趣味性の高いカメラというイメージの強いライカだが、欧州ではライカを愛機とするプロのフォトグラファーたちが多くの作品を生み出してきた。カメラの世界のマスターピース、ライカの真価とは何なのか、ライカ写真家の柏木龍馬さんに話を伺った。

「ライカを使えないカメラマンは三流扱い」

どんな製品にも他の追随を許さない傑作、つまりマスターピースが存在している。カメラの世界では、今も昔もそれに値するのはライカだけだと言われる。しかし多くの人にとってのライカは、高価ゆえ趣味の領域に属するカメラというイメージが拭えないだろう。それゆえ実用に耐えるとも思っていない人もいるのではないだろうか。

「ところが現在でもヨーロッパでは、ライカを使えないフォトグラファーは三流扱いされます」

そんな衝撃的な事実を語ったのは、ライカだけで作品を生み出す写真作家の柏木龍馬さんだ。柏木さんの言葉を信じれば、彼の地では写真撮影を生業とするプロフェッショナルの片腕として機能していることになる。ということは、我々はライカの真価を見誤っているのではないか?刺激的なライカの知性と感性を探るため、このマスターピースのリアルを柏木さんにたずねた。

カメラの名機、Leica(ライカ)って何がすごいの? technology180614_leica__1360-1200x801
写真作家の柏木龍馬さん。

「特別なクルマも写真に撮れば自分の物になる」

まずは柏木さんのプロフィールを紹介する。1976年静岡県生まれ。1999年にフォトジャーナリストになるが、そのデビューは『Newsweek』誌のカバーフォトだった。2000年に『NATIONAL GEOGRAPHIC』誌の仕事を始め、2008年に拠点をパリに移す。その1年後、現地のギャラリーと専属作家契約を交わし写真作家に転身した。直近情報では、2018年6月19日までライカGINZA SIXで『avalon』と題した写真展を開催。披露されている作品は、すべてライカとモノクロフィルムで撮影されたという。

カメラの名機、Leica(ライカ)って何がすごいの? technology180614_leica__1-1200x780
©Ryoma Kashiwagi

そうしてワールドワイドな活動を果たすようになった写真作家・柏木龍馬の原点は、モーターレーシングだった。

「生まれた裾野市は富士スピードウェイが近く、レースを見て育ちました。いつかその世界に入りたいと思ったんです。レーサーかメカニックとして。中学生になった頃、レース雑誌があることを知って、フォトグラファーの道もあるなあと。何より僕はレーシングカーが欲しかったんですね。でも、どこにも売っていない特別なクルマを買うのは無理。それなら、写真に撮れば自分の物になるんじゃないか? そんなふうに考えたんです」

それをきっかけに一眼レフカメラを手に入れた柏木さんは、大学生になる頃には新聞社や出版社で働くほど写真に熱中した。ライカとの出会いもそのときだった。あるいは、このエピソードがもっとも的確にライカの真実を語るかもしれない。

柏木さんが語るライカとの出会い、そしてその魅力とは?

続きを読む!

Text:田村 十七男
Photos:安井 宏充(Weekend.)