きなりだが皆さんは香港映画と言われれば何を思い浮かぶだろう。カンフー、ブルース・リー、ジャッキー・チェン、酔拳・・・。確かに一世を風靡した“カンフー”は香港映画の代名詞であり、『燃えよドラゴン』のブルース・リーなどの人気は今でも根強い。しかし今や、香港映画界はハリウッドに負けない様々なジャンル映画を発信している。例えばアメリカン・フィルム・ノワール、フレンチ・フィルム・ノワールに対し、香港ノワールというジャンルを確立した。

その中で、香港ノワール界、香港映画界を代表する監督の中の一人がジョニー・トー監督である。世界的評価を得ながら、あくまで香港での映画制作にこだわり、「香港ノワールの旗手」と言われる彼の作品は、常にスタイリッシュで、常に観客を魅了し続ける。そのジョニー・トーのファン待望の最新作『奪命金』が新宿シネマカリテ、シネマート心斎橋などにて公開中である。

ジョニー・トー最新作『奪命金』公開記念・香港映画特集! あなたは香港映画の何を知っているの? film0213_hongkong_sub1-1

ジョニー・トー最新作『奪命金』公開記念・香港映画特集! あなたは香港映画の何を知っているの? film0213_hongkong_sub2-1

今作はジョニー・トーが新たに仕掛けた金融サスペンスとなっている。人々は金を手に入れたいという欲望にかられ、金融投資やギャンブルで一攫千金を夢見、そして天国か地獄のどちらかに足を踏み入れることになる。だが、21世紀に入り、世界は今、金融取引によって大きな不況の中にはまりこみ、人々は出口を見いだせない地獄の中に入り込んでしまった。そんな世の中を舞台に、人間の金に対する欲望から起こる事件に巻き込まれる男女を、世界の金融都市のひとつである香港を舞台に描いたサスペンスドラマ、それが『奪命金』である。

またこれを記念して彼をフィーチャーした『映画監督ジョニー・トー 香港ノワールに生きて』も2月16日(土)より公開される。今まで制作側にしかいなかったジョニー・トーの映画観に正面から迫った作品。『スリ』『エグザイル絆』『ザ・ミッション 非情の掟』そして最新作『奪命金』まで・・・数々の作品から、名シーンの裏側が明らかになる!! ジョニー・ト―初心者から熱狂なファンまで満足できる内容である。

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ジョニー・トー最新作『奪命金』公開記念・香港映画特集! あなたは香港映画の何を知っているの? film0213_hongkong_sub4-1

Qeticでもこの機会を見逃してはいられないと今回、香港映画特集を企画。ジョニー・トー作品に限らず、まだまだ良質な大人の娯楽が詰まった、生きているうちに一度は観てもらいたい香港映画をご紹介する。これを機会に香港映画の素晴らしさを少しでも知っていただければ嬉しい限りである。

『グリーン・デスティニー』 (00年/監督:アン・リー)

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“グリーン・ディスティニー”

現在、『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』が大ヒット公開中のアン・リー監督作。アン・リー作品の中でも評価が高い一本。その映像は美しいの一言。<アカデミー賞>では外国語作品でありながら4部門を受賞。アン・リー監督作品は『ハルク』 (03年)、『ブロークバック・マウンテン』 (05年)、『ラスト、コーション』 (07年)もチェックして欲しい。

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『恋する惑星』(94年/監督:ウォン・カーウァイ)

まだ無名だった金城武を一躍有名にした作品。 香港の九龍、尖沙咀にある雑居ビル・重慶大厦を舞台にすれ違う若者の恋愛模様を描き、あのクエンティン・タランティーノが絶賛した作品。失恋した警官(金城武)は、逃亡中のドラッグ・ディーラーの女と出会います。そして、恋人とすれ違いばかりが続く警官(トニー・レオン)は、飲食店の店員フェイと出会って新しい恋に落ちる。活気ある香港の街中と二組の男女の日常が交錯する。ウォン・カーウァイの最新作『グランドマスター(仮題)』も公開予定。

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『ブエノスアイレス』(97年/監督:ウォン・カーウァイ)

香港からちょうど地球の裏側に当たるアルゼンチン・ブエノスアイレスを舞台にゲイカップル、ウィンとファイのやるせない人生を耽美な映像で映し出す。そして、北南米を代表するカエターノ・ベローゾのボーカル、アストル・ピアソラのタンゴ、ロック界のカリスマ、フランク・ザッパの魂を揺さぶるギターの音楽が、映画の感情のうねりを体現する。一度観たら頭から離れない一本。

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『ドリアン ドリアン』(02年/監督:フルーツ・チャン)

