らが生きる世界には、マジックアワーと呼ばれる時間が存在する。太陽が地平線に沈み、夜に変わるまでの僅かな時間の中、視界いっぱいに広がる昼とも夜ともいえない不思議な光景。淡く紫がかった白い雲や薄青い夕暮れ模様は、まさに文字通りの「魔法の時間」である。mergrimこと光森貴久の2ndアルバム『Hyper Fleeting Vision』に触れると、そんな現実と夢の狭間のような世界へと誘い込まれる―――

1stアルバム『Invisible Landscape…』から約2年。今作では、前作のリミックス盤とライブ盤『Intersect Landscape』にリミキサーとして参加したCokiyuをはじめ、Jessica (Ngatari)、Janis Crunchといった優しく儚げな声の持ち主たちが、mergrimの幻想的な音世界と出会っては、過ぎ去ってゆく。さらには、クラシック界の一線で活躍する演奏家たちもゲスト参加し、ストリングスとハープを大胆にフィーチャーしたサウンドアレンジにトライ。ヴォーカルと生楽器、エレクトロニクスの響きが幾重のレイヤーとなり、徐々に落ちてゆく太陽や空の色の移り変わりなど、夕暮れ時がもたらす刹那的でメランコリックな雰囲気を、ときにファンタジックでドリーミーに、あるときは疾走感と躍動感をもって、豊かに表現している。緻密にプログラミングされたビートと多彩なメロディーメイキングによって展開される壮大なサウンドスケープが実に心地よく、マジックアワーを体験した時の、あの目に映るものすべてに心を奪われる感覚とシンクロするのだ。

Hyper Fleeting Vision』から脳裏に浮かび上がる一つひとつは、僕らの追憶と想像に結びついた独自の景色。仮に、聴き手のイメージする風景が同じ時間帯であったとしても、そこに同じランドスケープは存在しない。オープニングからエンディングまで紡がれる彩り豊かな音世界を通じて、見慣れた日常の風景がいとおしく思えてくることだろう。

なおQeticでは先日、mergrimと山梨在住の音楽家moshimossとの対談を行なった。普遍的なエレクトロニカ・アンビエントと一線を画する表現力を持つ両者によるクロストークの公開はもう間もなく。楽しみに待っていただきたい。

(text by Shota Kato)

Event Information

mergrim 『Hyper Fleeting Vision』 release party presented
by PROGRESSIVE FOrM & moph records

2013.07.07(日)@渋谷WWW
OPEN/START 16:00/CLOSE 21:30
ADV ¥2,500/DOOR ¥3,000(ドリンク別)

メインフロア
mergrim HFV set with Kazuya Matsumoto/Cokiyu/Janis Crunch/Jessica from Ngatari and yuanyuan x Junichi Akagawa
ゲスト・ライブ:aus + Takcom/Go-qualia x Naohiro Yako/henrytennis/lycoriscoris Band Set
DJ:Ametsub

スモーキング・ラウンジ
ライブ:Fugenn & The White Elephants/Kan Sano/Licaxxx/Nyolfen/Tessei Tojo/他
DJ:DJ蟻/qurea

TICKET
チケットぴあ(P:200-177)、ローチケ(L:78113)、イープラス
主催:PROGRESSIVE FOrM 、moph records

Release Information

Now on sale!
Artist:mergrim(メルグリム)
Title:Hyper Fleeting Vision(ハイパー・フリーティング・ヴィジョン)
PROGRESSIVE FOrM / moph records
PFCD35 / mcd011
¥2,100(tax incl.)