でも、ブルックリンを拠点に活動する彼女の音楽は、テクノへの憧憬を滲ませながら展開するサイケデリックな音と魅惑的な歌声によって、誰とも比較することの出来ない輝きを放っている。

同時多発的にビート/インディー・ミュージックのクロスオーバーが一気に勢力を拡大していく中で、チルウェイブやワンオートリックス・ポイント・ネヴァー、ジェームズ・フェラーロら周辺人脈とともにインディー・ダンスの潮流を決定的なものにした前作。そこに即興性への興味を反映させた本作『チャンス・オブ・レイン』では、更なる変化を見せている。デトロイト・テクノ、U.K. テクノ、ジャーマン・ テクノ譲りの硬質なビートを前面に打ち出しすことで、いわばベッドルームでの恍惚を抜け出して、フィジカルなサウンドを追究するトラックがある一方、静謐 なピアノが 鳴り響く“Dr. Echt”(M-1)と“-Out”(M-9)で全編を挟む構成や、バレアリック・ハウスへの接近を感じさせるトラックなど、フィジカルに訴える音と従来 の神秘的な雰囲気とを見事に融合。一見矛盾する要素によって、ここにはローレル・ヘイロー の多様性、そして高貴なまでの実験精神が鮮やかに閉じ込められているのだ。活況を迎えるインディー・ダンスはどこへ向かうのか? 本作の音は間違いなくその鍵を握る一つであり、同シーンを新たな地平へと導いてくれるに違いない。

デビュー作『クァランティン』リリース時に公開されたPitchforkによるインタビュー

Release Information

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