香港の雑踏の中で体を売って稼ぐヒロインの心の軌跡を描いた人間ドラマ。監督は『メイド・イン・ホンコン』で国際的評価を得た中国出身のフルーツ・チャン。ドリアンは、強烈な臭気を放ちつつも、そのとろけるような味わいから多くの人を虜にし、果物の王様と呼ばれる不思議な南国の果物だ。フルーツ・チャン監督はこのドリアンに、香港の歓楽街の路地裏をだぶらせている。

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『さらば、わが愛 覇王別姫』(93年/監督:チェン・カイコー)

舞台は1925年から60年代の文化大革命時代をはさんだ70年代までの国民党政権下にある中国。京劇の古典『覇王別姫』を演じる2人の役者の愛憎を、50年に及ぶ中国の激動の時代を背景に時代に翻弄される京劇役者の小楼や蝶衣の目を通して描いた大作。女性も認めるレスリー・チャンの美しさが際立つ作品。

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『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』(87年/製作:ツイ・ハーク 監督:チン・シウトン)

青年ツァイサンは廃墟の寺で美しい幽霊スーシンと出会い恋に落ちる。彼はスーシンを蘇らせるため、イン道士と協力し妖怪たちに挑んでゆく…。美しい男女の悲恋物語、華麗なワイヤーアクションと映像美が見事に融合した大ヒット作。続編の2、3もあるのでぜひ! 最近のツイ・ハーク監督作品では『ドラゴンゲート 空飛ぶ剣と幻の秘宝』も公開。

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『イップ・マン 序章』(08年/監督:ウィルソン・イップ)

ブルース・リーの師として知られるイップ・マン(葉問)の生涯を描くアクション。2010年には続編『イップ・マン 葉問』も製作された。ブルース・リーがあんなに強いんじゃ、師匠はどんだけ強いんだよ! とツッコミを入れながら観ると、本当に強すぎてただただ関心してしまった。ちなみに日本人将校役の池内博之の演技にも注目して欲しい。

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『強奪のトライアングル』(07年/ツイ・ハーク、リンゴ・ラム、ジョニー・トー)

ツイ・ハーク、リンゴ・ラム、そしてジョニー・トーの3人の監督によるリレー式物語。もうそのステキな企画だけで十分満足できるシリアス・サスペンスで、始まり気がつけばサスペンス・コメディになるのもお茶目で不思議な魅力あふれている。香港ノワールを代表する3監督を一度に観られるファン垂涎の一押し作品。

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『エレクション~黒社会~』(05年/監督:ジョニー・トー)

香港最大の裏組織で、二年に一度行われる会長選挙。候補者をめぐって内部では意見が割れていた。選挙戦の裏側では、さまざまな欲望と思惑が錯綜し、熾烈な戦いを迎えようとしていた…。これぞジョニー・トー映画と言わしめた作品!! パート2にあたる『エレクション 死の報復』では、暴力は巡り巡ってかえってくるのだと観客の思い知らしてくれる。これが漢の生き様だ。

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『MAD探偵 7人の容疑者』(07年/監督:ジョニー・トー)

スタイリッシュな香港監督の不条理サスペンス。秀逸なプロファイリング能力を持つ刑事が多重人格者の連続強盗殺人犯と壮絶極まる闘いを繰り広げていく物語。クリストファー・ノーラン監督作品のような綿密に仕組まれたストーリーからの最後のあのオチ!! 本当にジョニー・トーは引き出しが多いなと感心してしまう。

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『エグザイル/絆』(08年/監督:ジョニー・トー)

『ザ・ミッション 非情の掟』の主要キャストを再結集し、熱き男たちの絆とロマンをスタイリッシュに描き出したノワール・ムービー。返還目前のマカオを舞台に、それぞれの使命を帯びて対立する裏社会の男たちが辿る予測不能の運命を、ユーモアを織り交ぜつつ往年のマカロニ・ウエスタンを彷彿させるケレンたっぷりのカメラワークで綴ってゆく。「男と友情」という一見古めかしテーマを見事、神レベルの物語装置に仕上げた作品。これを観ずしてジョニー・トーを語ることなかれ。

Text by Naomi ise

ジョニー・ト―監督関連新作ニ作はこちら!!

奪命金
2月9日(土)より 新宿シネマカリテほか全国順次公開!

製作・監督:ジョニー・トー 
配給:ブロードメディア・スタジオ
2011 Media Asia Films (BVI) Ltd. All Rights Reserved

映画監督ジョニー・トー 香港ノワールに生きて
2013.2.16(土)新宿K’s cinema、シネマート心斎橋、静岡シネ・プレーゴにて、遂に本邦初公開!!

監督:イブ・モンマユー
出演:ジョニー・トー、リッチー・レン、サイモン・ヤム、アンソニー・ウォン、レオン・カーフェイ、ルイス・クーほか
配給:株式会社キュリオスコープ
© crescendo films 2010