代の人間にとっては「月」が今でいうTVのようなメディアであったと言ったのは、かのナムジュンパイク。現代のエネルギーを使うようなメディアがない時代は太陽と月が昼と夜を伝え、月の引力による波の満ち引きが季節やバイオリズムを感じさせてくれる、いわば自然がメディアであった。そして人間は、そんな自然と寄り添うことで今よりも第六感やスピリチュアルな感覚が研ぎすまれていた時代があった。

話は変わるが「電子音楽は風景や情景を連想させるサウンドである」と言う言葉は、とあるライターの名言である。初来日公演を行ったアンビエント/ドローン・シーンの最重要アーティスト、ティム・ヘッカーのライブで感じた情景とは・・。

ピアノや管楽や弦楽、、繊細な一音一音が重なっては離れていく様は、まるで潮の満ち引きのような感触。リバーブ音によるエフェクトの緩急は、夜の深海を潜水しては月明かりに向けて浮上を繰り返すような気持ち良さがあった。特にライブ中は会場の一切の明かりが消され、真っ暗闇だったためにそんな想像力をかきたたせたのかもしれない。人間のスピリチュアルな感覚をどこか呼び起こすような素晴らしいライブであった。

【レポート】ティム・ヘッカー初来日公演は〈第六感〉を呼び起こすような刺激的な一夜に! music130614_tim-www_ametsubu-1

抽象的なライブレポとなってしまったが、ティム同様に素晴らしいエクスクルージブなライブセットを披露したAmetsub氏、立ち位置は違うものの最新作が話題のボーズ・オブ・カナダ(以下BOC)も然り、アンビエントやドローンを取り入れたエレクトロニカが今の時代と密に接近している。流行り廃りとは関係なしにティムやAmetsub、BOCらが同じような肌感覚で今そのような音を鳴らすことも何か、月の引力の仕業のような気がしてしまう・・。これまさにアンビエント=環境音楽、五感どころか第六感すら呼び起こすような刺激的で素晴らしい一夜でした。

text by ダブルビー
all photo by Tadamasa Iguchi(IN FOCUS

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