2017年5月、囲碁の人工知能・AlphaGoが世界最強のプロ棋士柯潔(カ・ケツ)を圧倒したニュースや、先日ご紹介したロボットが運営する「変なホテル」など、AIやロボットが今の世の中で活躍し始めている。

このように、テクノロジーが進化することにより昔のSF映画監督達が想像していた技術は、現代、徐々に実現化してきているように思われる。そんなテクノロジーの進化が著しくなってきた2010年代を踏まえ、これまで映画で描かれてきたSFの世界と現代のAIの技術を比較し、今の世の中でどこまでSFの世界が実現しているのか、調べてみた。

実現している技術(2018年2月15日現在)

自動走行車

映画『トータル・リコール』

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1990年公開の仮想現実を取り上げた先駆的な映画『トータル・リコール』。この映画では当時みんなが思いを馳せていた自動走行車のシーンがあった。

トータル・リコール(1990年) 日本版劇場用予告篇

自動走行車『NAVYA ARMA(ナビヤ アルマ)』

90年代はありえなかったが、今まさにそれが現代に現れた! 前提として『トータルリコール』に登場したような「自動運転車」は運転支援をしてくれる車で、レベルが1~5まであるそうだ。レベル1は自動ブレーキなどの運転支援をしてくれる車、レベル2は渋滞時や巡航走行中にアクセルやブレーキ、ステアリングを制御してくれる車、レベル3はドライバーの乗車など使用に条件が必要だが、本格的な自動運転機能がつく。

そしてレベル4ではドライバーが不要になり、レベル5で完全自動運転となる。現在はレベル4まで実現されているらしい。

最先端の自動走行車としてあげられるものとして、ナビヤ社製の自動運転車がある。その名もEVバスNAVYA ARMA(ナビヤ アルマ)である。この自動運転車は、自動運転レベル4で、GPS等で現在地を測位、レーザースキャナーなどで障害物を検知しながら、あらかじめ設定したルートを自律走行する。すでに世界25カ国で走行し、10万人が乗車した実績のある車だ。

AUTONOM SHUTTLE Official Launch (October 2015)

また日産自動車とDeNAは、自動運転車両を利用した配車サービスの実証試験を期間限定で実施する予定だ。『トータル・リコール』ではロボットドライバーに行き先を伝えるだけで、あとは気軽に座っていれば目的地に到着するが、今後自動運転が進化していけば、ロボットドライバーがいなくとも自動走行するという、楽チンな未来があるかもしれない。

ドローン

映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー パート2』

言わずともしれた1989年公開の大人気映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー パート2』。2015年10月21日の「未来」を描いたこの作品では、短いシーンながらドローンの登場シーンがある。

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Back to The Future Drone

そう、すでに世の中では認知され普及しているドローンだが、さかのぼれば1989年の本作で予想されていたものだった。

ドローン『サイトテック YOROI 6S1300JW』

そんな『バック・トゥ・ザ・フューチャー パート2』で登場したドローンだが、周知のとおり、ドローンは実用化されさらに能力を進化させ続けている。初心者用から上級者用まで種類は幅広くあり、価格も様々。空撮や災害救助・農薬散布・測量・物資の運送など、人の生活を手助けするガジェットのひとつとして多方面で活用されている。産業用で使われるプロ仕様のドローンであれば、飛行も高度な自律操縦システムが備えられており、オートフライトも可能だという。これにはドク博士も驚いたに違いない。

今後実現可能かも?

テレポーテーション

映画『ジャンパー』

青い猫型ロボットのポッケから出てくる魔法の道具、その中で誰もが欲しいと願ったであろう「どこでもドア」。目的地を音声や思念などで入力し、扉を開くとその先が目的地になるという素晴らしい技術。

そう、この技術はいわば「テレポーテーション」だ。どんな物理的障壁もすり抜ける事ができ、トンネルの滑落事故で中に閉じ込められた人達を助けだしたり、それとは全く逆に銀行の金庫の中に忍び込んで金品財宝を盗むといった悪事に使うこともできる。

「ジャンパー」予告編

そんな夢のような技術「テレポーテーション」は、映画でその仕組み自体が語られている! 主人公が世界中のどこへでも瞬時に移動できる能力を持つ、2008年公開映画『ジャンパー』は、まさにザ・テレポーテーションの作品だ。

『テレポーテーションが実現するかも?』

そう、このテレポーテーション技術がもう少しで可能になるかもしれない! なぜ可能になるのか? 説明しよう。これまでのニュートン力学や、アインシュタインの理論による理解の範囲を超えた量子論だが、研究と実用化の試みが着々と進められているのはご存知だろうか。その中でも、米国のトンカン・リィ教授と、中国のツァン・クィ・イン博士が共同で行っている実験が、ひときわ斬新で奇妙なものだった。

それは、微生物を量子テレポーションで瞬間移動させようという前代未聞の実験! ということは、もしこの実験が成功したとするなら、いずれ我々の肉体を瞬間移動させることができる「転送装置」が現実のものになるかもしれない。

しかし、テレポートする中身といっても内臓や体液などではなく、今のところは記憶や感情などの「情報」だけが離れた有機体の間でテレポートできるのではないか、と考えられている。映画『ジャンパー』では、「今日の僕はパリでお茶、モルディブでサーフィン、キリマンジャロで昼寝、リオでポーランド女の電話番号をゲット、NBAファイナルの最終クオーターを観戦」。それをランチ前にやってのけたことを主人公デヴィッド・ライスが劇中で当たり前かのごとく語っているが、もし技術が進み「情報」だけではなく「肉体」もテレポートできればデヴィッド・ライスのような生活が手に入るかもしれない。

脳埋込チップ

映画『ファイナル・カット』

The Final Cut (2004) Official Trailer #1 – Robin Williams Movie HD

2004年公開映画『ファイナル・カット』では、全人間の人生の記憶を記録した「ゾーイ」と呼ばれるマイクロ・チップを脳に埋め込むようになったという近未来が舞台の映画だ。この映画のテーマの主軸でもある、脳内に埋め込まれたチップ。その技術、脳と機械との接続が実現するかもしれない。

『脳に機械を埋める時代へ』
こう書いているのにも理由がある。一つ目は、ソフトバンク傘下の英半導体企業ARMが、ワシントン大学の感覚運動神経工学センターと提携し、脳に埋め込むSoCの開発を開始したということ。このチップは、脳とコンピュータの双方向性のインタフェースを可能にするもの。目的はアルツハイマーやパーキンソンなどの神経関連の症状を持つ患者を工学的な神経科学技術で支援するというもので、「自分の意志で止められない痙攣をとめること」ができるらしい。

『脳内チップ産業に続々と参戦者現る』

それだけではない。自動運転電気自動車や宇宙開発を手掛けるイーロン・マスクが、脳に埋め込む無線チップ開発会社のNeuralinkを最近立ち上げた。英半導体企業ARMと違い、このチップの目的は、脳で考えたことを人間同士、あるいはコンピューターとダイレクトにやりとりすること。そう、Facebookが開発している「脳から考えをダイレクトに出力するシステム」と同じ目的だそうだ。

頭蓋骨に穴を開けてチップを埋め込むなんて、今はまだ生理的に気持ち悪いことかもしれない。チップを埋めることで人間の脳がハッキングされて、AIに支配されちゃうんじゃないの!? といった不安もあるだろう。そんな意見が想像できる反面、マスク氏は「レーシック手術くらい手軽で安価なものにしたい」と本気で語っている。確かに、実用化に成功し普及すれば「今度一緒にチップ埋めにいこうよ」といった会話が当然となる時代もくるかもしれない。

今回この企画を通して「フィクションとノンフィクションの壁は、思っているより薄い。そして今、頭の中で想像しているものは実現が可能な世の中になっているかもしれない」と、少しでも未来に期待を抱いてくれれば幸いだ。

text by BOWEN